キッチハイクCOOKタカコさん

こんにちは、なかじです。

「自分の好きなことや得意なことを活かして、新しいことを始めてみたい」

そう思ったことはありませんか? 最近、仕事でもプライベートでもない“第三の場”で活躍している人が多いですよね。私の周りでも「趣味の手作りアクセが好評で販売を始めた」とか「カメラ仲間と今度個展を開くんだ〜」とか、そういう話をよく聞くんですが、みなさんとにかく楽しそう。なかには、趣味で始めたけれどいつのまにかそれが本業になっていた…なんて人もいて。

今回お話を伺った吉田タカコさんも、“第三の場”で活躍している1人です。

彼女は雑誌やメディアを中心に活躍するフリーライター。そのいっぽうで『KitchHike(キッチハイク)』という、料理をつくる人(=COOK)と食べる人(=HIKER)をつなぐオンラインサービスを利用して、毎週誰でも参加できるオープンな食事会を主宰しています。本業はあくまでライター、プロの料理人ではありません。にも関わらず、参加者から絶大な支持を受け、今やKitchHikeの人気COOKとして二足のわらじ生活を過ごしています。これまでにKitchHikeを利用して料理を振る舞ってきた人数は何とのべ300人超え!そのほとんどは、彼女とまったく面識のない人達なのだそう。

得意な料理をきっかけに、仕事ともプライベートとも違うコミュニティを手に入れた彼女のライフスタイルは、“好き”から新しい世界が拓けることを教えてくれます。

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彼女に会いに上野を訪れたこの日、タカコさんの食事を食べた人が投稿する「レビュー」の数が100件を超えたのを記念してのスピンオフイベントが行なわれていました。せっかくなので、その日の様子もご紹介したいと思います。

上野ルーツブックス
(この日の会場は、本屋+カフェ+コミュニティスペースが融合した上野の「ROUTE BOOKS」)

 

ー KitchHikeは私もHIKERとして何度か利用したことがあるんですが、タカコさんは料理を振る舞うCOOK側なんですよね。

吉田タカコさん(以下、タカコさん):はい。私は2016年3月からKitchHikeのCOOKに登録しました。いつもは毎週水曜に渋谷にあるシェアオフィス「PoRTAL」で台所をお借りして、興味を持ってくれた人達に晩ごはんを提供する「Veganic High」という食事会を開催しています。私が出しているのは、肉・魚・卵・乳製品を一切使わないヴィーガン料理。毎週いろんな国の料理をヴィーガンにアレンジしてお出ししているのですが、これまでに37回開催し、のべ312人にお料理を提供してきました。

キッチハイク(左:タカコさん主催のPop-UpはKitchHikeでのサイト内やSNSで告知され、興味のある人達がオンライン上で予約。KitchHikeに登録すれば誰でも自由に参加できます)

キッチハイク渋谷ポータル
(PoRTALにて。タカコさんが主宰する「Veganic High」の張り紙)

キッチハイク渋谷ポータル
(PoRTAL内のキッチンで料理を振る舞うタカコさん)

 

小さい頃から、誰かのために料理をつくることが好きだった

キッチハイク
(取材当日の様子。タカコさんのお手製料理がテーブルに並びます)

 

ー そもそも、なぜCOOKをやってみようと思ったんですか?

タカコさん:実はKitchHikeに登録する前から“晩ごはん会”をPoRTALでやっていたんですよ。そこで働いている人達や知り合いが集まって会話しながら一緒に夕飯を食べたりして。たまたまKitchHikeがオフィスをPoRTALに構えていたので、そこで「COOKをやってみませんか?」とお誘いをいただいたのがきっかけです。

ー なるほど、もともと料理をつくって振る舞っていたんですね。

タカコさん:そうなんです。思い返すと、幼少時代から誰かに料理をつくってあげることが好きでした。お菓子をつくっては学校に持っていったり、新卒で入った出版社時代は忙しい同僚たちのためにお弁当をつくって販売したり(笑)。

ーお弁当を売るってすごいですね。料理教室で勉強したり、お店で修行されていたんでしょうか?

