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照明、花、アンティーク、食品から内装デザインまで。肩書きにとらわれないオーナーが作る新しいお店のカタチ

やわらかな陽がそそぐ春日和が続きますね。こんにちは、戸田江美です。
今日ご紹介するのは、そんな気持ちのいい日にお気に入りの服を着て訪れたくなるお店『anima garage』さんです。私が生まれ育った下町・荒川区で、“照明とお花と空間づくり”を提供しています。

私がanima garageに興味を持ったのは、地元のお店の方々からオススメされたことがきっかけでした。以前、箱庭でも取材した『nécoya BAKESTAND』さんや『natural cafeこひきや』さん、『n.r store』さんにこぞって「anima garageさんは本当に素敵!」と太鼓判を押されたのです。

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今回、オーナー・福嶋さんに取材をしてみて、その太鼓判にも納得しました。anima garageはおしゃれなだけじゃないお店だったのです。街に根付く、電気屋の3代目の職人でもある福嶋さんの思いと共に、お店の様子をご紹介します。

来た人の暮らしにハリが出そうなモノが揃うお店

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博物館のような、異世界のような、タイムスリップしたような感覚になる不思議でワクワクする店内。福嶋さん、「ナウシカの秘密の部屋が大好き」らしく、なんとなくその雰囲気を感じます。

そんな店内には、福嶋さんが自ら選んで買い付けるさまざまな商品が並んでいます。

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部屋の主役になりそうな照明。

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こちらは船や工業施設で使われる照明。

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船で使用される石油ストーブ。

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お店に入ってまず圧倒されるのはこれ。天井からたくさん吊るされた国内であまり見かけないようなドライフラワー。

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「既製品として出荷されているドライフラワーよりも、自然なままの姿が好きなんです。」という福嶋さんのこだわりから、ドライフラワーはすべて自家製。
特に目を引く変わった形の花は、オーストラリア産です。

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森林にいる気分になるような、草木の香りをイキイキと醸す生花。よくお花屋さんにある明るくラブリーな定番品よりも、個性が強く森や野原に咲いてそうな自然を感じるラインナップ。
「そうそう、こういうお花が欲しかったの!」と思う箱庭読者さんも多いのではないでしょうか。

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観葉植物や多肉植物。ガーデニング用品や鉢。

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ぬくもりと格好良さが同居するアンティークやキッチン用具。

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生産者の顔が見える食品。

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福嶋さんが作ったロゴをあしらったオリジナルグッズ。

取扱品のジャンルはフランスっぽいものからインダストリアル系のものまで色々な種類があるのに、福嶋さんのセンスの元、統一された空間になっています。

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お店にあるものはどれも、持っていれば暮らしにハリが出そうな、おしゃれで質のいいモノたち。見ていると、審美眼が育つような気がします。店内の雰囲気も、草木の香りとやわらかな灯りで居心地がいいながらも“このハイセンスな空間にいる緊張感”みたいなものがあります。

「いろんなお客さんに気軽に来てもらいたい。だけど気軽なだけじゃなくて、ちょっと背筋が伸びるような空間でもありたいんです。このお店に来ると質のいい日を過ごせたような気分になる。いいモノを知れる。そんなお店にしたいんです。」

福嶋さんの筋の通ったブランディングが、anima garageの魅力を作り上げているんですね。

「うちは夜になるとまた違う雰囲気になりますよ。電気屋なので、照明が活きる夜の見え方にはこだわっています。」
ということなので、夜にお店に行ってみると…

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本当だ!下町の路地にあたたかい灯りが散りばめられていました。

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お店の中、まるでファンタジー映画の世界です。

3代目が変えた、街の電気屋さん

それにしても、「照明とお花と空間づくりを提供」って、幅が広すぎて不思議ですよね。Instagramのプロフィールには「ライフスタイルショップ」って書いてあるし…。何でこんな多種多様な商品を取り揃えたお店をやっているんだろう?

それは、anima garageの成り立ちに訳がありました。
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anima garageは元々、福嶋さんのおじいさんが始めた街の電気屋さんです。3代目の福嶋さんは、電気屋さんを継ぐつもりはなく、保育士の道を歩んでいました。「子供にとって本当にいい教育」について考えるうちに教育・福祉先進国の北欧に興味を持ち、留学の準備を始めます。

「その準備期間に、家業である電気屋を手伝い始めました。そしたら忙しすぎて、留学どころじゃなくなっちゃったんですね。じゃあ、電気屋を一生懸命やるかと思い、専念し始めました。
しかしまあ、電気屋の仕事って楽しくない(笑)。言われた通りの照明を使って、図面通りに電気工事して。

じゃあ、自分でおしゃれな照明を使ってみようかなって思い立ったんです。ちょうど自分の部屋の照明が壊れたので、選び抜いた照明をつけてみたら、すっごくいい空間になった。部屋にいる時の気分が変わりました。
照明って部屋全体を変えるほど影響力のあるインテリアなんだって気付いたんです。」

この気分を他の人にも伝えたい。こだわって選んだ照明を売れる店を構えたい。何なら電気工事だけでなく棚などのインテリア制作もして、理想の空間づくりを叶えてあげたい。
そう思った福嶋さんは、先代であるお父さんの了承を得て、倉庫をご自身で施工し始めます。天井や壁を塗装しレンガを貼り、陳列棚を作る…お手製の店の完成です。

