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圧巻のアートワークが一堂に集結!クリエイティブの原点から未来を見据えた 「佐藤可士和展」が開催中
こんにちは。haconiwa編集部 モリサワです。
日本を代表するクリエイティブディレクター佐藤可士和さん。その30年のキャリアがぎっしりつまった「佐藤可士和展」が現在、国立新美術館 (東京/六本木)で開催中!
ご自身による展示会のキュレーションや、会場内ではQRコードを読み込んでスマホなどでご本人の解説が音声ガイドで聞けるなど、入口に足を踏み入れた瞬間から、唯一無二のクリエイティビティが満載。
今回はその気になる展示会の様子を詳しくレポートしていきます!
インパクトのある⼤型作品が並ぶ、迫力のある展示。
1989年に広告代理店の博報堂に入社した佐藤可士和さんは、1990年代にアートディレクターとして斬新な広告表現を次々に打ち出したのち、2000年に独立してクリエイティブスタジオ「SAMURAI」を設立し、活動の場を広げていきました。本展では、そんな佐藤さんの30年に渡るロゴ、キャンペーン、空間、グラフィック、アートなどのデザインワークを紹介しながら、クリエイティブフィロソフィーやその人物像に迫っています。
会場に入るとすぐに登場するのは、「THE SPACE WITHIN」と題された本展覧会のイントロダクション。子どもの頃からマンガの表紙やロゴ、標識などのマークが好きだったという佐藤さんのまさに原点とも言える数点が紹介されています。
「ADVERTISING AND BEYOND」というセクションに進むと、1990年代後半から2000年代にかけて手がけた主要プロジェクトの、ビルボード、連貼りポスターなど屋外広告の数々が、発表時のダイナミックなスケールで並べられているコーナーがあらわれます。

本展では、複数の⼤型作品が展示されているのも特徴のひとつ。実際に会場へ足を運ぶことで、印刷物や液晶画面では伝わりにくいスケール感やモノとしての質感を体感できるのも魅力です。



どれも1度みたら忘れられないようなインパクトのあるポスターが並ぶ中、この「極生」のポスターなどは、1枚の中に、写真でみているときにはわからなかった質感やさまざまな工夫がされているのを感じることができます。時間の許す限り細かいところまでじっくりみてみるのがオススメですよ。
今までの方法とはちがう、デザインの力で広がる広告戦略

青、黄色、赤の3色の色合いと、ロゴのみで制作されたSMAPのポスターは、佐藤さんが博報堂から独立し、「SAMURAI」を設立して最初のお仕事。
2000年当時、渋谷の街のあちこちが、情報を瞬時に伝える「アイコン」となって連動して、たくさんの人の目に触れました。「その街並みがテレビや新聞で報道されれば、広告になる」。佐藤さんの画期的なデザインワークは、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの今までの広告媒体からさらに一歩進んだ広告戦略を生み出しました。
このコーナーでは、インパクトのあるポスターだけではなく、広告キャンペーンの一環として展開されたグッズ、プロダクト、パッケージ、書籍の装丁などのデザインもずらりと並べられて紹介されています。つい、みていると「このグッズが欲しいな~」と思えてくるような魅力的なものばかり!
最初からデジタルツールを使ってデザインされているんだろうな~と想像をしていたのですが、まず手書きでビジョンを設計して、それを細かく分析し、最終的なアウトプットに結びつけていく丁寧なお仕事ぶりが伝わってきて、静かで力強い熱量を感じます。
スマホサイズから大きな看板になってもイメージが変わらないロゴ
続いて、この展示会の中心部分ともいえる「THE LOGO」。私たちが日ごろ暮らしの中で親しんでいる数々のロゴが巨大な絵画やオブジェで可視化されたインスタレーションです。
今回の展示会場でもある「国立新美術館」のシンボルマークのロゴも佐藤さんが手掛けています。壁だけではなく、床にもさまざまな企業やプロジェクトの展示がされているのにも注目!
圧巻の大きなロゴはどれも、企業・組織の理念や活動分野をあらわしている「素材」で制作されています。どんな素材で展示されているのか間近でみてみると、思わぬ発見もあって面白いですよ。
ユニクロはカジュアルデザインなので、カンバス。今治タオルはなんとロゴ全てが今治タオルでできていました!
壁にかけられたロゴのデザイン画。デザインを通して「アイコン」を作る佐藤さんのデザインワークは、「ロゴの耐久性」についても、よく考えられていることがわかります。
スマホなどに表示される小さなサイズから、大きな看板になってもイメージが変わらないようミリ単位に繊細に設計されていることに驚かされました。
次の「THE POWER OF GRAPHIC DESIGN」コーナーでは、選りすぐられたポスターと装丁デザインの傑作が紹介されています。佐藤さんの全ての発想のベースとなるグラフィックデザイン。シンプルでパワフルな展示の前では、じっくりと足を止めて観ている方も多い印象を受けました。
私がおもしろいと思ったのは、「グラフィックトライアル」。印刷の規定値と限界値を調べて、「基準の明確化」を追求した、佐藤さん。インキの比較、文字サイズの限界などさまざまなテストに挑んでいるんです!赤の100回刷りなども展示されているので、来場した際には注目してみてくださいね。
数々のプロジェクトを一挙紹介!独自の進化を続ける「アイコニック・ブランディング」
続いてここからは、「ICONIC BRANDING PROJECTS」と題されたコーナー。基本となるロゴから、商品、店舗やオフィスなどの空間、建築物、それらが存在する街の風景まで、どういう風にアイコニックにブランディングしていくのか、ブランディングの手法が紹介されています。過去、現在、これからの未来に向けて進化しつづけるコンセプトを一挙にみることができますよ。
最初に踏み入れたのは、2011年から「セブン-イレブン」 リブランディングプロジェクト トータルプロデュースの展示。ブランディングを手がける商品が天井まで壁一面にずらりと並べられた様子は、壮観です!
近くにあるデザイン画からも細かい部分まで考えられていることがわかります。私が注目したのは、四角い袋でマチがあるような商品は、マチの部分まで細かく丁寧に色合いや形状なども考えられていること。
自分のお気に入りの商品のパッケージを見つけてどんな風にデザインされているのかをみてみたり、それぞれの「デザイン」と「実物」を見比べてみるのも楽しいですね。


