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世界に広がるZINEのこと vol.3|遊べる楽しいZINE『KIDSZOO』
台湾のクリエイターが作った、台湾と日本をつなぐアイデアZINE。
「KIDSZOO vol.01 / vol.01.5」
こんにちは、橋本香です。先日台湾でZINEのイベントが開催されるということで、見に行ってきました。開催されたZINE DAY TAIWANというイベントは、台湾と日本のクリエイターが一緒に出店するというイベントで、第1回目ということもあり、どんなZINEが出てくるのか、わくわくでした。イベントは、すごいお客さんの数で、若いクリエイター達が自分の作った個性豊かなZINEについて、お客さんに熱く語っている姿をたくさん見かけました。今回はそのZINEイベントで出会った台湾のクリエイター KOH BODYさんのZINEをご紹介します。
大人も子供も楽しめる、
見る人をまきこんでいく「KIDSZOO vol.01」
この「KIDSZOO vol.01」は、見た目はまるでレコードのような四角い形で分厚いジャケット。そこに、たったひとつ「KIDSZOO」とタイトルだけがデザインされているシンプルさが、かっこいいんです。そして、斜めについているこの白いゴム、ZINEを閉じた状態だとデザインのアクセントになっているのですが、縦に付け替えるとバラバラだった本文用紙が、本として綴じられた状態になるんです。なるほど~~!と思わず口から出てしまったくらい、アイデアが面白いZINEです。
ページを開いたそこには、目次が中国語で、ZINEの説明が中国語、日本語、英語で書かれていました。
KIDSZOOは親子で一緒に楽しむことができるゲームブックです。名場面の左右2つの絵を見比べて違うところを見つけ、お子様の観察力、見る力、判断力、空間認識能力、思考能力を鍛える親子仲良く知恵を付けることができるZINEです。一つのテーマは10個違うところがあります。どうぞお探しください!対象年齢:3才以上
(『KIDSZOO vol.01』巻頭ページより引用)
最初は素敵なイラストレーションのZINEだな、としか思っていなかったのですが、説明書きを読むと「間違い探し」をテーマに作られたZINEなんだということに気が付きました。そして、早速 01.HIKING にチャレンジしてみました。
01. HIKING
まず見つけたのが、焚き木にあたっている熊。ドリンクを飲んでいるのと、たばこを吸っている姿です。これは洞窟の中でしょうか。
ハイキングロードの近くには牧場らしき場所があり、その牛の姿が…。あ!お乳の数が違っていました!尻尾も違う!
ハイキングしている人も、少し装備が違っていたりするんです。
まだ4つしか見つからない…と思っていると、太陽が月になっていたり、その下の岩陰に隠れた人の目にもサングラスに、ハイカーが傘をさしていたり…。もしかすると左のページは夜のハイキングなのかな?そんなことを想像しながら残り3つを探していきました。道の部分に隠れている文字が怪しい…思い切って絵の外にあるタイトルの文字が違うとか?色んなことを想像していきましたが、なかなか見つからず、思った以上に時間が過ぎていき、本当に熱中してしまう1冊でした。
なぜこんな間違い探しだけのZINEを作ろうと思ったのか、作者のKOH BODYさんに聞いてみたところ、「KIDSZOO vol1、vol1.5両方ともゲームにした理由は 、自分はずっと本と雑誌のデザインをしているけど、実は文字を読むことはあんまり好きじゃないので、ゲームを楽しみながら、僕の考えていることや面白いと思うことを感じとってもらおうと思ったからです。ちなみにこのZINEの答えはFacebookのページに書いてあります。隠れアイテム もいっぱいありますよ!!」と、話してくれました。
なるほど、そういう事だったんですね、確かにこれだったら文字を気にせず、子供から大人まで誰でも楽しむことができますね。答えがFacebookのページにあるというのも新しいし、ゲームではおなじみの隠れアイテムまであるなんて、もう一度また最初からアイテム探ししたくなります。
ちなみにZINEの中には全部で6種類のイラストページがあり、それぞれ個性的なページでイラストを見ていくだけでも楽しめます。
02. 辨桌
台湾の伝統的料理
03. SURF GARBAGE
環境をテーマに描いたイラストレーション
04. 底特律壞孩子Ⅱ
Detroit bad boyⅡ
05. FREDO
The Godfather Part II のワンシーンより
06. 比伯軍曹寂寞芳心倶楽部
サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド/BSATLES ALBUMより
作者の遊び心がいっぱい!
