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「セコリ荘 金沢」で、北陸のものづくりを見る・知る・繋ぐ

こんにちは。富山在住のSUZUKIです。
今年は梅雨明けが遅かったものの、8月に入り本格的な夏がやってきましたね。とにかく暑い、暑いです。
今回は、富山を含む「北陸のものづくりの窓口」をコンセプトに活動している「セコリ荘 金沢」をご紹介したいと思います。

セコリ荘 金沢とは?

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日本のものづくりの創出と発展を目指すキュレーション事業「Secori Gallery」が運営する、東京/月島のものづくりコミュニティスペース「セコリ荘」。
Secori Gallery代表の宮浦さんが日本各地から集めた生地の見本が並び、素材を探しているデザイナーと産地を繋ぐ役割を担うほか、ショップやおでん屋台としても営業し、様々な職種の人がふらりと立ち寄り思いもよらない出会いを生む場所にもなっています。
その2号店となるのが、2015年に石川県金沢市にオープンした「セコリ荘 金沢」。目の前を犀川が流れ、とても気持ちの良い場所です。
ここでは北陸地方(石川、富山、福井)のものづくりに触れる機会を提供するスペースとして、繊維素材の紹介や地場商品の展示販売などを行っています。

セコリ荘金沢を運営する下山さんは、東京の服飾学校を卒業後アパレル会社でデザイナーとして勤務していましたが、次々に新作が出されセール品となってゆくファッション業界のスピードの早さや、感情を置き去りにしたものづくりのサイクルに疑問を感じていたそうです。
そんな中セコリ荘の活動を知り、「ものづくりを一から学び直し、未来に伝えるものづくりの仕組みを考えたい」という思いで、金沢店の立ち上げに伴い金沢に移住することを決意しました。

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石川県の文化がつくり受け継いできた加賀友禅、福井県の越前地域に伝わる1500年の歴史を持つ手漉き和紙、日本トップシェアを誇る富山の鋳物づくりなど、北陸の土地でしかつくることのできない技術。伝統的なものづくりも、先端的技術によるものづくりも、素材も製品も合わせて、「セコリ荘 金沢」に来れば、北陸にどんなものづくりがあるのかがわかる。
セコリ荘金沢はそんな「ものづくりの窓口」を目指しています。
セコリ荘がショップやショールームの役割だけでなく「コミュニティスペース」と名乗っているのは、「見る、買う」だけでなく作り手さんを招いたワークショップや交流会、工場ツアーを企画していくこと、ものづくりを生む「作り手同士」、あるいは「作り手と素材」が出逢うインタラクティブな場を目指していること、そしてその「コミュニケーション」を何より大切にしていきたいという思いがあるから。
今後も、兵庫の西脇や岡山の倉敷、東北や九州など日本各地の産地に展開していきたいと考えているそうです。

 

セコリ荘 金沢企画、石川県の産地を巡るバスツアーに参加してきました!

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合繊繊維(ナイロンやポリエステルなど)の産地として有名な石川県は、最先端の技術によって生み出される素材が国内の大手アパレルメーカーや海外のビックメゾンにも起用されるなど、世界に誇れる確かな技術と高品質のものづくりをしています。
今回はセコリ荘 金沢の企画で「加賀糸へんツアー 合繊繊維編 / 伝統工芸編」と題し、2日間にわたり石川県のものづくりの現場を見学できるツアーが開催されました。
私は2016年7月1日(金)に行われた「合繊繊維編」に参加させていただき、合繊生地をつくり出すハイテク織機(生地を織る機械)の仕組み、生地が織られる工程、そして染色、後加工と石川の繊維産業の歴史に触れながら、産地の魅力を体感してきました。

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バスを1台貸し切り、ツアーのスタートです!

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セコリ荘 金沢の下山さんがガイドを務めてくださいました。

 

津田駒工業株式会社

1909年創業。国内の織機のトップシェアを誇り、世界の織機工場としてもグローバルにビジネス展開している100年企業。
詳しくお話を聞ける機会を個人で作るのはなかなか難しいので、このようなツアーに参加できるのはありがたいことです。
ここでは自動織機の歴史や織機メーカーの現状の説明、そして実際に織機が稼働しているところを見せていただきました。
ここからはあまり見たことのない工場の様子や専門的な用語がでてきます。
写真や少しの説明だけでは理解できない部分があると思いますので、もっと知りたい!と興味が沸いたらぜひセコリ荘金沢のホームページFacebookをフォローしてみてください!

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ショールームに展示されていた初期の織機。木製の部品もあり、レトロでかっこいいですね!

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織機の説明をしてくださった加藤さん。

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これは「エアジェットルーム」と呼ばれる織機です。
エアジェット=空気で飛ばす、ルーム=織り機 という意味で、空気圧で糸を飛ばすため、高速で生地を織り上げていくことができます。
その反面、スピードが速すぎてドドドドドッという振動と音が鳴り響くのですが、私はこの音を聞くと「ものづくりの現場に来た!」という気持ちになり、ワクワクしてしまいます。
現在国内でエアジェットルームを製造しているのは津田駒工業株式会社を含めて2社のみ。納入先の9割は中国や東南アジアなどの海外になるそうです。

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ひときわ目を引く、大きな織機。カラフルな糸がセットされています。

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この織機ではパイル生地(タオルの生地)を織っていました。織られた糸がループ状になっているのがわかりますか〜?