タカコさん:いやいや、全然!好きが高じて…という感じですね。10年前ほど前からヴィーガン料理をつくっていたんですけど、KitchHikeのCOOKに登録してからは、そこに海外というテーマをプラスして「世界のヴィーガン料理」というコンセプトにしました。これまで提供してきた各国料理は18カ国。ユニークなところだとチャモロ料理とか。ミクロネシアにチャモロ族という民族がいるんですが、そこで食べられている家庭料理をヴィーガンにアレンジして。あとはエジプト料理もすごく好評でしたね。

ー エジプト料理って珍しいですね。都内でもエジプト料理店は少ないような…どんな料理があるのか見当がつきません(汗)。

タカコさん:珍しいからこそ知りたい欲って沸いてきますよね。もちろんエジプト料理専門店に行けば色んなエジプト料理を食べられると思うんですけど、そこで料理人にあれこれ質問することって難しいじゃないですか。でもKitchHikeの場合、つくる人と食べる人が同じ空間にいて、会話しながら食事を楽しめるスタイルなので、お店に行くだけでは得られない、+αの楽しさがあるんです。例えば、「エジプトとトルコとイスラエルだと、同じ料理でも国によって名称が違うんだよ」とか、ちょっとした豆知識を挟むと「へぇ!」なんて声が挙がって盛り上がったり。いつも、その国ならではの食習慣やマナー、訪れた時のエピソードなどを話すようにしていますね。

 

「おいしい」だけでは満足できない時代

ナシ・クニン
(この日のテーマは「インドネシアnight」。メニューは、ナシ・クニンというココナッツミルクとターメリックの炊き込みご飯、レンダンと呼ばれる煮込みなど全5品)

 

タカコさん:今ってお金さえ出せばどんなものでも大抵食べられるじゃないですか。珍しい料理も高級な料理も。だからKitchHikeを始めた最初の頃は「お店という担保もなく、どんな人がつくるかもわからない場所に一体誰がくるんだろう?」って思っていたんです。

ー でもフタを開けてみると、たくさんの方が来てくれた。

タカコさん:そうなんですよ。きっと、もう“普通”じゃ飽き足らないんでしょうね。作り手と食べる人がこれだけコミュニケーションをとりながら食事を楽しめる機会ってないじゃないですか。だから、「おいしさ」だけじゃない何かを求めてきてくださるんだと思うんです。

ヴィーガン料理に興味があるのかもしれないし、家でも職場でもない第三の居場所だったり、人とのつながりを求めているのかもしれない。でもどんな理由であったとしても、興味を持って来てくれた人には全力で応えたいなって。私が主宰している「Veganic High」には1人でいらっしゃる方も多いんですよ。意外ですよね。普通に考えたら、誰も知り合いがいない場所に足を踏み込むのって不安でしょうから。せっかく勇気を出して来てくれたのだから、そういう人にも「行ってよかった!」と喜んでもらいたい。

キッチハイク

ー 普通に暮らしていたら出会えない人と知り合えたり、知らなかったことが知れたり…というのは大人になってもワクワクしますよね。タカコさん自身もそれを楽しんでいるのを感じますが、ぶっちゃけ本業との両立は大変じゃないですか?

タカコさん:本業じゃないからおもしろいんですよ。本業じゃないからこそ出会える人もいるし、自分のやりたいことにチャレンジすることもできる。仕事じゃないから遊びの要素をいつも忘れずにいたいですね。「誰かにごはんをつくること」は好きなことだから苦にならないし、それ以外にも自分のなかで「こういうことがしたい」というのが実はあって。

ー それは何ですか?

タカコさん:世の中の「ヴィーガン料理」に対するイメージを変えたいんですよね。ちなみに、ヴィーガン料理に対してどんなイメージを持っていますか?

