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『PAPER & INKJET MANIA 紙と、インクジェットと、 三人のマニアたち。』展レポート
こんにちは。箱庭編集部の森です。
本日ご紹介するのは、3月15日(金)〜3月30日(土)まで平和紙業株式会社のギャラリー「ペーパーボイス東京」で開催中の展示『PAPER & INKJET MANIA 紙と、インクジェットと、 三人のマニアたち。』です。
「PAPER & INKJET MANIA」は、“紙とインクジェット印刷で、新しいものづくりに挑戦しよう。”と、2018年秋、3人のアートディレクターが集まりはじめた活動です。普段は広告やデザインの仕事をしている3人の、部活のような創作活動なんだそう。本展は活動第一弾となる展示で、株式会社ショウエイと平和紙業株式会社の協力のもと、それぞれ違った個性の作品が展示されます。それでは展示内容を見ていきましょう。
誰もやったことのない、インクジェットの実験
MANIA1の田中せりさんの作品は「粒をレイアウトしてみる」。印刷機器と紙の間に無関係な物を置くことで、その予定調和を壊すことに挑戦した作品です。
手前の大きな作品4点は、印刷機器にまずは棒を2本設置し、その上に紙を置いて印刷したもの。
インクジェット印刷機器は、インクの吹き出し口から近い面にピントを合わせるため、棒に重なった面はくっきりと印刷され、それ以外はボケて印刷されています。
近くで見ると印刷とは思えない、水彩画のような作品です。
こちらの3作品は紙の上に物を置き、一度印刷した後、物を少しだけ動かし、もう一度印刷した作品です。
赤く見えているのは、インクかと思いきや実は紙の色なんだそうです!ファンタスという名前の紙で、艶っぽい赤地の紙です。紙の上に網を置き、青いカラーインク、その上に白インクを印刷し、その後に網をグッと引っ張って少し動かし、再度印刷を重ねているのだそう。
本来、印刷はボケることがないように、なるべくインクの吹き出し口と紙を近づけますが、今回はあえて離すことでつくられた実験のような作品です。展示では制作過程の動画も見ることができ、印刷の際にインクがフワ〜っと舞っている様子を見ることができます。
普段の仕事はゴールから逆算して正確に作り上げていくので、今回はゴールをつくらずに制作していったという田中さん。
印刷機と紙の間に何か挟んでみたいというところから始まり、細い糸を挟んでみたところボケボケで再現ができなかったというエラーからヒントを得て、この作品にたどり着いたんだそうです。
印刷機のその時の気流によって絵が変わってくるので、入稿してもどんな作品ができるかわからないところが面白かったとおっしゃってました。
くっきりとした印刷も良いけど、この絵画のようなアート作品も魅力的ですよね。インテリアとして家に飾りたいなぁ〜。
印刷過程で出るゴミに生命を宿す
MANIA2の小柳祐介さんの作品は、「あまりっこ動物」というかわいいネーミングの作品です。
大きさが様々な紙のピースに動物が描かれています。これらはすべて型抜きをすると出てくる端材から作られているんです。
端材にも切り抜かれた紙と変わらない手触りや匂いがあるのに、ゴミとなるのはもったいないと考えたそうです。小柳さんの1歳のお子さんが、紙の手触りや音が好きで、紙を持って遊んだりするところにも着想を得たそう。
テクノロジーを使って、端材を細切れに切りやすい形に判別し、クルクル回転させて23種類の動物から似ている動物を自動判別し、パターン柄を定着させています。切り抜かれた状態の上から印刷ができるのは、インクジェットだからできる技術なんだそうです。
今回パターン柄に動物を選んだのは、捨てられるものに愛を注ぐということで、命の形にしたいと考えたことから。お子さんが本当に好きだったのは、乗り物だそうで、こちらはプロトタイプですが、もしかしたら今後乗り物バージョンもできるかも!
展示には、動物になる前の端材と、動物になった姿が並んでいます。裏には、その形がどの動物に似ているのか、比率が記載されています。
ちなみに、展示の脇には動物名が記載されているのですが、「紙」「色」「型」から名前がつけられており、使用された紙と色、そして切り抜かれたものが何だったのかが分かるようになっているんです。
手提げホルダーの端材だったんですね(笑)
黒もシックでかっこいいですよね!紙によってもインクの載り方が変わってきますし、触りこごちも違うので、印象が変わって面白いです。
紙と印刷マニアの心をくすぐる「新しい触覚体験」
MANIA3の八木 彩さんがつくったのは4枚のポスターシリーズ。普段は「見るメディア」として使われるポスターを「触るメディア」として捉え直す実験的作品です。すべて触って楽しんでもらうため、あえて紙を黒で統一しています。
こちらはB1サイズの紙2枚を合紙し、1枚目をサークルで切り抜いた後、20種類の紙を埋め込んでいるのだそうです。その中の一つだけ、紙ではなくインクを埋め込んでいます。20種以上の紙の質感と立体的なインクの質感の「新しい触覚体験」をすることができます。非常に不思議な感覚ができるので、ぜひみなさんにも触ってもらいたいです。
こちらはインクで木目やメロン、網目、鉄板などを表現しています。白インク、黒インクの上に、クリアインクを載せて、インクだけで立体をつくり、マテリアルを表現しています。現物を見ながら、現場のオペレーターが調整をして作られたものです。
葉っぱの作品も。白インク、黒インク、クリアインクの順で印刷した後、葉脈をレーザーカッターで焼き付けて表現しています。とっても細かくて、触ってみると葉脈が本当の葉っぱみたいでびっくりします!こちらも触ってもらいたいなぁ〜。
今回お話を聞くことができた、田中せりさんと小柳祐介さん。お会いできなかった八木 彩さんも含めて、みなさん同じ会社で働かれているとのこと。今後の紙と印刷マニアたちの活動にも期待ですね!
紙と印刷。専門的なスキルはなくても、大好き!という方は、箱庭読者なら多いはず。(私ももちろんその一人です!)そんな方々に見て、触れていただきたい展示です。ぜひ足を運んでみてくださいね。
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PAPER & INKJET MANIA 紙と、インクジェットと、 三人のマニアたち。
開催日:2019年3月15日(金)〜2019年3月30日(土)
定休日:日曜、祝日
開催時間:9:00〜18:00
開催場所・会場:ペーパーボイス東京
東京都中央区新川1-22-11
入場料:無料
URL:https://www.shoei-site.com/news/1286/