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日本では20年ぶりとなるアルヴァ・アアルトの個展がついに東京へ!「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」レポート
こんにちは、箱庭編集部の森です。
今回レポートするのは、フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルト[1898-1976]の個展「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」です。
アルヴァ・アアルトは、アームチェアやスツールなど家具デザインも有名ですよね。建築にあわせて、家具をはじめ壁面タイルやドアノブに至るまでをデザインするなど、ディテールへのこだわりも徹底していた建築家として知られており、彼が手がけたプロダクトデザインは、今やフィンランドデザインのシンボルといえるほど世界中で親しまれています。
本展は、アアルトの建築・デザイン作品を幅広く集めることによって、アアルトへの新たな視点を提示する大規模な国際巡回展です。ドイツを皮切りに、スペイン、デンマーク、フィンランド、フランスの各国で開催され、日本においては20年ぶりの個展実現となります。神奈川県立近代美術館・葉山、名古屋市美術館での開催を経て、ついに2月16日より東京ステーションギャラリーにやってきました!アアルトの魅力の再発見となる、またとない機会です。ぜひこちらの記事をチェックの上、足をお運びください〜。
オリジナル・ドローイングやプロダクトなど約300点が展示
本展で展示されるのは、オリジナル・ドローイング、家具、照明など約300点!それらの作品を8つのセクションで年代順に構成されています。会場に入るとその展示の美しさに、さすがアアルト展だなぁ〜と感じます。ドイツのアルミン・リンケによる写真も素敵です。建築専門の写真家ではなく、芸術的写真を撮影する写真家ならではの切り取り方にグッと引き込まれます。
初期の建築ドローイングから、博覧会の会場デザイン、演劇の舞台装置デザインなど、これまであまり見ることのできなかったアルヴァ・アアルトの作品がたっぷりと展示されています。
こちらは、1933年に竣工したフィンランド バイミオのサナトリウム(結核療養所)の病室内装を復元したもの。建築だけではなく、サナトリウムのすべての家具と照明設備をアアルトがデザインしています。眩しくない照明、音を吸収する水回り、穏やかな色彩。アアルトが患者のことを考え、設計されたものです。
同時代の芸術家「ジャン(ハンス)・アルプ」と「フェルナン・レジェ」の作品と、アアルトの木のレリーフを並べて展示する場面も。(左奥がアアルトの木のレリーフです。)アアルトが彼らとの親しい対話を通して、どのような影響を受けたのか。それらを垣間見ることができます。
木のレリーフは、もともとアート作品を作ろうと思ったわけじゃなく、椅子の脚を作るため曲木の実験を試行錯誤しており、それらを自宅に飾っていたところ、自宅に遊びにきた方々の興味・関心が多く、レリーフとして制作することになったのだとか。こうして生まれたレリーフも、アアルトにとっては家具とともに重要な存在、代表作となっています。
アートとテクノロジーを融合させ、より良いものを毎日の生活に。アアルトが目指した想い
2階にあるレンガの展示会場には、アアルトがデザインした家具や照明器具が並びます。この展示空間、とても素敵でした。
初期の頃は、インテリア製品を個々にデザインしていたアアルトですが、妻のアイノとともにデザインのシリーズ化を図り、その後、夫妻は美術史家のニルス=グスタフ・ハール、美術コレクターのマイレ・グリクセンの4人で「家具を販売するだけではなく、展示会や啓蒙活動によってモダニズム文化を促進すること」を目的に、アルテック社を立ち上げます。
ちなみにアルテックは、「アート(芸術)」と「テクノロジー(技術)」という1920年代に沸き起こった国際的なモダニズム運動のキーワードを掛け合わせた造語です。アアルトは、テクノロジーはアートを取り入れることで洗練されたものとなり、アートはテクノロジーの力で機能的で実用的なものになると考えていました。こういった考え方は、現在も大切にされているものばかりで、アアルトの思考は非常に勉強になります。
こちらはアルテック社設立前の椅子です。脚がスチールパイプで作られています。
その後、暖かみのあるしなやかな自然素材を使うことを大切にし、積層合板を使った曲木の実験を幾度となく行いました。
バーチ材の板を重ね合わせる積層合板の加工方法を開発することにたどり着き、曲げ木の技法は様々な製品に応用されています。スチールパイプのように頑丈でありながら、軽やかなオーガニックな形は、新たなスタンダードとなりました。
3本脚のスツール60は名作ですよね。
気取りがなく、親しみやすく、唯一無二。アアルトの機能的な家具の本質がすべてつまったデザインです。
アルテックは、合理性を考えたパーツのスタンダード化、新しい製造技術の開発など、量産を念頭に置いた先進的な考えを取り込んでいます。ただし、機械を用いながらも、多くの行程は人の手によるクラフトマンシップを経て生みだしており、「より良いものを毎日の生活に取り入れてほしい」と考えた生産バランスの良さに圧倒されます。
アルテック設立時のマニフェストや展示会の招待状デザインも展示されているので、そちらも必見です。
自然に寄り添った建築・デザイン
アアルトの建築やデザインにとって、自然は非常に重要な要素となっています。
今回の展示でも、自然を活かしたデザイン、自然の形を取り入れたデザイン、自然と調和する建築など、自然とアアルトの関係を至る所で感じることができます。
たとえば、照明器具。これらの照明は、デザインが素晴らしいのはもちろんのこと、光源が直接視界に入らないように、反射によって室内全体に光を拡散できるよう設計されています。アアルトの建築では、トップライトの外側または内側に照明器具を仕込むなどして、自然光を増幅させる手段を多々用いており、自然光と照明の巧みな組み合わせが賛美の対象となっています。
波を打ったような有機的な曲線をもつサヴォイ・ベースは、もともとは本物の木型の中に流し込んで制作されていたそうです。
会場では、当時の木型も展示されています。
アアルトの建築やデザインが、モダンでありながら自然の暖かさ・ぬくもりをもっているのは、アアルトが自然を大切にし、常に寄り添っていたからなんですね。だからこそ、たくさんの方に愛され続けるデザインになるのだとも感じます。
展示後半には、大規模なプロジェクトの作品が並びます。フィンランドから運んできたという大きな模型や図面、アアルトが開発したマテリアルの展示など。
展示方法も面白く、模型やマテリアルが展示されている棚の引き出しを開くと、それらに関連する図面やドローイング、写真が展示されています。ひとつひとつじっくり見たい展示です。
今回ご紹介したレポートは、展示のごく一部です。約300点の展示は、本当に見ごたえがあります。アアルトの世界をたっぷりと堪能してください。
会場は撮影NGですが、展示最後はアアルトのパネルと一緒に写真撮影することも可能です。ぜひ2ショットを撮影してみてくださいね〜。
「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」は4/14(日)まで。
アルヴァ・アアルト もうひとつの自然
会期:2019年2月16日(土)- 4月14日(日)
休館日:月曜日[4月8日は開館]
開館時間:10:00 - 18:00
※金曜日は20:00まで開館
※入館は閉館の30分前まで
会場:東京ステーションギャラリー
東京都千代田区丸の内1丁目9−1
入館料
一般1,200円 高校・大学生1,000円※中学生以下無料
サイトURL:http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201902_aalto.html