お酒好きにはたまらない『KIDSZOO vol.01.5』
もう1冊、「KIDSZOO vol.01.5」というタイトルのZINE。こちらにもまた遊び要素がたくさん詰まっているんです。vol.01とは違って手のひらにのるサイズの小さめのZINEで、サブタイトルは「高円寺帰り道」高円寺について描かれている旅ZINEでしょうか?
まずこのZINE、びっくりしたのは開き方が変わっていて、小さなサイズだったZINEが、最後にはA3サイズくらいの大きさにになるように、折りたたまれていたんです。広げていくとこんな感じにパタパタと少しづつ大きくなっていくんです。この開き方、これは1冊づつ、手作業でカットしたそうで、作者の遊び心が入っているのもZINEならではかなと思います。
すべて開いてみると、こんな感じになりました。この変わった開き方にも意味があると気が付いたんですが、このZINEは迷路のゲームになっていて、ページを開いていく先に次の道が続く仕掛けになっています。そして、中をよく見ていくと、「朝まで」「ホルモン炒め」「SEIYU」「串焼き」「飲む」「マルキュウ」「もつ越前屋」「HOPPY」「福龍門」「高円寺」何だか、よくある旅のZINEとはちょっと違うみたいです。そう、このZINEは高円寺駅界隈の飲み屋さんを、迷路の中で歩き回って飲みながら家に帰るというゲームZINEだったんです。作者のKOH BODYさんは、この道を飲みながら歩いて家に帰ったんでしょうか。
スタートから「飲む」の文字がはいり、純情商店街の中を抜け、帰る直前の「もう一杯」を振り払い、ふらつきながら家に帰る。私もお酒を飲むのが好きなので、このイラストレーションに思わず「うん、うん、ふらふらになるのわかるよ~」、と共感してしまいました。さらに、裏面には嬉しいこことに、9店のお店の情報が入っています。中国語の文章なのですが、漢字だからか何となく読めてしまいそうです。今度このZINEを持って、高円寺近辺を本当に探索してみようかなと思いました!
もうひとつ、答え合わせにも、遊び心が入っています。vol.01はFacebookページに答えがあるということでしたが、このvol.1.05は以前箱庭の年賀状で紹介した印刷物+ARを利用して答えが見えるという仕組みなんです。専用のアプリを使って携帯をZINEにかざすと、答えを示す赤い線がでてくるんです!(※答えは期間限定表示です)
このZINE、ゲームをしながら遊べることで言葉が分からなくても、誰でもすぐに楽しめそうな気がしました。作者のKOH BODYさんは、日本でデザインを学び、イラストレーター、デザイナーとして仕事をした後、現在は台湾に戻って活動されています。台湾の若いクリエイターが作ったこの2冊のZINE、日本と台湾の文化がひとつになり、色んなアイデアが詰まっているとても新しいZINEです。台北市内のshop、ギャラリー、本屋さんでも一部販売しているそうなので、ぜひ見つけた方は手に取って実際に見てもらえたらいいなぁと思います。
次回も個性あふれるZINEをご紹介しますので、楽しみにしていてください。
つづく
『KIDSZOO vol.01』
著者:KOH BODY
100冊
定価:本体 2300円+税
2016年6月発行
『KIDSZOO vol.01.5』
著者:KOH BODY
200冊
定価:本体 600円 +税
2017年3月発行
◆取扱店
COWRecords
台北市大安區安東街40巷7號
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台北市中山區中山北路一段53巷6號
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台北市中正區羅斯福路三段244巷10弄2號
【プロフィール】
KOH BODY
イラストレーター、グラフィックデザイナー。東京でのデザインの仕事を経て独立。台北在住。雑誌や書籍のイラストを中心に、アパレルブランドのイベント用イラストなど、日台で幅広く活動中。言葉の壁を超えて遊べるZINE”KIDSZOO”シリーズは現在2作目。お酒大好き。
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