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こんにちは、箱庭編集部 moです。
今日は美術館・ギャラリー巡り好きの方はもちろん、若手クリエイターの方にぜひ注目していただきたい展示をご紹介したいと思います。

若手クリエイターとともに新しい表現を考える「1_WALL」

Designed by Atsuki Kikuchi
Designed by Atsuki Kikuchi

1_WALL」は、新しい表現を追求し続けている若い才能を発掘することを目的としたコンペティションです。ポートフォリオ審査による一次審査と、一対一で審査員5名全員と対話をする二次審査を通過したファイナリスト6名が、ガーディアン・ガーデンで1人1壁面を使って作品を発表するグループ展となっています。

「表現」がますます多様化してきている現在、「表現する」ということに真剣に向き合う人たちと一緒に、新しい表現を考える場として、ひとつひとつ壁を乗り越えていってほしいという気持ちと、壁一面に作品を表現してもらいたいという願いが込められているそう。

第20回グラフィック部門のファイナリストによる個展

今回わたしが足を運んだのは、第20回グラフィック「1_WALL」展。ポートフォリオレビュー審査を通過したファイナリスト6名によるグループ展です。今回のファイナリストは年齢層が低く、作家の年齢が平均23歳なんだとか!今後より活躍していくであろう、若き才能が溢れる展示となっていましたので内容をご紹介します。

河村真奈美「SCOOT」

河村真奈美
写実的なグラフィックを制作する河村真奈美さんの作品「SCOOT」。一見写真のように見えるこちらの作品ですが、実は全てイラストレーターのベジェ曲線という線で描かれたベクターデータの作品なんです。

河村真奈美
間近で見ても、「本当にイラストなの!?」と思ってしまうほどの精巧なグラフィック。是非実物を見てみてください。

柳田稜「なりそこない」

柳田稜
柳田稜さんの「なりそこない」は、必殺技の瞬間を小さな紙に描くことで、その瞬間が持つ雰囲気を抽出できないかと表現した作品。

柳田稜
ずらりと並んだイラストは壮観です!ひとつひとつのエネルギーを是非感じてみてください。

永井せれな「私たちのいる意味」

永井せれな
虚無を見つめる人物を描写する、永井せれなさんの「私たちのいる意味」。貼り合わせた紙に本人と同年代の若者のポートレイトを描いた作品です。

永井せれな
動きをつけずにまっすぐ前を向いていることで人間本来の表情を映し出しているよう。タイトルのように「私たちのいる意味」を問いかけている作品です。

加藤舞衣「WALL」

加藤舞衣
加藤舞衣さんのリトグラフ作品「WALL」。自身の工房の壁に残っているテープのシミや汚れをそのままモチーフにし、そこにいた人たちの痕跡を見出してそこに流れていた時間をグラフィック化した作品です。

加藤舞衣
日常の「WALL」を切り取った表現に注目です。

山内 萌「アプローチするグラフィック」

山内 萌
自身が制作したCGを油絵具で絵画化する山内 萌さんの作品「アプローチするグラフィック」。
ベニヤなどに描かれた絵画を連れ出して、この表情が配置されることで空間がどのように変わるのか、グラフィックが人に与える影響について試みている作品です。

山内 萌
一度CGにしたものを絵画で表現するという手法もおもしろく、注目です。コミュニケーションの起動スイッチとなる作品です。

星野陽子「FIGURE OUT」

星野陽子
星野陽子さんのグラフィカルなインスタレーション作品「FIGURE OUT」。ものがものでなくなる瞬間を探して、二次元と三次元を往来しながら描いているという絵画作品。

星野陽子
壁いっぱいのドローイングから、せり出しているパイプや紐など、絵画のような立体作品のような不思議な感覚に陥る作品です。

一般公開で行われる最終審査も気になる!

ファイナリスト6名の作品をご紹介しましたが、「1_WALL」では会期中に会場で公開最終審査が行われ、その場でグランプリが決定することでも注目を集めています。審査員である5名がファイナリストや一般観覧者の前でディスカッションし、グランプリを選出する過程を見ることができます。
第20回となる今回も、先日公開最終審査会が開催され、山内 萌さんの「アプローチするグラフィック」がグランプリに選ばれました!今回はもう終了してしまいましたが、毎回この方法でグランプリを決めているので、気になる方は是非次回の公開最終審査会に参加してみてくださいね。

35歳以下であれば応募できる!若手作家の成長を促し、可能性を広げてくれるコンペ。

「1_WALL」のコンペは年に2回開催されており、応募資格は年齢35歳以下、個人制作であること。「グラフィック」というネーミングがついていますが、テーマ・手法は自由で、指定の壁スペースに展示可能であればOKと、比較的自由度の高い応募規定となっています。

コンペと聞くと、周到に準備して望まなければ…と思ってしまいがちですが、「1_WALL」は、若手作家を発掘するだけでなく、成長を促し、その可能性を広げてくれるコンペでもあります。第一次審査、第二次審査というステップの中では、審査員からのフィードバックがあり、若手作家の「何かを表現したい!」という想いが、より良い方向にカタチになっていくことが多いのだそう。
グランプリ受賞者には約1年後のガーディアン・ガーデンでの個展の開催の権利と、個展制作費として20万円が支給されますが、個展開催に向けてのアドバイス面などもバックアップしてもらえるそうなので、「何かを表現したい!」と思っている作家のみなさんに是非参加していただきたいコンペです。

展示会場では実際に審査で使われたポートフォリオ等も見ることができ、そのプロセスを見ることができます。
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例えば星野陽子さんはポートフォリオ審査の段階ではインスタレーションを撮影した写真作品を出展予定だったそう。

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審査が進む中で、今回のようなインスタレーションを展示することに変更したのだとか。
自分が思い描いていたものとはちがった表現方法や展示手法を、審査の過程で見出していくことができるのも「1_WALL」だからこそ。第一線で活躍している審査員が真剣に向き合ってくれるので、自分の可能性を知りたい、成長したいという方にはぜひ参加していただきたいです。今の自分が持っている以上のものを作り出すことが出来るかもしれません。

また、展示を見にいくだけでも十分楽しめます。才能あふれる若いエネルギーから、きっと新しい刺激が得られるはずですよ。
第20回グラフィック展は3月15日(金)までですが、「1_WALL」は年に2回開催されていますので今後も要チェックです!

    第20回グラフィック「1_WALL」展

    会期:2019年2月19日(火)~3月15日(金)
    会場:ガーディアン・ガーデン
    住所:東京都中央区銀座7-3-5 ヒューリック銀座7丁目ビルB1F
    TEL:03-5568-8818
    時間:11:00~19:00
    休館日:2月24日、3月3日、10日
    観覧料:無料
    URL http://rcc.recruit.co.jp/gg