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職人の技術を生かした、心地よい生活道具

こんにちは!渡辺真理子です。
みなさんのお宅には「茶の間」がありますか?
畳に座卓があって家族が集う場、アニメでいえばサザエさん一家がくつろぐあの部屋のことです!
建築様式がすっかり洋スタイルになってしまった今、茶の間がある家は少ないかもしれません。

今回ご紹介する「スズキ家の茶ノ間」は、日本人の心地よい生活スタイルについて考え、日常に溶けこむように使える生活道具を提案しているお店です。
一生モノの道具がほしいと日ごろ思っていたので興味津々!さっそく取材に行ってきました。

ものづくり職人と営業販売を経験したからこそ感じたオーナーの想い

新潟市役所のすぐ近くに「スズキ家の茶ノ間」はあります。
「スズキ」は店長さんの苗字でもあり、全国どこにでもいる苗字。
だから、“日本人みんなの茶の間”という意味も店名に込められているそうです。

お話を伺ったのは、店長の鈴木日富さん。

もともと鈴木さんは、ものづくりの世界にどっぷりと浸かっていたというおもしろい経歴の持ち主です。ロートアイアンの鉄職人で、その後、飛騨高山にて木製家具メーカーの職人へと転身。しかし、ものづくりの世界に行き詰まりを感じ、インテリアショップで営業販売を担当。卸売の知識を得ることで、しだいに「日本の職人がつくる道具のよさを伝えたい」と思うようになったそう。
そこで、2014年秋に「スズキ家の茶ノ間」をオープン。生活道具ブランド「folk product」を立ち上げ、企画・販売をしています。


店のコンセプトについて、鈴木さんはこう語ります。
「店名に“茶ノ間”と名付けたのは、昔の生活スタイルに戻ろうということではありません。
現代のようなテーブルとイスのスタイルって、馴染めていない人もいるんじゃないかなって。
実際、わたしは畳に座っている方が落ち着くんですよね。
だから、日本のよさをもっと追究したいし、日本の職人が作った道具を知ってもらいたい。
そんな自分の経験と感性から生まれたのが『スズキ家の茶ノ間』なんです」

そして、こちらが店内。


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全国各地の職人が手がけた生活道具がズラリ!
「“生活の中で使うもの”という軸で商品をそろえています。その土地でとれた素材で、その土地の人が作っているものは、昔から使われていて手になじむんです」と鈴木さん。
そのなかでも、自身が手がける「folk product」ブランドのイチオシ品を紹介してもらいました。

農家の手しごと品「ボテカゴ」「ボテバッグ」


新潟県五泉市の農家さんが、冬の農作業ができない時期に作っているという竹カゴ。
実際に農家さんは収穫した野菜を入れて使っているそうですが、それでは大きすぎるため日常でも使いやすいようにと、サイズを小さめに作ってもらったそうです。
使い方はいろいろ。野菜をストックしたり、壁に吊るしてお花を飾ったり、水にも強いので、食器の水切りカゴとしてもぴったり。

ネズミ取りのバネを使用「チョークボードクリップバインダー」


(※写真右側のみチョーク版塗装で、黒板のように直接書き込み可。)

新潟県三条市でネズミ取り板を製作している職人さんに、依頼したのがクリップ部分。
なんと、昔から使われているネズミ取り板とまったく同じものなんです。

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バネを作る工程のほとんどを手加工で行い、強度や紙を押さえる力のバランスを調整。
紙を何枚も重ねてとめるのが得意で、薄い紙でもしっかりとおさえることができます。

美しく機能的「三角チリトリ」

そして、鈴木さん一番のオススメは「三角チリトリ」。

佐渡市の板金職人が手がけています。
一枚の鉄の板を、まるで折り紙のように折って、チリトリ型に成形。
これが簡単そうに見えて、とても難しく技術がいることなんだそうです。


手にフィットするようにと、持ち手を丸みのあるラインに。
細かい折り目を付けて自然に加工しています。

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別売りの三角ホウキをぴったり収納できます。インテリアにもなじむデザインがすてき!

シンプルで無駄のない見た目はもちろん美しいですが、最も大事なのは「実用的かどうか」と断言する鈴木さん。
確かにどの商品も、使ってみると手放せなくなるくらい機能的です。

鈴木さんがこれらの製品を企画するとき、職人さんが得意な技術を活かすことを大切にしているそう。
「企画の初期段階では、わたしは作りたいモノの用途だけ考えてデザインはほぼしません。
職人さんのもっている技術を知ることで、だんだん形が明確になっていく。
はじめにイメージしていた形とはだいぶ変わっていきますが、確実におもしろい製品ができあがります」

焼菓子とサンドイッチのお店「スズキ食堂車」


店内には奥さんが営む「スズキ食堂車」が併設されています。
テイクアウトでも、店内でゆっくりと食べてもOK。


「“食べごたえのあるおやつ”の焼菓子を作っています」とのこと。
だから、甘いお菓子は砂糖をちゃんと使う、甘くない方がよければ砂糖を控える、それがポリシー。
粉のおいしさやバターの風味を活かして、食感はざくっと、しっとり、ホロホロ…。
食べる人に喜んでほしいと、しっかりと考えられた焼菓子がここにはあります。


金・土曜限定でサンドイッチとスープも食べることができます。
この日は、ハムとチーズとルッコラの八穀バゲットサンドウィッチ、アスパラガスのポタージュ。
噛みしめるほどにおいしい。ごちそうさまでした~。

小さなお子さんもいるというのに、お互いにやりたいことを実現しているステキなご夫婦、憧れます!

“職人はよいモノを作るけれど、伝える誰かがいなくてはならない”
「スズキ家の茶ノ間」はものづくり現場をわかっているからこそ、職人技術を活かした、今の時代に合う道具を作ることができるのだと思います。
ぜひ手に取って、お店で使い心地を確かめてみてくださいね。

    スズキ家の茶ノ間・スズキ食堂車
    住所:新潟市中央区学校町通2番町5300
    電話番号:090-5570-7545
    営業時間:10:00~18:00
    定休日:月曜、第2・4日曜(ほか不定休)
    Web site: http://www.suzukikenochanoma.com/(スズキ家の茶ノ間)
    http://suzukisyokudousya.com/(スズキ食堂車)