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日本文化手帖 vol.02|荻窪「6次元」ではじめての金継ぎ体験
うっかり割ってしまった器を金継ぎでよみがえらせる、やさしい時間。
こんにちは。Keinaです。日本に住んでいても、まだまだ知らない日本文化は意外と多く、体験してみたいことは盛りだくさん。気になる日本文化を実際に体験してレポートする連載の2回目は、ずっと気になっていた「金継ぎ(きんつぎ)」。
わたしは、いつからか割れた器は金継ぎで修理できることを知っていたので、3年前に割ってしまった器さえ大事にとっておきました。いつかタイミングのあうときに、「6次元」店主のナカムラクニオさんが開催している「金継ナイト」に参加しようと思って、早くも数年が経ちましたが、待ち望んだチャンスは突然やってくるもの。割れた器と一緒に金継ぎワークショップに参加した様子をお届けします。
日本文化手帖 vol.02は、
荻窪の「6次元」で、はじめての金継ぎを体験。
今回おじゃましたのは、荻窪駅から徒歩3分、階段を上がった2Fにある、ブックギャラリー「6次元」。わたしのように「金継ぎ」という名前は知っているけれど、金継ぎの方法は知らないという方は少なくないはず。最近では金継ぎの存在自体を知らない人々も増えているそうで、金継ぎをより多くの人に知ってもらい、捨てるのではなく修復することの大切さを分かち合えたら嬉しいとの想いからナカムラさんは金継ぎワークショップを定期的に開催しています。
「金継ナイト」について
「金継ぎ」とは、割れたり欠けたりした陶磁器を漆で接着し、継ぎ目を金や銀などで飾る修理法のこと。修理後の継ぎ目を「景色」と見立てて楽しむのが特徴です。このワークショップで使用するのは「本漆」ではなく、かぶれない「新漆」。簡易的な修理方法で器を直します。直したい人、直すことを覚えたい人など大歓迎!気軽にご参加下さい。
(「Rokujigen News」より引用)
この日の金継ナイトは、19時から約3時間の金継ぎワークショップで、参加費は材料とお菓子付きで2000円(※2回目の方は1500円)。筆やヘラなどの道具は、ナカムラさんが用意してくれるので、持ち物は欠けた器や割れた器(3点まで)のみでした。
材料は、アロンアルフアEXTRA速効多用途、マスキングテープ、耐水サンドペーパー(粗・細)、カッター、細工棒(箸などの細いものでもOK)、新うるし(フグ印)、金粉、薄め液(フグ印)、細い筆、絵皿、エポキシパテ。どの材料も東急ハンズなどで購入可能なので、覚えたら自宅でも金継ぎができそうですね。ナカムラさんが教えている金継ぎは、「新うるし」を使用しているので、初心者でも簡単にできて、しかも参加費もリーズナブルです。なんとなくハードルの高かった金継ぎが、こんなに気軽にできるのは、本当に嬉しいかぎり!
わたしが持参したのは、益子焼の器です。作家さんの名前は分からなくなってしまいましたが、若い女性がつくったもので、繊細な模様がお気に入りです。数回使っただけで、うっかり割ってしまいショックでした。こんな風に割れた器のカケラも捨てないで、一緒に保管しておくことをおすすめします。
自己紹介とともに、みなさんと器の思い出、実は使う前に割れてしまったなど、様々な器エピソードが聞けたのもおもしろかったです。なんと、今回参加するために自ら器を割ってきました!というユニークな参加者さんもいて驚きました(笑)。金継ぎに興味のある方は、おもしろい人が多い気がします。
1. 割れたカケラを接着剤でつけよう
割れたカケラは、欠けた部分に「アロンアルフアEXTRA速効多用途」を使って接着します。ちいさな欠けは、食器に使用しても問題ありませんが、全体が大きく割れているものは完成後、食品衛生法適合のニスなどを上塗りするなどして保護しましょう。
キレイに割れていたので、作業がスムーズでした。
接着剤が乾いたところに、エポキシパテを塗り込み、隙間を埋めていきます。エポキシパテを使うときは、色むらがなくなるまでよく練り合わせ、すぐに硬化がはじまるので素早く作業しましょう。
2. 表面を耐水サンドペーパーで磨こう
エポキシパテが固まったら、水をつけながら耐水サンドペーパーで表面を磨きます。最初は粗目でざっくり整え、仕上げに細目を使用します。指でさわってみて、段差がなくなり、なめらかになっていればOKです。
3. 新うるしで、最後の仕上げをしよう
「フグ印・新うるし」と「金粉」を1:1の割合で、薄め液を少しずつ入れながら混ぜたものを接着した部分の上に塗っていきます。
金粉は、器の色にあわせて、金、銀、プラチナ色から選べました。新うるしは自然乾燥が可能で、漆に比べて早く乾くだけでなく、かぶれる心配もないんですって。
お隣の席の方は、器が欠けてしまったそう。欠けた場合も修復可能なので、家に欠けた器がある方は、捨てないでとっておきましょう。
同じテーブルの方の修復作業も見れるので、こんな時はこうすればいいんだ!と実例を見ながら一緒に学ぶことができました。おばあちゃんの急須、大事なお皿やカップなど、できることなら修復したいという気持ちで、みんなここに集まったのかと思うと、なんだか温かい気持ちになりました。
金継ぎ終了後は、どんな風に修復できたのか全員が発表します。最初は普通の器に見えたものが、修復したあとは、どれも輝いて見えて、参加者のみなさんも嬉しそうないい顔になっていました。すぐに欲しいモノが簡単に手に入るようになった時代だからこそ、壊れたものを修復してよみがえらせるということが、すごく特別に感じました。
店内には、ナカムラさんが修復した器たちが並んでいます。金継ぎしたことで、ちょっと個性的になり、さらに美しく見えるから不思議ですね。
久しぶりにお店に遊びに来たら、いつの間にか店内がリニューアルしていました。手まりのランプがきれい!
本好きにはたまらない空間です。
資料用の「暮しの手帖 第4世紀58号」の金継ぎ特集の説明が分かりやすかったので、今度古本屋さんで探してみようっと。
家に持ち帰り、しばらくそのまま飾っていましたが、最近庭に咲いた花を飾ってみました。
割れた傷跡が、金継ぎによっていい模様に変化しました。
金継ぎで修復した器に、次は何を入れようかと、日々の楽しみが増えました。修復することを覚えたので、次は古道具屋で欠けた器を探して金継ぎナイトに参加するのもおもしろそう。金継ぎワークショップは、定期的に開催しているので、参加してみたい!という方は、6次元のEvent Informationページをぜひチェックしてみてください。 はじめて金継ぎにチャレンジしたい方におすすめです。
「6次元」の店主のおふたりには、箱庭の記事やイベントにもご協力いただいています。店主のナカムラクニオさんの著書『パラレルキャリア』や、もうひとりの店主の道前宏子さんのインタビューもぜひあわせてご覧ください。
6次元
〒167-0043 東京都杉並区上荻1-10-3-2F
お問い合わせ rokujigen_ogikubo@yahoo.co.jp
ナカムラクニオ
1971年東京生まれ。荻窪のブックギャラリー「6次元」店主。映像ディレクター。金継ぎ師。専門学校講師。山形ビエンナーレキュレーター。著書に『人が集まる「つなぎ場」のつくり方――都市型茶室「6次元」の発想とは』(CCCメディアハウス)、『さんぽで感じる村上春樹』(ダイヤモンド社)、責任編集短編小説集『ブックトープ山形』(東北芸術工科大学)などがある。
◆関連サイト
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