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「ガウディをはかる -GAUDI QUEST-」展レポート。40年実測し描かれたガウディの世界を体感する
こんにちは、箱庭編集部の森です。
建築倉庫ミュージアムにて「ガウディをはかる -GAUDI QUEST-」展が3月27日(水)より開幕しました。
アントニオ・ガウディ(1852−1926)は、代表作サグラダ・ファミリアをはじめ、グエル公園、カサ・バトリョ、カサ・ミラ、コロニア・グエルなど名だたる建築を遺している天才建築家です。きっと説明もいらないくらい有名ですよね。
本展は、そうしたガウディ作品を40年間実測し、作図し続けている実測家・建築家 田中裕也さんによる実測図と考察を基に、ガウディ作品の魅力を解き明かす企画展です。40年!その積み重ねてきた年月を聞いて、まずは驚きと同時に、これはすごい展示に違いないと開催前から強く感じていました。
本日は、想像をはるかに超えた圧巻の展示をご紹介していきます。
圧倒的スケール感!図面はすべて手書き
本展で展示されるのは、サグラダ・ファミリア、グエル公園、カサ・バトリョ、カサ・ミラ、コロニア・グエル、テレサ学院のガウディ主要6作品の図面、計70点以上です。
展示の最初を飾るのは、一生に一度は見たい世界遺産としても有名なサグラダ・ファミリアです。
写真中央にある図面は、サグラダ・ファミリアの鐘楼尖塔図なんですが、実はこの作品、こーんなに大きいんです!
天井から床まで、5mを超えた作品となっています。写真におさめるのがなかなか難しい(笑)
凄いのは、本展に展示されている図面のすべてにおいて、原画は田中さんが手描きで描いたものだということ!そしてその多くが原画サイズのまま展示されています。こちらの鐘楼尖塔図も原画を拡大したわけではなく、原画が5mを超えたこのサイズなんです。
サグラダ・ファミリアの実測は、階段を「はかる」ところから始まる
写真左はサグラダ・ファミリアの図面原画です。原画はトレーシングペーパーに、製図用のペンを使い全て手描きで書かれています。これらすべてが、田中さんご自身が実際に計測して、描かれたものだということに、ただただ圧倒されてしまいます。
アントニオ・ガウディの建築は、模型とスケッチをベースに現場の職人と共に作品を築き上げてきたため、手がけた建造物の設計図は事務的な工事許可の申請図以外ほとんど残されていません。
田中さんは、階段を一段一段はかるところからはじめたそうです。階段をはかり、壁の厚さをはかることで、塔の全体像が把握できたのだそう。聞いているだけで、気の遠くなる作業です。
田中さんは「はかる」も凄いですが、「作図」も本当に凄いです!ひとつひとつじっくり見ていただきたいです。
田中さんは単純に写し描いているわけではなく、ガウディが何を考えていたんだろう?というところに立ち返り、隠されたコード(秘密)をはかっていく中で見つけながら、描いています。
たとえば、サグラダ・ファミリアで描かれている彫刻の中には実際の現物と違う箇所がありますが、ガウディが当時オリジナルで考えていた彫刻を描いているのだそうです。
8年の歳月をかけて完成したグエル公園の実測図
こちらは、15ヘクタールという広大な敷地をもつグエル公園の実測図です。8年の歳月をかけて完成した超大作です!
細かくて、そして美しい!
実測によって推測された1/25グエル公園の高架模型や、
グエル公園の階段の1/1再現を用いた体験型展示もあり、空間全体でガウディの世界を感じることができます。
階段には、実測スケッチ集もあるので、こちらもぜひ見ていただきたいです。
田中さんの「はかる」過程を、より一層知ることができます。
「どうやったらガウディを研究できるのか」グエル公園の階段で三か月考えた
(実測家・建築家 田中裕也さん)
田中さんは建築学科を卒業後、単身スペインに渡られて、グエル公園の階段に座り三か月ほど「ガウディをどうやったら研究することができるのか?」と考えていたそうです。その後、「はかることならできるのは?」と考え、グエル公園の階段をはかり始め、徐々に空間に広げていきました。
当時はスペイン語も話せず、お金もなく、拾った棒や500円の巻尺を使って計測をはじめたそうです。こちらの実測道具も展示されています。
はかることだけでは生計を立てることが出来ないので、スペイン語を学んで翻訳の仕事をしたり、旅行者の案内人をしたり、お仕事をしながら描き続けたそうです。
「はかる」ことで見えてきた、ガウディの考え
田中さんははかっていく中で、一見装飾的に見えるガウディ建築が、すべてにおいて合理性や意味があるということ、ガウディの考えを明確に理解していきました。
たとえば、この複合施設カサ・ミラは、かなり装飾的な建築に見えますが、スペインカタルーニャ地方という強い日差しのある風土と共生するため、日差しを防ぐ対策や換気機能を設けた構造がされており、「すべての造形は機能に基づいた合理的検証の結果だった」と田中さんは話します。
田中さんが「はかる」ことで見えてきた、ガウディの合理的な創造や考え。私たちは田中さんの展示を通して、それらを知ることができるのです。
ガウディの世界を堪能し、ガウディの新たな一面を知ることができる展示です。ぜひご覧ください。
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ガウディをはかる – GAUDI QUEST –
会期:2019年3月27日(水)~6月30日(日)
(2019年5月7日(火)~5月21日(火)の期間は休館)
会場:建築倉庫ミュージアム 展示室A(〒140-0002 東京都品川区東品川 2-6-10)
開館時間:火〜日 11 時〜19 時(最終入館 18 時)月曜休館(祝日の場合、翌火曜休館)
入場料:一般 3,000円、 大学生/専門学校生2,000円、 高校生以下1,000円
(展示室Bの企画展示「Green, Green and Tropical -木質時代の東南アジア建築展」の観覧料含む。)
WEB:https://archi-depot.com/exhibition/gaudi-quest