世界の布と雑貨のお店&JOURNEYのつくりかた vol.18|民族の刺繍に惹かれて

ベトナムサパ、モン族の村を訪ねて

こんにちは!世界の布と雑貨のお店「&JOURNEY」店主の未希です。
サンフランシスコに移住してきてまだ一ヶ月もたっていませんが…さっそく日本が恋しいです!日本食は毎日自炊で食べているけれど、料理上手の友達や行きつけの近所の定食屋さんの味には及ばないし、気軽に会える友達や家族って、やっぱりいいですね。近ければ近い程、手を伸ばせば手に入るものこそ…そのありがたみや素晴らしさって見えにくいものです。

日本にいれば気軽に行けたはずのアジアの国々も今やはるか彼方…遠く遠く。そしていつでも行ける、と思っていたので意外と全然行っていない…。今回は、そんなアジアの中でも唯一買い付け旅として訪れたベトナムのサパのお話、そして民族の手仕事についてお話したいと思います。

刺繍の民族衣装を着た山岳民族に会いたい!

お店を始める前に買い付け旅で訪れたメキシコグアテマラ。その民族衣装と織物、そして刺繍の素晴らしさに出会って以来、お店は特に刺繍ものが多くなっていきました。そんな折、「刺繍が好きなら、サパはおすすめ。民族衣装を着ているよ。」といろんな方から後押しされて昨年6月に旅立った、ベトナム北部の山間の地、サパ。

ハノイからバスで5~6時間、ベトナム人も訪れる避暑地だそうで、ホテルや飲食店もたくさんの観光地。アクセスは悪くありません。そんなサパ周辺にはモン族・ザオ族といった民族の村が点々とあり、どこまでも広がる美しい棚田ととうもろこし畑をつくり、素朴な暮らしをしています。永遠と続くかのような広大な棚田…写真では伝わりきらないその美しさを見に行くだけでもおすすめです。

「明日うちに来ない?」サパに到着すると、さっそく民族衣装を着た女性に声をかけられました。

「明日うちに来ない?」
サパに到着すると、さっそく民族衣装を着た女性に声をかけられました。

モン族の女性がトレッキングガイド&お泊まりもさせてくれるというのです。トレッキング&ホームステイは、民族の方々にとって観光で現金収入を得る一つの手段となっているようです。

朝8時頃にお迎えが来てスタート。
途中何人かの外国人観光客を連れたモン族女性にも出くわします。みんな15~30歳くらい。その中の一人16歳の少女は赤ちゃんを背負ってのガイド…!
その中の一人16歳の少女は赤ちゃんを背負ってのガイド…!

モン族の女性はみんな働き者…畑仕事やトレッキングガイド、手仕事や行商。そしていたるところで麻を紡いでいいる女性の姿が。
モン族の女性はみんな働き者…畑仕事やトレッキングガイド、手仕事や行商。そしていたるところで麻を紡いでいいる女性の姿が。

本当にたくましい山岳の女性たち。

ガイドをする道のりも、途中ぬかるんだぐちょぐちょの道や、岩場などもあり、かなり本格的なトレッキングです。
ガイドをする道のりも、途中ぬかるんだぐちょぐちょの道や、岩場などもあり、かなり本格的なトレッキングです。

そんな道をモン族の女性たちは皆便サンで軽々とのぼっていきます…まるでトレッキングシューズが場違いのようで、ぐっちゃぐちゃになった私たちの靴を指して
「You have nice shoes! hahaha」
とからかうのが彼女たちのお決まりの文句のようでした。

こんなにも便サンがトレッキング向きだとはこの時まで知りませんでした…。
こんなにも便サンがトレッキング向きだとはこの時まで知りませんでした…。

そうして辿り着いたお泊まり先は、田んぼととうもろこし畑と質素な木と土のおうちがポツポツとある、静かな村。

そうして辿り着いたお泊まり先は、田んぼととうもろこし畑と質素な木と土のおうちがポツポツとある、静かな村。

お家は本当に簡素なつくりで、囲炉裏があって日本の古民家にも似ています。シャワーや水道はなく、どこからかひっぱってきている流しっぱなしの湧き水がちょろちょろとしているトイレで、桶に水をくべて行水するとのこと。
お家は本当に簡素なつくりで、囲炉裏があって日本の古民家にも似ています。
しかしお隣さん家には最近シャワーがつくられたそうで、きっと観光客の要望によってさまざまなインフラが整いつつあるようでした。この素朴な暮らしも徐々に変わっていくんだろうな…と思いつつ、民族の暮らしとともに残されている民族衣装や手仕事の伝承にも思いを馳せずにはいられません。