ー うーん。お肉やお魚は食べないとか、サラダをよく食べているとか、あまり詳しくはないんですがそういったイメージはありますね。

 

ヴィーガンのストイックなイメージを壊したい

キッチハイク

タカコさん:ですよね。ヴィーガンというと、ものすごくストイックな印象を持つ人が多いんです。「いつも山盛りのサラダだけ食べている」みたいに思われがちなんですが、そういう概念を覆したいという想いがあって。私KitchHikeではいつもヴィーガン料理を提供しているんですけど、そういったジャンルのお店にはほとんど行かないんです。だって全然満足できないんですよ。よくあるヴィーガン料理店ってそもそもの量が少なかったり、味付けが物足りなかったり高価だったり。不完全燃焼で終わっちゃうんですよね。

ー それ、ちょっとわかる気がします。

タカコさん:だからこそ、お腹も気持ちも満足できる料理をお出しして「ヴィーガン料理って結構アリじゃん!」と思ってもらうきっかけにできたらいいなって。私が目指しているのは「肉食男子でも満足できるガッツリ飯」。お肉が好きな男性でも満足できる味にいかに近付けるか?というのはいつも意識しています。

ー たしかに、初めてお会いした時につくっていただいたミャンマーの麺料理、「シャンカウスエ」は食べ応え満点でした。いい意味でヴィーガン料理らしくないというか。

ヴィーガン風シャンカウスエ
(シャン族の定番ヌードル「シャンカウスエ」をヴィーガンにアレンジ。ミャンマーでよく食べられる納豆ふりかけ「ペーポウチョ」が味の決め手。)

 

タカコさん:そう言ってもらえると嬉しいです。あと、いつも「Veganic High」の時は、提供するメニュー名と併せて使っている食材の産地を書いて皆さんにお渡しするようにしているんです。

ー それはなぜですか?

タカコさん:どんな食材を使っているか知ってほしいし、皆さんにも納得して食べてもらいたいから。最近はスーパーで食材を買う時に産地を気にする方が増えましたけど、そういう人でも飲食店では不思議と気にしない。食材を大量生産するためには、そうするためのいびつな仕組みが裏側にはあるのだけど、そういうのって消費者まで届かないことが多いですよね。だから私は、食べる人が納得して料理を食べられるようにきちんと伝えたい。普段は国産のものや生産者がわかる野菜をできるだけ使うようにしています。自分で有機無農薬野菜を育てているので、それを使うことも多いですね。

ー たしかに、どんな食材を使っているかわかるだけで安心感が違います。

タカコさん:私たちは毎日、深く考えることなく食事をとっていますけど、食べるって実はとても社会的な活動だし、私たちが日々食べることで世の中は動いてる。だから小さなことかもしれないけど、いびつな仕組みじゃない真っ当な方法でつくった食材を使うことで、世の中を少しでも変えていけたらいいなと思っています。

 

「これヴィーガン!?」という驚きを生み出していきたい

キッチハイクCOOKタカコさん

ー では、これから挑戦したいことはありますか?

タカコさん:「これヴィーガン料理なの!?」と驚かれるような料理に挑戦したいですね。ヴィーガン料理って、魚介類を多く使う国の料理はかなり難しいんですよ。でも、難しいからこそチャレンジしがいがあるというか。お肉やお魚を使わずしてどうその味に近付けるか…というのはこれからも工夫を続けていくつもりです。まだまだ18カ国、これからもおもしろい国の料理を開拓していきます。

 

ルーツブックス上野
(タカコさんの料理を中心に人と人とがつながる)

 

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自分の“好き”を活かせる場、想いを伝える場ができることはもちろん、色んな人達と出会えたり交流できることは何ものにも代え難い価値がありますね。彼女のように「料理が得意」「誰かに料理を振る舞うのが好き」「大勢でワイワイするのが好き」という人は、まさにCOOK向きかも…! つくるより食べるほうが好きな人は、タカコさんが毎週水曜に開催している「Veganic High」をチェックしてみてくださいね♪

 

[関連サイト]
KitchHike(キッチハイク)
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