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大規模なインスタレーションに圧倒される!過去最大規模の個展「塩田千春展:魂がふるえる」レポート

大規模なインスタレーションに圧倒される!過去最大規模の個展「塩田千春展:魂がふるえる」レポート

こんにちは、箱庭編集部 moです。
2019年もいよいよ後半に突入しましたね。下半期も注目の展示が目白押しですが、今日はその中の1つ、森美術館で開催中の「塩田千春展:魂がふるえる」をレポートしたいと思います。

死と寄り添いながら作り上げてきた、25年間の活動を振り返る大規模個展

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ベルリンを拠点にグローバルな活躍をするアーティスト・塩田千春氏。その作風は、記憶、不安、夢、沈黙など、かたちの無いものを表現したパフォーマンスやインスタレーションで知られています。
塩田千春氏の過去最大規模の個展となる本展ですが、副題である「魂がふるえる」には、言葉にならない感情によって震えている心の動きを伝えたいという塩田氏の思いが込められているそう。
大型インスタレーションを中心に、立体作品、パフォーマンス映像、写真、ドローイング、舞台美術の関連資料などを加え、25年にわたる活動を網羅的に体験できる貴重な展覧会となっています。

塩田千春さん
(展覧会場に訪れた塩田千春さん。)

塩田氏が本展のオファーを受けたのは約2年前。その時塩田氏は「生きてきてよかった」と感じたそうですが、なんとその翌日、12年前に患った癌の再発が発覚したそう。その後闘病をしながら準備・制作を続け、ようやく開幕となったのが本展なんです。まさに塩田氏の魂が詰まった、集大成ともいえる展覧会です。

「ここまで死と寄り添った展覧会は初めて」という塩田氏の言葉が印象的でした。自身の魂のふるえを伝えたい、そしてみなさんの魂をふるわせたい、という想いが全身で感じられる、圧巻の内容となっています。

大型インスタレーションに魂が揺さぶられる!

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本展の最大の見どころは、大規模な没入型インスタレーションです。
まず美術館の入り口で観客を出迎えてくれるのは、塩田氏の代表的なモチーフでもある舟を使ったインスタレーション《どこへ向かって》(2017/2019)。大海に浮かぶ小舟のように、先の見えない未来や人生などを連想させる本作が、展覧会へと誘ってくれます。

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こちらは会場に入って最初のインスタレーション《不確かな旅》(2016/2019)。2015年のベネチア・ビエンナーレ日本館で制作したものと同様のシリーズです。船から派生するように出てきた真っ赤な糸で覆われた空間は圧巻です!入った瞬間、鳥肌が立ちました…!

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間近で見ても繊細で複雑な赤い糸の構造ですが、なんとこの展示室だけで280kmもの糸を使用しているのだとか!

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がらりと印象が異なる黒い糸のインスタレーション《静けさのなかで》(2002/2019)。
幼少期に塩田氏の隣家が火事で燃えた記憶から制作されたというこちらの作品。燃えたグランドピアノと、観客のいない椅子で埋め尽くされた作品は、沈黙を象徴しながらも視覚的な音楽を奏でます。

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約430個のスーツケースが振動し続ける作品《集積:目的地を求めて》(2016/2019)も見応えがあります。塩田氏がベルリンで見つけたスーツケースの中に、古い新聞を発見したことがきっかけで制作されたというこの作品。見知らぬ人の記憶、移動、移住など人々の旅路を示唆しているようなインスタレーションとなっています。

魂や生きる意味を考える新作

これまで、夢や記憶、気配など物理的には存在しないものを作品にしてきた塩田氏ですが、2017年の癌再発と闘病以降、塩田氏の作品に身体のパーツを使うようになったそう。本展では、病と闘う中で生まれた「魂はどこにあるのか」という問いに向き合った、塩田氏の新作を見ることができます。
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ガラスを使って細胞をかたどった《再生と消滅》(2019)や、

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塩田氏自身の身体のパーツモチーフにしたインスタレーション《外在化された身体》(2019)。これらは、治療のプロセスでベルトコンベアーに乗せられるように、身体の部位が摘出され、魂が置き去りにされていると感じた経験をもとに制作されているそうです。まさに死と間近で寄り添ってきた塩田氏だからこその作品で、私たちも「魂とは?」ということを改めて考えさせられるのではないでしょうか。

初期作品から25年を辿る、アーカイブ展示

大型インスタレーションと最新作をご紹介してきましたが、本展の見どころはそれだけではありません。
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《ウォール》(2010)
《ウォール》(2010)

初期のドローイングから、パフォーマンスの記録、舞台美術の仕事に関する資料展示など、塩田氏の実践と発展とそこに通底する一貫性を見ることが出来ます。

《小さな記憶をつなげて》(2019)

《小さな記憶をつなげて》(2019)
《小さな記憶をつなげて》(2019)

ミニチュアのように見える東京の景観と、塩田氏の作品を象徴するミニチュア作品の対比など、森美術館の展示室だからこそ実現した作品の見せ方も魅力的でした。

魂について、これまでにないほど考えさせられる展覧会

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会場の最後を締めくくるのは、新作の映像作品《魂について》(2019)。塩田氏が10歳のドイツの子供たちに「魂(ゼーレ)」について質問し、それについて答える様子を映したものです。
この展覧会の最後にふさわしい映像作品ですので、是非じっくりご覧ください。

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本展は、アーカイブ作品以外、解説やキャプションは付いておらず、代わりに塩田氏の言葉が添えられています。
その言葉の1つ1つと作品は、私たちが生きること、死、魂について考えるきっかけを与えてくれる内容でした。副題の「魂がふるえる」ということを、見事に体現している素晴らしい展覧会だったと思います。是非みなさんも感じてください。

本展の会期は2019年10月27日(日)まで。気になる方は、是非お見逃しのないよう足を運んでくださいね〜!

塩田千春展:魂がふるえる

会期:2019年6月20日~10月27日
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
電話番号:03-5777-8600
開館時間:10:00~22:00(火 〜17:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中
無休料金:一般 1800円 / 65歳以上 1500円 / 高校・大学生 1200円 / 4歳~中学生 600円
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/shiotachiharu/

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