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ロマンティックかつミステリアスな⾵景に心奪われる!日本初個展「ピーター・ドイグ展」が開催中。

ロマンティックかつミステリアスな⾵景に心奪われる!日本初個展「ピーター・ドイグ展」が開催中。
《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》 2015 水性塗料、麻 301 x 352 cm 作家蔵

こんにちは、シオリです。
現代で最も重要なアーティストのひとりと⾔われるピーター・ドイグ。デビュー以来現在まで世界的に高い評価を得ている彼の作品ですが、日本で目にする機会はあまりありませんでした。そんなピーター・ドイグの⽇本初となる展覧会が、東京国立近代美術館にて開催中。今日は、気になる展覧会の様子をお届けしたいと思います!

現代アートのフロントランナー、⽇本初個展!

ピーター・ドイグ展
《ブロッター》 1993年 油彩・キャンバス 249×199 cm リバプール国立美術館 ウォーカー・アートギャラリー蔵

ロマンティックかつミステリアスな⾵景を描く画家として知られ、現代アートのフロントランナーとして世界的な活躍を続けてきたピーター・ドイグ。1994 年に名誉ある「ターナー賞」にノミネートされたことで、ロンドンのアートシーンで⼀躍注⽬を浴びることとなりました。

当時は、ダミアン・ハーストに代表されるヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBAs)と称される若⼿の作家たちが台頭し、⼤型で派⼿なインスタレーションがアートシーンを席巻していた時代。こうした状況下で、すでに時代遅れのメディアのように⾒られることもあった“絵画”というジャンルにおいて、未だ見たことのない新しい作品を発表し続けるドイグの真摯な取り組みは、極めて新鮮なものとして評価されたんだとか。

ピーター・ドイグ展
(左)《のまれる》 1990年 油彩・キャンバス 197×241cm ヤゲオ財団コレクション、台湾
(右)《天の川》 1989〜90年 油彩・キャンパス 152×204cm 作家蔵

美術市場でも⾼く評価されており、彼の代表作のひとつ《のまれる》は、2015年のクリスティーズ・オークションで約2,600万⽶ドル(当時約30億円)で落札されたそう。

そのように世界で評価されながらも、これまで日本で彼の作品を見る機会がなかなかありませんでしたが、美術を勉強する者にとってドイグは避けて通れない存在。そんなドイグの日本初個展となれば、訪れないわけにはいかないですよね!

幅3メートル超のインパクトある⼤型作品が並ぶ、迫力ある展示。

本展では、複数の⼤型作品が出品されているのも特徴のひとつ。なかには幅3メートルを超えるものもありますが、単にサイズが⼤きいのではなくスケール感があるのも魅力。印刷物やスマートフォンでは伝わらないその感覚は、美術館へ足を運ばなければ体感できません。

ピーター・ドイグ展
《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》2000-02年 油彩・キャンバス 196×296cm。シカゴ美術館

本展のポスター・フライヤーのメインビジュアルにもなっているこちらも、サイズの大きさと、その世界観に圧倒される作品の一つ。ダム湖のほとりを写したドイツの古い⽩⿊の絵葉書と、ドイグが学⽣時代に⾐装係として働いていた英国国⽴歌劇場で撮った写真をもとに制作されたそう。描かれている2⼈の⼈物のうち、左は作家⾃⾝。時代も場所も異なるイメージが組み合わされ、夢と現実が交錯するかのような謎めいた光景がつくりあげられています。

ピーター・ドイグ展
《コンクリート・キャビンII》1992年 油彩・キャンバス 200×275cm アローラ・コレクション

こちらに描かれているのは、ル・コルビュジエが建てたユニテ・ダビタシオンという集合住宅です。手前の暗い樹木と、その幹にあるハイライトが印象的で、奥にある建物との距離を感じる作品です。ドイグ作品には、こうした奥行きを感じさせる効果が施されており、自然と作品の世界観に引き込まれていくのです。

初期作から最新作まで、ドイグ作品を全三章で紹介。

展覧会は、全3章で構成されています。第1章では主にロンドンで描かれた初期から2002 年までの作品、第2章ではトリニダード・トバゴに移住した2002 年から現在までの作品を展⽰。第3章では、⽇本で初めて公開となる映画の直筆ポスター「スタジオフィルムクラブ」を展示し、初期作から最新作までドイグ作品の魅⼒を余すことなく楽しめる構成となっているんです。

