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上野にできた、建物とモノの歴史を継ぐ空間。都心とは思えない植物と日差しに包まれたあたたかなお店。

こんにちは、東東京在住の戸田江美です。
最近注目のエリア”東東京”といえば、浅草、清澄白河、蔵前…そしてなんと言っても上野。今回ご紹介するのは、上野駅からほど近くにある本屋「ROUTE BOOKS」さんです。
160506toda_01「ROUTE BOOKS」が入っているビルは、「ROUTE89 BLDG.」。10年以上空き家だった古ビルを実績豊富な工務店「ゆくい堂」さんが丸ごとリノベーション。事務所兼シェア・レンタルスペース、店舗の複合施設として生まれ変わらせました。ゆくい堂自らが運営する本屋「ROUTE BOOKS」はこのビルの4階にあります。

ここは本当に本屋さん?グリーンと日差しあふれるナチュラル空間

160506toda_02階段を上がって扉を開けると、明るい日差しとあふれるグリーンの鮮やかな色、木のぬくもりが感じられる空間が。ここは本当に本屋さん?と目を疑ってしまいました。上野の街中にあるとは思えないナチュラル感があって心地よい静けさに包まれるお店です。
どの角度からお店を見てもフォトスポットだらけで、どこから撮ろうか迷っちゃいました。
160506toda_03従来の本屋さんのイメージと明らかに違うのはこのレイアウト。本棚にぎっしりと並べられたり平積みされているわけではなく、本が店内にインテリアのように溶け込んでいるのです。
160506toda_04本は往来堂書店が監修したもの、ROUTE BOOKSがセレクトしたものが並んでいます。暮らし、料理、植物、DIY、家、コミュニティ、町づくりをメインとしたラインナップ。
本好きのお客さんが唸るほど、なかなか店頭で見かけないものも揃っているそうです。

「つくり手の想いを届ける」モノの産地直送をするお店

160506toda_05廃材を再利用した椅子やテーブル、本棚は手触りも良く一つひとつの形に特徴があります。知人やお客さんから「この廃材、家具、いらない?」と声をかけられ、自然と様々な資材が集まってくるのだとか。その廃材を再利用した雑貨も販売しています。
160506toda_06店内に置いてあるものはほとんどが販売品。お皿、お鍋やコーヒーメーカーなどなど魅力的なものばかり。陶器市に赴いて、作り手と顔を合わせて話を聞いて、良いと思ったものをセレクトしています。エアプランツなどのグリーンも農家に行って選んできたセレクト商品。作り手のプロフィールや想いが綴られたカードも展示されているので、モノの背景ストーリーをうかがうことができます。
「産地直送の穫れたて野菜のように、作り手から直接お客さんに届けられる場所」を作りたい、というゆくい堂の想いが伝わってきます。
160506toda_07なんとお店の中にキッチンまであるのです。料理本を出された方がここで発売イベントをおこなったこともあるそう。
フロアはイベントやライブに使用できるシェアスペースとしても貸し出しているので、様々な用途に使えそうです。
160506toda_08キッチンまわりにディスプレイされたお料理本や雑貨を見ていると、こんなお料理挑戦したいな、こんな料理道具使ってみたいなってイメージがぐんぐん湧いてきます。

コーヒー片手にくつろぎながら、作り手の気持ちに想いを馳せる場所

160506toda_09本屋さんでありながら、コーヒーとお菓子も楽しめるカフェでもあります。コーヒー豆は、ゆくい堂が手がけた清澄白河の「fukadaso」と西荻窪の「松庵文庫」で使用している仕入れ先からセレクト。どう淹れたらおいしいかをスタッフさんが独自に研究しながら提供しており、お客さんにも人気です。
160506toda_010コーヒーに合う甘いお菓子たち。片手でパクリと食べるのに丁度よさそう。
160506toda_011ソファでゆっくりコーヒーを飲みながらくつろげば、ほっと気が抜けるリラックスタイムに。廃材を再利用した家具、様々な種類のエアプランツ、豊富なジャンルの本を見ているだけで時間があっという間に過ぎちゃいます。それぞれに作り手の想いや歴史が詰まっていて、どれひとつ同じものがありません。
フロアは広々空間なので、お子さん連れにもおすすめです。

10年以上空き家になっていた、元・工場のビル。建物の長所と歴史を継ぐ。

個人宅、ビル、アパートなど数々の物件を手がけてきたゆくい堂。必要以上に手を加えず「その場所にある、その物件の価値を引き出すためにできること」を考えリノベーションする『継がれゆく箱』というプロジェクトをおこなっています。そのプロジェクトの4つ目が、この本屋さんが入っているビル「ROUTE89 BLDG.」。10年以上空き家になっていた元・工場の物件です。
当初は1階のみを借り、そこに事務所を移転しようと思っていたそう。しかしビル全体に魅力を感じ一棟丸ごと借りたのだとか。
160506toda_012今までの経験上、建物のことを見て考えているうちに、この物件はカフェにしよう、シェアオフィスにしよう、とアイディアに行き着くことが多いとおっしゃいます。このROUTE89 BLDG.も同じ。各フロアを見ているうちに「本屋を始めよう」と思い立ったのだとか。本屋なら今後の仕事の幅も広がりそう、と考え決断したそうです。
緻密なマーケティングの上に施工をするのではなく、建物が活きる道を感覚で捉える。ゆくい堂の豊かな経験と実績に基づくものだと思います。
結果、それに共感した人とモノが集まり、新たなコミュニティが自然発生で生まれる。自然発生だからこそ、継続するコミュニティになる。
空き家だったビルが活き活きと再生され、建物の歴史が受け継がれていく様を肌で感じることができる場所です。
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160506toda_014このビルの資材のほとんどは廃材と頂き物でできているそうです。小さな古材も組み合わせて家具にしているのだとか。だから、どことなくあたたたかさや懐かしさを感じられるのかも。素材を活かしきるリノベーションをしたため、このフロアを施工して出たゴミはなんとたったのひと袋なのだそう。一般の工事では、一日にだいたい3袋はゴミが出ます。
さらに驚きなのが、リノベーション着手から事務所移転までの施工期間はわずか3ヶ月。しかも、設計図を作らずにその場で決めて作っていったそう。その場の状況を見て施工するなんて、ゆくい堂の経験の豊富さに驚かされます。
160506toda_015[写真左]4月にオープンした屋上は、自由開放しています。ベンチ、椅子もお客さんから提供された再利用品。それを使ってバーベキューをしたりイベントをしたり。上野の住宅街を一望できる隠れスポットです。
[写真右]バルコニーで栽培されている多肉植物。何気ない場所に面白いもの、手のかかったものが置いてあるので、よーく観察してみると発見がたくさんあります。

ひと口に「本屋」というには収まりきらない、魅力あふれる「ROUTE BOOKS」。ぜひ実際に訪れて、どっぷりと「ROUTE BOOKS」を味わってみてください。

    ROUTE BOOKS

    住所:東京都台東区東上野4−13−9 ROUTE89 BLDG.4F
    TEL:03-5830-2666
    営業時間:12:00〜19:00
    定休日:水曜
    http://route-books.com/