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織機を横から見たところ。

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ここから糸が送られて、空気圧で飛ばされ、生地に織り込まれていきます。

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織機には生地を織ると同時に端をきれいに切り揃えていく機械も付いていて、こんなカラフルな「端っこ」が出てきます。
これは捨てられてしまうのですが、何か編めたらかわいいものができそう…なんて考えながらじっくり見入ってしまいました。

 

株式会社 白龍

ポリエステルを中心とする表情豊かなジョーゼット(ブラウスなどに使われる薄く透け感のある生地)やサテン(舞台衣裳やドレスに使われるツヤがあり滑らかな生地)など、強撚薄地織物の生産を得意とするテキスタイルメーカー。
こちらの工場では生地の元となる糸を巻き直す工程から、生地を織る工程までを見せていただきました。

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さっそく工場の中へ。

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まずは、大きなロール状の糸(原糸と呼ばれます)を小分けにして巻き直していく工程。

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糸の強度を増すため、一定の方向に撚りをかける工程。

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工場内を案内してくださった、森さん。生地づくりへの情熱が伝わってきます。

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高温の蒸気で糸の撚りを固定する窯。

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糸を繋いで巻き返す工程。

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織機にセットする縦糸を準備する工程。膨大な量の糸をきれいに整えていく様は圧巻です!

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素敵なスローガン。心に響きます。

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先ほど整えた糸を綜絖(そうこう)と筬(おさ)と呼ばれる部分に1本1本通していく工程。
気の遠くなるような本数ですが、これも人の手作業で行われているのですね。実際に見るまでは知り得ませんでした。

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そして最後は生地を織る工程です。
少しわかりにくいですが、これはウォータージェットルームといって、水圧で糸を飛ばして生地を織っていく織機です。
水が付いているのがわかりますか〜?
こちらの織り機はかなりの水しぶきが飛ぶため通常はカバーをかぶせて稼働していますが、今回は「水を浴びてもいいかたはどうぞ!」ということで間近で見せていただきました。

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絶え間なく働く機械のかっこよさに、思わずパチリ。

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積み上げられた真っ白な生地は、別の工場(この後ご紹介する小松精錬など)に送られ、染色、加工されます。

 

小松精練株式会社

ファッションから工業用の素材まで、染色を基盤に多彩な事業領域をカバーする先端ファブリックメーカー。
ここでは生地のショールームや染色工場、様々なファブリックの展示や最先端の技術を学ぶことができる FABRIC LABORATORY「Fa-bo(ファーボ)」を見学させていただきました。
※ショールームや工場内は撮影ができなかったため、今回はFa-boのみのご紹介となります。

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工場見学セット。工場へ入る際には、安全のため帽子を被ります。

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建築家の隈研吾さんが設計、内装を手がけたFa-bo。一般の方でも予約をすれば入ることができます!→(詳細はこちら
蜘蛛の糸のようなもので囲まれた姿が印象的な建物ですね。
こちらはCABKOMA(カボコーマ)という素材が張り巡らされていて、地震から建物を守る役割をしています。
※CABKOMA = 引張りに強い炭素繊維の特性を活かし、しなやかで人に優しい耐震補強材として小松精練株式会社が開発した素材。
衣類だけでなく、より大きなスケールで人々の生活を包む、繊維業界の新たなチャレンジです。

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内部は小松精練で開発されたファブリックがたっぷりと使われています。

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Fa-bo屋上にも案内していただきました。すぐ近くに海が見えます!条件が良ければ白山も見えるそうですよ。

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再び中へ移動し、小松精練の歴史を学ぶことのできるミュージアム、工場の様子を垣間みることのできるミーティングスペース等を見学しました。
こちらは実際に手で触れることのできる、様々な素材のパネルです。ツルツル、フカフカ、サラサラ…素材によって、いろいろな手触りがあります。

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最後に、隈研吾さんが小松精練のファブリックを用いて制作した作品が展示されているスペースへ。
とってもきれいな空間でした〜

 

今回は東京や関西方面など遠方から泊まりがけで参加される方も多く見られ、北陸産地への関心が高いことが伺えます。
また北陸だけでなく、日本各地には表舞台には出てこない工場や職人さんがいらっしゃいます。
私は現在テキスタイルデザイナーとして活動していますが、デザインをポイッと丸投げするだけで自動的に商品ができあがることはありません。
ものづくりの現場には必ず「人」が居て、様々な技術や工夫を注ぎ込んでデザインをカタチにしてゆきます。
実際に商品が作られている現場に足を運び、直接話をすることは手間がかかり大変なことですが、それは欠かせないことなのです。
ものづくりの現場を知り、より多くの人に伝える。
それを実現すべく走り回るセコリ荘金沢の活動に、今後も注目していきたいと思います。
セコリ荘金沢では随時産地ツアーを開催するそうなので、興味のある方はぜひチェックしてみてください!

 

    セコリ荘金沢

    http://www.secorisoukanazawa.com/
    〒921-8032 石川県金沢市清川町1-5
    営業日:土、日 12:00 – 21:00
    ※出張などの臨時休業がありますので、ホームページやFacebooktwitterにて営業日をご確認の上お越しください。

    セコリ荘

    http://secorisou.com/
    〒104-0052 東京都中央区月島4-5-14
    営業日:金・土・日 17:00 – 22:00ごろ
    ※出張などの臨時休業がありますので、ホームページやFacebooktwitterにて営業日をご確認の上お越しください。