『ここちいい文字 ロゴタイプや書体のデザイン手法』

表情豊かで見る人に“ここちいい”感覚をもってもらえる
ロゴタイプや書体とは?

こんにちは。Keinaです。
今週の週末読みたい本は、デザイナー、文字好きは必見のここちいい文字 ロゴタイプや書体のデザイン手法です。デザイナーが定期的に集めたい資料のひとつといえば、文字にまつわる本ではないでしょうか。まず、つい手に取りたくなるタイトルと装丁デザインに心惹かれました。A5判で304ページ、本の厚さが約2.5cmありますが、紙の種類が軽いせいか、ここちよい重さに驚きます。

著者の高橋善丸さんは、グラフィックデザイナーであり、この本のアートディレクションも手がけています。本書では「印象ある字体」「表情ある書体」「質感ある文字」「空間での文字」の4つのテーマに分け、タイポグラフィや文字そのものの造形や考え方を順序立て、デザイン手法を約120点の実例とともに紹介しています。さっそく中面をご紹介していきます。

chapter 01

印象ある字体

V.I.などのロゴタイプではなく、書籍やイベントなど、表情やドラマ性を優先したタイトルを紹介しています。
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写真提供:パイ インターナショナル
ピックアップ説明では、文字ごとの骨格の特徴を読み、そこを増強してデザインしていく工程が紹介されています。どんな風に作られたものなのか、文字をつくる工程と説明と読むと、とても勉強になります。

広場

▲広場

建築デザイナー達のための業界雑誌です。皆がこの紙面上に集まり意見交換をする広場のようなメディアということで名付けられたようです。広場は英語で「Square」と表現されることもあり、四角の意味もあります。そこで「O」の1文字だけを大きく強調して、文字通り広場に見えるようにしました。ロゴ全体をグリッドで構成しているので、「O」はそのまま四角(Square)になりました。

水木しげる 妖怪図鑑
(水木しげる 妖怪図鑑)

レトロな印刷物 家族の博物紙 -1
(レトロな印刷物 家族の博物紙 -1)

検証 ― 2

▲検証 ― 2

 字体をつくる時に必要なことが2つあります。第1は組まれた文字群がどんな意味合いを持っているのか、あるいはどんな物語性を持っているのかということです。文字に単に変化をつけて個性を出せばいいというものではなく、あくまで表現したい意味をいかに造形で視覚に訴える形にするかを目的とするからです。
 第2は、組まれた文字同士の視覚的関連性は何なのかということです。群の中の共通の特徴を探し出し、そこを強調する、あるいは、アクセントにするなどもポイントになるのです。

カタひら - 1

▲カタひら – 1

カタカナは漢字の一部を抽出してできた文字なので、基本は漢字のようにグリッドで構成されています。対してひらがなは、筆跡から生まれた文字なので、有機的な曲線でできていて、カタカナとは性格を異にしています。そこで、ひらがなもカタカナのようなグリッド的イメージでつくることを試みました。だた、「あ」や「ぬ」など複雑な文字は画線を略して、線のボリュームが揃うようにしています。

chapter 02

表情ある書体

ディスプレイ書体をはじめ、加えてさらに限定したかなやアルファベットの書体を紹介しています。
レイン - 3

▲レイン – 3

上:前頁の下2点と同じシリーズで「Know the facts (真実を知る)」として世界の子ども達の社会問題を訴えるポスターです。縦ラインを強調しています。 次頁:「エモーショナルタイポグラフィー」のテーマポスターです。「レイン」の書体のみで構成し、文字部分を大きくして使用することで、流れるラインではなく、ドロッとした粘りのある液体がイメージされます。

検証ページでは、どうやってその形になったのか、フォントをつくるときのルールや工夫などエピソードを知ることができ、さらに文字への感心が深まります。
(検証 ― 3-2)
検証ページでは、どうやってその形になったのか、フォントをつくるときのルールや工夫などエピソードを知ることができ、さらに文字への感心が深まります。

chapter 03

質感ある文字

文字面に質感あるいは素材感を施した文字を紹介しています。
質感ある文字/検証 ― 4

▲検証 ― 4

 異素材の組み合わせでタイポグラフィーを表現した場合のメーキングです。アルファベットの「T」と「L」をグラフィックモチーフとし、2種類の写真を使い、加えてフロストガラスの表現はPC上で作成します。素材の質感にこだわるなら、3Dアプリよりイラストレータで図形を描き起こし、フォトショップで立体化し細かなディティールを描き込む方がリアリティが出ます。素材に透明感等を付けるのも、絵画的で面白い効果が出るでしょう。

chapter 04

空間での文字

2次元の文字を擬似的に立体感が出るよう表現しているタイポグラフィーを紹介しています。
空間での文字/AMITY-1

▲AMITY-1

2次元の文字が立ち上がるだけではなく、浮かんで見えるようにしました。グラデーションが必要になるので、黒い砂を使用してグラデーションを表現しました。中国との関係が緊張した時期だったので、「Amity(友好)」のネガティブ化したものが「Army(軍隊)」であることをメッセージとしました。

書籍をよく観察すると、タイトル部分はUV厚盛り加工されていました。
書籍をよく観察すると、タイトル部分はUV厚盛り加工されていました。シンプルながらも、さりげなく質感にまでこだわっていて、ここちいい装丁デザインです。本を手にするたび、ついつい触りたくなるはずです。本の背のタイトルにも同じ加工がしてあり、書店でも見つけやすそうです。カバージャケットを外したバージョンもシャープでいい形です。ぜひ、実際に手に取ってご覧ください。

タイポグラフィや文字のヒントが盛りだくさん!

ここちいい文字についての説明が、非常に理解しやすく、ていねいに書かれていて、あっという間に読み終わってしまいました。文字について学びたい方にぴったりの内容です。

    『ここちいい文字 ロゴタイプや書体のデザイン手法』

    ここちいい文字 ロゴタイプや書体のデザイン手法

    表情豊かで見る人に“ここちいい”感覚をもってもらえるロゴタイプや書体。本書では「印象」「表情」「質感」「空間」のコンテンツに分け、タイポグラフィや文字そのものの造形や考え方を順序立て、デザイン手法を120余の実例とともに紹介。文字の深淵を探ります。
    著者:高橋善丸
    仕様:A5判(210×148mm)
    ページ数:304 Pages(288 Page in Color)
    装丁:ソフトカバー
    ISBN:978-4-7562-4844-2 C3070
    発売元:パイ インターナショナル
    定価:本体2,600円+税

◆関連サイト
ここちいい文字 / PIE International
高橋善丸

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