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世界に広がるZINEのこと vol.4|暖かいイラストが並ぶ『sen lin tsan tsan』
手づくりの跡が各所にちりばめられた、
暖かいZINE「sen lin tsan tsan」
こんにちは、橋本香です。今、世界中ではいったいどのくらいのZINEが発刊されているのか、誰も分からないくらいZINEは自由に発刊されています。そんなたくさんのZINEの中には発行日や発行部数などの掲載が無いものもたくさんあります。今回ご紹介するZINEも、発行部数、発行日がほとんど何も書かれていません。一体このZINEが何冊作られたのか?もうそれは想像していくしかありません。でも、想像しながら読んでいくのも、またZINEの楽しい読み方なんです。
このZINEがどうやって作られたのか想像してみました。
綺麗な黄色の表紙に黒1色で描かれたイラストがとても印象的なこのZINE、中のイラストもすべて黒1色で描かれています。最初にZINEを手に取った時、黒色の印象がコピー機のトナーインクの様な感じがしたので、コピー機を使って作られたZINEだと思っていたのですが、じっくりひとつづつイラストを見ていくと、少しインクの跡が見えるページがあり、指で黒い部分を触ってみると、ほんの少しだけですが盛り上がっているように感じました。これは、シルクスクリーンか、版画で印刷された可能性が高いと思います。でも、本当にそうだったら、1枚ずつ手で刷ったものを製本するという、とても手間のかかったもの、ということになります。さらには、鉛筆の手描き箇所もちらほらあって、なんだか手作業の跡が少しずつ見えて、作り手との距離が近くなった気がしました。
表紙に入っている白い文字は、紙の色ではなく白いインクで印刷されたもの。これもインクが理由か、触ると少し盛り上がっていました。
“in the forest,trees are tho●● ,embracing hands”
(「sen lin tsan tsan」表紙タイトルより抜粋)
●●の部分はインクがつぶれて少し読めなくなっていますが、それもまた「アジ」というもの。そしてぐっと心をつかむのが白い紙より少し小さいサイズにデザインされた黒い表紙、その上に黄色の表紙カバーが付いています。かなり凝った作りです。
シルクスクリーンかもしれないと、気づいたのは、このカバーの裏側にインクがついていたことがきっかけでした。この部分にも手作業の跡が感じられます。
表紙を開けたあと、見返しはグラシン紙という透ける紙が、遊び紙としてはいっていて、中のタイトルが少し柔らかい印象になって目に入ってきます。
そして、このZINEには、ほとんど文章がないのですが、唯一書かれている文章。
“森林裡,擁抱的雙手是大樹(森の中の、包み込む手は大樹でした)
(『sen lin tsan tsan』 6ページより引用)”
これは鉛筆を使って、手書きで書かれています。想いを伝えるために、あえて手描きにしたのでしょうか?読者の私には、鉛筆書きの文字は、印刷と違って作者の空気感を感じ、強く印象に残りました。このページに描かれたイラストの森の一部は、表紙にも使われているイラストだったので、やはりこのページには何かしらの想いがつまっているんじゃないかと思います。そして、たくさんの動物の絵が描かれたこのZINEは、森と生き物をテーマにしているように思えました。
(左)寝ている熊、(右)雨に出会うきつねのイラスト。
見開きページには山々のイラストがありました。さっきの動物たちはきっとこの山々の中の森で暮らしているのでしょうか。
このZINE、1枚ずつの紙がしっかりしているので、かなり太い糸で綴じられています。1冊ずつミシンで縫ったのかな?
木の上にいる2匹のフクロウが、夜、森の中で過ごす。思わずストーリーを考えたくなるイラストです。
最後のページまで読んで気が付いたのは、ページ数の表記はすべて手描きで、巻末ページには 鉛筆でこう書かれていました。
“森林燦燦 徐依嵐 2015”
この巻末の暗号のような2つの文字を頼りに調べてみると、森林燦燦(sen lin tsan tsan)というお店に関係するZINEのようで、Hsu Yi Lanさんという作家さんが作ったZINEだったんです。Facebookで見ると、この森林燦燦で販売しているジャムのラベルにもHsu Yi Lanさんのイラストが使われていて、販売している雑貨も暖かい雰囲気をしていて、とても気になりました。
次に台湾に行った時には、ぜひお店に行ってみたいと思います。ZINEを読んで新しいお店に出会うなんて、ZINEの新しい面白さを発見した気がします!次回は日本の作家さんが作ったZINEを紹介しますので、楽しみにしててください。
つづく
◆関連リンク
Hsu Yi Lan
森林燦燦