変わりゆく民族の手仕事

確かにサパには民族衣装を着たモン族やザオ族の女性たちがたくさんいて、お土産品にしても素晴らしいクオリティの刺繍や細工の手仕事がいっぱいでした。村には麻の葉やインディゴの葉が自生し、女性たちは暇さえあれば麻を紡ぎ、家の裏庭にある藍釜を混ぜ、細かな刺繍を施して1年程かけて自分たちの民族衣装をつくっています。
村には麻の葉やインディゴの葉が自生し、女性たちは暇さえあれば麻を紡ぎ、家の裏庭にある藍釜を混ぜ、細かな刺繍を施して1年程かけて自分たちの民族衣装をつくっています。

そして彼女たちの耳もとや手首を飾るピアスやブレスレットは夫である男性がつくるそうです。本当に美しくあたたかいものたち。
そして彼女たちの耳もとや手首を飾るピアスやブレスレットは夫である男性がつくるそうです。

以前モン族の貴重な古い刺繍を見れるイベントに参加しましたが、その緻密さは恐ろしいほどに細かく美しく、息をのむものでした。元々は家族のために、魔除けのために、また文字を持たない民族が自分たちの物語を言葉の代わりに書き記すために、祈りを込めるように一針一針指していた刺繍。
以前モン族の貴重な古い刺繍を見れるイベントに参加しましたが、その緻密さは恐ろしいほどに細かく美しく、息をのむものでした。

しかし、どこの国でもそうですが、安い既製品の流入や逆に上質な手仕事の買い占め流出とともに、昔ながらの民族衣装や素晴らしく細かな刺繍は姿を消しはじめています。実際、民族衣装を着ていても、民族衣装に既製品のシャツを合わせてミックスで着ている方のほうが多かったり…。
しかし、どこの国でもそうですが、安い既製品の流入や逆に上質な手仕事の買い占め流出とともに、昔ながらの民族衣装や素晴らしく細かな刺繍は姿を消しはじめています。

それを見てちょっとガッカリ…
というのも、こちらの勝手だなぁと思ったり。素朴な暮らしや手仕事を見たい観光客が、便利な物を持ち込んでいるのだから。民族の方々も暮らし方を決める選択肢はあるべきだし、学校に通ったり、若者が街へ出ていくに従って、無制限に時間をかけてつくられる手仕事が姿を消していくのは当然のなりゆき。

でも、それぞれの時代に合ったかたちで残されていけるように、労力や技術に見合った対価を受け取れるように、その価値が継続して見出されつづけていくといいなと思います。&JOURNEYは小さな小売店でしかないけれど、いつかその価値が良いカタチで循環する仕組みをつくれるようになりたい!と思っています。

当たり前に身近にあると思っていたものが、気づいたときには遠く手の届かないものになっている…

当たり前に身近にあると思っていたものが、気づいたときには遠く手の届かないものになっている…
でもそんな時こそ、本当に大事なものを、見直すきっかけになったりもしますよね!私も日本から離れたこの場所で、たくさんの気づきを得られる日々にしたいと思っています。

つづく

    &JOURNEY NEWS

    【特集】アジアの手仕事に見える少数民族の美学

    【特集】アジアの手仕事に見える少数民族の美学
    昨年私がベトナムで買い付けてきた商品はほとんど完売してしまいましたが&JOURNEYのオンラインショップには今、旅の本をつくる『Snip!』さんのご協力のもと、ミャンマーやタイ、ラオスなどの少数民族の手仕事の商品が並んでいます。それぞれに特徴があって、そのセンスに脱帽です!

    【特集】新生活に迎え入れたいものたち

    【特集】新生活に迎え入れたいものたち
    待ちに待った春。自然を身近に感じられる木の器や食器、インテリアに取り入れたいハンギングプランターなど、春の新生活にお部屋に迎え入れたいものたちを集めました。

    &JOURNEY

    「日々の暮らしに旅を」
    世界の布と雑貨のお店 “&JOURNEY” は世界各国の手仕事を巡る「旅」のエッセンスを集め、日常に取り入れられるようご紹介させていただくセレクトショップです。
    http://www.andjourney.com/
    facebookページ
    Instagram
    Twitter