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本格的スパイス料理が食べられるお店。その実態は…!?

こんにちは、新潟県在住キュレーターの渡辺真理子です。
毎日暑いですね~。夏といえばカレー!そしてスパイス料理!
今回ご紹介する「三条スパイス研究所」は、わたしの住む新潟県三条市にあるスパイス料理専門の食堂です。
でも、ただの食堂じゃありません。
取材する中で、そこにはまちを変える仕掛けがたくさんあることに気付きました。

誰にでもひらかれている公共施設「ステージえんがわ」内にお店はあります

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全天候型の屋根付き広場「ステージえんがわ」。この室内部分にお店はあります。
実はこちら、公共施設なんです!
だから誰でも自由に利用することができて、飲食物の持ち込みもOK。
パソコンを持ち込んでの仕事、おにぎりとお茶を持ってきて談話など、
それぞれが好きなようにこの場所で時間を過ごすことができます。
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軒下のスペースでは、演劇教室、健康カジノ、あおぞら縁台将棋など、さまざまなイベントが開かれています。

日本発信の新たなスパイス料理

東京押上の人気店「スパイスカフェ」のシェフがメニューを監修。
ターリー(ミールス)と呼ばれる、お皿の上に何種類かのカレー、惣菜、ご飯などが盛られたスタイルは
単独で食べるだけでなく、混ぜ合わせて食べることで、味わいに変化が出てくるのがおもしろい!
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ターリーセット 1,296円(税込)
カレー2種類(今回は打ち豆と干し野菜&ラッサム)に野菜のお惣菜。デザート、ドリンク。
新潟県の郷土食材「打ち豆」を使ったカレーなんて、ほかでは食べたことがありません。
乾物ならではのうまみがじんわりとくるやさしい味わいです。
スパイスが感が際立った、“香りを楽しむカレー”といった感じでしょうか。
決して辛すぎるわけでなく、スパイスの個性を感じながら食べるという感覚が何とも不思議。

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ビリヤニセットもおいしいんですよ~!
ディナータイムには、コース料理を注文することもできます。

ストーリーの詰まったモノが集まる空間

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店内にあるモノたちにはこだわりが詰まっています。
いわゆる“公共施設”の無機質なものではなく、想いが詰まったものだけがセレクトされているのです。

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例えば、これらのイス。ひとつひとつ表情の異なるものを買い集めたんですって。
みんなに愛着をもってもらえるように、あえて使い込まれたイスを選んだそうです。

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「古くて味わいのあるイスに、ぴったりの服(カバー)を着せるように…」と制作されたイスカバーは、
地元の布作家イカラシチエ子さんの作品です。一つひとつ形が違うので、お気に入りを探すのも楽しそう♪

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天井に吊り下げられた植物はなんと蘭!
栽培が難しいといわれていますが、基本的には空気中の水分だけで生きていけるたくましい植物なんですって。
手間をかけすぎなくてもよいので、空調のしっかりした“公共施設”で育てるにはピッタリ。

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食器やカトラリーにも注目!
このお皿、もとはインド製のピカピカなお皿でしたが、燕三条の技術であえてマットな加工にしてあります。
デンマーク王室御用達で有名な「カイボイスン」のスプーンやフォークも使用。
もちろん、こちらにも地場の加工技術が活きています。

ほしい未来をいまつくる。高齢になっても楽しめるまちづくり。

新潟県三条市はちいさなまち。都心みたいにお年寄りが楽しめる場所の選択肢がありません。
老人ホームのデイサービスもいいけれど、本当はもっと違う楽しみ方をしたい。
楽しめる場所が見つからないからおでかけしない…そんなふうに思う、外出の減った高齢の方に向けても、
居心地がよく愛着がもてるように、“建物の外からでもシースルーで楽しんでいる風景が見える”
そんな空間をつくろうと、この場所ができたそうです。

高齢の方の知恵や経験には厚みがある。
お年寄りだから大切にしなきゃではなく、「まぶしい!かっこいい!」と思わず尊敬してしまう人もたくさんいるはず。

そんな一人がこちら。「三条スパイス研究所」でも使用されているウコン(ターメリック)を栽培する農家、山崎さんです。
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定年旅行で沖縄を訪れた農家の山崎さん、初めてウコンと出会いその苗を持ち帰り、地元で栽培を始めました。
試行錯誤しながら、独学で生産、加工技術を編み出し、やがて雪国でも育てられることを証明したのです。
「おもしろそう」という好奇心から生き生きと取り組む姿は、本当に楽しそうでうらやましくなってしまうほど。
「未来を自分の手で切り拓く」「くらしを豊かにする」ヒントがここには詰まっているのかもしれません。

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スパイスは「すり鉢」の中ですりつぶされることで、はじめて香りの輪郭をあらわします。
同じように、さまざまな人がこの場所で出会い、個々の文化の厚みを共有することで、くらしはもっと豊かになっていくのかもしれません。
そんな「日本独自のスパイス文化」を食堂というカタチで発信するのが、「三条スパイス研究所」なのです。

もともとは“高齢者向け施設”ということでつくられたものの、今ではすっかり地域のオシャレスポットに!
高齢の方だけでなく、小さいお子さん連れや、若いカップルなどいろんな人がこの場所に集まってきます。
県外から来店する方もたくさんいるんですって。
箱庭読者のみなさまもぜひ、この不思議なほど心地よい空間を体感しに遊びに来てみてください!

    三条スパイス研究所

    住所:〒955-0072 新潟県三条市元町11−63
    営業時間:10:00 〜 20:00(L.O. 19:00)
    定休日:毎週水曜、第1火曜
    公式サイト:http://spicelabo.net/