世界の布と雑貨のお店&JOURNEYのつくりかた vol.22|刺繍の工房で初めてのオーダーメイド

刺繍衣装の作り手を訪ねてサン・アントニーノ村へ

こんにちは!世界の布と雑貨のお店「&JOURNEY」店主の未希です。
今回のメキシコ・オアハカ州での買い付け旅で、ぜひとも訪れたかったサン・アントニーノ村。この村の女性たちがつくる美しい花々を描いた民族衣装の刺繍ブラウスやワンピースは世界中で大人気です。

パンジーやバラの花をメインに身近な草花や鳥などのモチーフが刺繍されていて、女心をくすぐります!
パンジーやバラの花をメインに身近な草花や鳥などのモチーフが刺繍されていて、女心をくすぐります!

サンフランシスコに移住してメキシコへのアクセスも良くなったので、作り手の方に直接会って、可能であればこの村の工房でオーダーメイドをお願いしてみたい!との想いを胸に訪れたサン・アントニーノ村は、のどかな印象の小さな村でした。
村内にはショップがポツポツと点在していて、一軒一軒訪ね歩いてみると、どのショップも素晴らしく凝った衣装が並んでいて、ちょこちょこ試着しては買い求めていました。
村内にはショップがポツポツと点在していて、一軒一軒訪ね歩いてみると、どのショップも素晴らしく凝った衣装が並んでいて、ちょこちょこ試着しては買い求めていました。しかし、前年オアハカを訪れたときよりも全体的にかなり値段が上がった印象…。買い手としては悩ましいですが、オアハカの刺繍が正当に評価されきちんと良い値段で売れているからこそ、良い質のものが残っているということ!一着仕上げるのにかかる時間と仕事量を考えれば、まだまだ安いと言えるのでしょう。

そんな中、ただ一人でたくさんの刺繍糸に囲まれてちくちくと刺繍しているおばあさんに遭遇しました。「近頃は色の使い方を知らない作り手が多すぎるのよねぇ」という自信に満ちたお言葉も、この刺繍糸の色数のバリエーションを目の前に納得。お歳は測りかねますがかなりのベテランであることは間違いない…。
「もうほとんど目が見えないけど…」と言いつつも、そんなことは微塵も感じさせない出来栄え!
「もうほとんど目が見えないけど…」と言いつつも、そんなことは微塵も感じさせない出来栄え!ワンピースを一着買い付けしました。おばあさんのように個人で手売りしている方は他にもこの村にいるのか尋ねたところ、ほとんどの作り手さんは何人かの作り手仲間や家族同士で集まって工房やお店を営んでいるそうです。そんなふうに協力し合う仕組みを確立させるのも、継続して村全体を豊かにしていく手段なのでしょう。

すばらしい刺繍技術を受け継いで暮らす

この村の刺繍の大半はサテン・ステッチという面を埋めるシンプルな技術ですが、特に私が惹かれるのは「デスイラード」という手法を使った手の込んだ刺繍。
この村の刺繍の大半はサテン・ステッチという面を埋めるシンプルな技術ですが、特に私が惹かれるのは「デスイラード」という手法を使った手の込んだ刺繍。
上の写真で網のようにレース状に透けている箇所がデスイラードのほどこされたもの。生地の横糸を抜き、残った生地の糸を刺繍糸でくくりながら、レース状にするというとても高度な技術です。レース状の中に踊り子や花模様が作られたりもします。この手法の刺繍はとても長い時間がかかるので、作り手さんの中でもできる方は限られているそう。

祖母や母から教わって、代々そのデザインや手法が受け継がれています。つまり家庭や作り手さんによって、または商品としての価格によって、そのデザインも多少異なりますしクオリティも様々です。凝った刺繍の入るデザインのものは、なんと一着つくるのに、数週間から数ヶ月かけて一針一針丁寧に刺されます。
祖母や母から教わって、代々そのデザインや手法が受け継がれています。つまり家庭や作り手さんによって、または商品としての価格によって、そのデザインも多少異なりますしクオリティも様々です。
刺繍の下地に手描きの下絵が残っているものもありますし、日本の大量生産の衣服のように、きっちりと正確な仕上がりのものはありません。でもだからこそ、どれを手にとっても手仕事のあたたかみを感じられ、愛着が湧きます。

そして、初めてのオーダー!
一番念頭に置いたのは「日本でも着やすいデザインかどうか」

いくつかのショップを巡った中で、最後に行き着いたのは、感じの良いお店でした。そのお店で今回オリジナルのオーダー制作をお願いしてきました!このお店は工房と兼ねているようで、数人の女性たちが働いていました。作り手さんに可能な制作日数などを聞きながら生地や糸をその場で選びます。
たくさんの生地サンプルがあるわくわくする空間!
たくさんの生地サンプルがあるわくわくする空間!

生地は薄手の綿生地が主流ですが、長持ちしてくれるよう少し厚手のものを選び、着丈やデザインを指定してきました。
生地は薄手の綿生地が主流ですが、長持ちしてくれるよう少し厚手のものを選び、着丈やデザインを指定してきました。

私がオーダーで一番念頭に置いたのは「日本でも着やすいデザインかどうか」。
私がオーダーで一番念頭に置いたのは「日本でも着やすいデザインかどうか」。メキシコにいるとどうしてもカラフルで可愛いものや、素晴らしい技術をふんだん盛り込んだ凝ったものに目が行きがちですが、日本でも実際に年齢問わず長く着ていただけそうなシンプルなものが欲しいと考えていました。時間をかけてつくられたものだからこそ、衣服は衣服として、長く愛用してほしいと思うからです。そこで初めて今回のオーダー。どんな風に仕上がってくるかは、また近々メキシコに行くときのお楽しみです…!

San Antonino Castillo Velasco(サン・アントニーノ・カスティージョ・ベラスコ)