物流の新しいブランド「ALFALINK」は現在進行中のプロジェクト。ブランドのコンセプト、ネーミング、ロゴのデザイン、建築・空間デザインのディレクションを手がけています。会場ではタブレットでARを体験できるコーナーもありますよ。模型にかざしてみると、街並みが動き出し、完成後の様子が自分のみている角度からみることができます。
こちらのコーナーでは他にも、リニューアルを総合プロデュースした東京都立川市の「ふじようちえん」、横浜市洋光台で2011年にスタートした現在進行中の「団地の未来プジェクト」など…現在から未来に向けたプロジェクトも多数展示されています。基本のアイコンから、建築物の再生までブランディングプロジェクトの広がりが、展示をみているとワクワクしてきます。
佐藤可士和展公式チャンネル(YouTube)では「ふじようちえん」と「団地の未来プロジェクト」の詳細を動画で見ることもできますよ。残念ながら会場に足を運べない方も、さまざまな動画がアップされているので「佐藤可士和展公式チャンネル」も、ぜひチェックしてみてくださいね。
続いてのコーナーは「LINES / FLOW」。今までの5つのコーナーとは対照的に、自身の活動そのものの「アイコン」にふさわしい「LINES」と「FLOW」の2つのアートワークシリーズ。
壁に掛けられたクリアな赤・青・白の直線で構成される「LINES」と、器に表現された「FLOW」は、無限に組み替えられ、油彩画、陶板、映像… と、あらゆるメディアに展開。この展示会場では全て新作として、コンセプトムービー、有田焼の陶板作品、組皿、初公開のステンレススチールを用いた大型作品をみることができます。
「LINES」の幾何学的構成とは対象的に、大きな和紙に描かれた有機的なドローイングのシリーズ「FLOW」は、青の岩絵具をたっぷりと含ませた大筆を大胆に自らの手で描いた魅力的な作品。紙にいっさい触れることなく、動力と重力だけで描かれる「FLOW」は、岩絵具が空中に飛び散る一瞬をとらえたダイナミックな映像作品もみどころです。
ミュージアムショップまで見逃せない!空間すべてがクリエイティブ
そして、この展示会の締めくくりは、「UT STORE」と本展示の「ミュージアムショップ」。「ネーミングやロゴからストアデザインまでを担当することは、ブランドを認知してから商品を購入するところまでをデザインすること。」という佐藤さん。
ユニクロのグラフィックTシャツブランド「UT」。「UT STORE」の国立新美術館バージョンとして「UT STORE @ THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO」もプロデュースしています。TシャツのデザインからUT STOREでのお買い物まで、プロジェクトそのものを作品として提示する。という斬新さ!
ミュージアムショップのコーナーでは、楽天の「お買い物パンダ」のグッズや、ブランディングデザインのグッズも購入することができるので、最後の最後まで展覧会を満喫することができます。
普段は暮らしに溶け込んでいる佐藤可士和さんのデザインワークをあらためて体感できる展示会。こんなに刺激的で楽しいものなんだ~と、空間を体験する事で、より一層完成したデザインの素晴らしさを感じました。
ひとつひとつのコーナーに入るたびに驚きがあり、テンポよく展開していく「佐藤可士和展」。グラフィックデザイン作品はもちろん、展示方法も、現代の日本を代表するクリエイティブディレクターの本領がいたるところに発揮されているので、ぜひこの機会に、じっくりと楽しんでくださいね。
佐藤可士和展
開催日:2021年2月3日(水)~5月10日(月)
休館日:毎週火曜日
※ただし、5月4日(火・祝)は開館
開催時間:10:00〜18:00 ※入場は閉館の30分前まで ※開館時間は変更になる場合がございます
開催場所・会場:国立新美術館
東京都港区六本木7-22-2 企画展示室1E
入場料:一般1700円、大学生1200円、高校生800円
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL:https://kashiwasato2020.com/
Instagram:@kashiwasato2020
Twitter:@kashiwasato2020
Facebook:https://www.facebook.com/kashiwasato2020
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