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しかも、花を活けて飾るコンクリート製の水路も手作り。まだ制作途中ですが、近いうちに水を循環させて水音のする心地よい器にするのだそう。

そして、お店をするからには照明だけを並べるのではなく、照明を含めた空間スタイリングを考え直せるような店にしたいということで、花やアンティークの取り扱いも始めます。

「花は当初、鉢植えばかりだったのですが、ある日ご近所のお年寄りに、お仏壇に備える花を売ってくれと言われました。切り花の取り扱いは分からないし…と思ったんだけど、いろいろ調べて揃えてみることにしました。」
仏花と言ってもよくある菊は使わない、福嶋さんらしいセンスを取り入れたものにしたそうです。

「そのあと、卒園式用のブーケの依頼が入ったんです。その依頼、本来ならブーケについて知識のない僕はお断りするんですね。だけど僕の不在中に母が依頼を受けちゃって…母、すごく天然なんです(笑)。」

そうそう。福嶋さんのお母さま、ふんわりした方でお喋りすると癒やされるんです!

「納品まで時間があるということで、これも機会だと思いブーケについて勉強することにしました。それが、『anima garage』を構えて3ヶ月の時ですね。お客さんからの依頼で、切り花、ブーケも取り扱う店になったんです。」

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この写真のような、オーダーメイドのブーケも取り扱っています。福嶋さんにヒアリングしてもらって作るブーケ、独創的でおしゃれです!

いまの時期は母の日のフラワーギフトも絶賛予約受付中だそう。
「可能な限り、お母様のイメージや性格、服装、好きな物などを一つ一つヒアリングさせて頂き、全てオーダーメイドでブーケやコンポジションフラワーをお作りさせて頂きます。人間や生き物それぞれの形が違うように、ブーケも植物ですので一つ一つ違いがあります。今年はどんなブーケが届くだろう…♪そんな楽しみ方をして下さると嬉しいです。」とのこと。
お花屋さんが心を込めて、その人だけのモノを作ってくれるってとっても嬉しいし贅沢ですよね。喜ばれること間違いなしです!

電気工事士、花屋、空間デザイナー…肩書きにこだわらない働き方

電気と花のセレクトセンス、そして店を施工した内装技術とデザインは続々とお客さんを呼びます。「自宅の植栽を手がけてほしい」「新しい店のデザインと施工をしてほしい」「ウェディングの花やコサージュを作ってくれないか」などなど。

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大胆に木を店内に取り入れたり、照明で幻想的な空間を作ったり。これは依頼が殺到するのも納得です。

「お客さんが本当に作りたいイメージを引き出すためにヒアリングもじっくりします。作ってみて、自分が納得できない出来になった時は、お客さんに断ってやり直します。もちろん無償で。もしかしたらこれが職人の血なのかもしれませんね。」と笑う福嶋さん。休みなく働くけれど、すごく楽しいんだそう。

「色んなことができるから、それで気分転換できています。仕事の幅が広いから自分が何屋さんなのか分からないけれど…肩書きにはこだわっていません。」

パラレルキャリアを実践する今っぽい働き方!幅広いけれど、浅くはない。どれもプロとして仕事をこなす姿勢は、お店や施工した内装写真から伝わってきます。だからこそ、たくさんのお客さんと地元の人たちに愛されるのでしょう。

直近の目標はスーパーを作ること。anima garageは地域の暮らしを豊かにするお店。

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多様な仕事をこなす福嶋さんですが、またひとつ、事業を増やす目標があるのだそう。それはなんと「スーパー」です。

「電気屋を継いでから、街のことをよく考えるようになりました。それで…近いうちに、スーパーを始めたいんです。本当にいいものを扱う食品店。納得して、安心して食べられる野菜を揃えて。そして地域の子育て中のお父さんお母さんが、1〜2時間とかフレキシブルに働ける場。」

街の電気屋さんがスーパーを作る…聞いたことないですよね。だけど、地道に地域での様々な商いを続けてきた福嶋さんなら絶対に叶えられそう!
anima garageがある町屋から、新たな荒川区の豊かな暮らしが生まれるかもしれません。

「うちはただ物や技術を売る店じゃない。売り手と買い手、お互いが満足して安心できる、本当にいいものを伝える店でありたいんです。」
というポリシーの元に、生まれ育った街で、地域を想いながら、色々な仕事を軽やかにこなし、目標に向かって邁進する福嶋さん。お話をうかがっていくにつれ、福嶋さんは私にとって「こうなりたい、地域の先輩」像になっていました。

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最後に、お店の名前『anima garage』の由来をうかがいました。

「animaとはラテン語で“息物(いきもの)”のこと。人間や動物だけでなく、息をする草花も含まれます。そして“八百万の神”なんて言うように、僕たち職人が魂を込めて作ったモノに息吹が吹き込まれることも含まれるんじゃないかと考えました。
うちは、そんな息物を集めたお店なんです。」

新たな世代の職人像・福嶋さんが商う、息物のお店。ぜひ、お店でモノたちと向き合ってみてください。
anima garageさんは定期的にイベントをおこなっています。ゴールデンウィークにはDIYと植物のワークショップも開催されるので要チェック!