ピーター・ドイグ展
(左)《オーリン MK IV Part 2》1995–96 油彩・キャンバス 290 x 200 cm ヤゲオ財団コレクション、台湾
(右)《赤い船(想像の少年たち)》 2004 油彩・キャンバス 200 x 186 cm 個人蔵

こちらは、第2章のトリニダード・トバゴに移住した後に描かれた作品。移住前後から、海辺の⾵景を主なモチーフに選ぶようになり、さらにこれまで⽐較的厚塗りだった画⾯が、キャンバスの地の部分が透けて⾒えるほどの薄塗りの油絵具、または⽔性塗料による鮮やかな⾊彩のコントラストによって構成されるようになったそう。

ピーター・ドイグ展
《夜の⽔浴者たち》2019年、油彩・⿇、200×275 cm、作家蔵
ピーター・ドイグ展
《ポート・オブ・スペインの⾬(ホワイトオーク)》2015 年、⽔性塗料・⿇、301×352cm、作家蔵 他

ここ数年で制作された最新作も多数並び、圧巻です。ここまで作品を見てくると、ドイグ作品のなかにある幻想的な世界は、どんなところから生まれるんだろう?と気になってきます。

ロマンティックでどこかミステリアスな光景は、一見、個⼈の想像⼒のみで⽣み出されたもののようにも⾒えますが、それはゴーギャン、ゴッホ、マティス、ムンクといった近代画家の作品の構図やモチーフ、映画のワンシーンや広告グラフィック、⾃らが暮らしたカナダやトリニダード・トバゴの⾵景などの、多様なイメージの組み合わせによってつくりあげられています。ありふれた既存のイメージや作家⾃⾝の経験が重なることで、私たちの想像⼒を誘う、⾒たことのない⾵景がつくりあげられているのです。

ドイグのスタジオで開催される上映会のポスター「スタジオフィルムクラブ」のシリーズも!

ピーター・ドイグ展

最後を締めくくる第3章は、ドイグがトリニダード・トバゴ出⾝の友⼈のアーティスト、チェ・ラブレスと2003年より始めた映画の上映会「スタジオフィルムクラブ」のポスターがずらっと並ぶ展示です。

ポート・オブ・スペインにあるドイグのスタジオで定期的に開催されているスタジオフィルムクラブは、誰でも無料で参加することが可能で、映画が終わると上映作品について話し合ったり、⾳楽ライブへと展開したりする⼀種の⽂化的サロンのようなコミュニティの形成を⽬的としたプロジェクトだそう。

ピーター・ドイグ展

この⼀連のドローイングは、建物を共有している⼈々や近隣住⼈に上映会を周知するために開催の度に素早く描かれ、掲出されたもの。素早くといっても、ドイグの感性で映画を捉えたポップな絵は素晴らしく、よく見るとそれぞれ工夫を凝らされ、見応えがあります。

ドイグは大変映画好きで、ロンドンで親しんできたいわゆる名画座やミニシアターに着想を得て、過去の名作や粒よりの映画が上映作品として選ばれているそう。これまでには、この「スタジオフィルムクラブ」のポスターを作品として展示しない時期もあったそうなので、ここまでたくさんのポスターを一挙に見られる機会は大変貴重です。

音声ガイドや公式図録もお見逃しなく。

ピーター・ドイグ展

今回、音声ガイドナビゲーターを務めているのは、女優・のんさん。黄色いカバーが印象的な公式図録は、日本語で初めて掲載される海外の論文や作家の対談が収録された、貴重なものとなっています。どちらもお見逃しなく!

「ピーター・ドイグ展」は臨時休館を経て会期延長し、10月11日(日)まで東京国立近代美術館にて開催中です。みなさんもぜひ、期間中に足を運んでみてくださいね!

ピーター・ドイグ展
会期:2020年2月26日(水)〜10月11日(日) ※6⽉11⽇(⽊)まで臨時休館とし、6⽉12⽇(⾦)から再開
会場:東京国立近代美術館
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで ※当⾯の間、⾦・⼟曜の夜間開館を⾏いません。
休館日:月(ただし8⽉10⽇,9⽉21⽇は開館)、8⽉11⽇、9⽉23⽇
料金:一般 1,700円 / 大学生 1,100円 / 高校生 600円
*新型コロナウイルス感染症予防対策のため、⽇時指定予約チケットを導⼊します。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。
*前売り券をふくめ事前に購⼊いただいたチケットは、全会期中お使いいただけます。

https://peterdoig-2020.jp

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