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映画『ありがとう、トニ・エルドマン』に出てくる幸せを呼ぶ精霊「クケリ」って知ってる?
毛むくじゃらの精霊クケリが父娘に幸せをもたらす!
こんにちは。あいぽんです。先日『ありがとう、トニ・エルドマン』という映画を観てきました。
悪ふざけが好きな父親と仕事で忙しい毎日を送る娘の交流を描いた本作。忙しく過ごす娘を心配して構う父親とそんな父に鬱陶しさを感じる娘。誰しも感じたことがあるような父と娘の噛み合わない関係と、親子の不器用な愛情表現にクスッと笑えて心温かくなる映画です。
そんな映画の中に突如登場する、この毛むくじゃらの生き物(ポスターのビジュアルに写っているモフモフの生き物!)。これはブルガリアに古くから伝わる幸せを呼ぶ精霊「クケリ」というものなのだそう。
クケリとは…
ブルガリアで毎年1月から3月の間に行われる伝統的な祭りの際に着用される被り物。その昔、新春になると毛むくじゃらのクケリに身を包んだ人々が腰につけたベルを鳴らしながら家々を訪れ、悪霊退治や家族の健康を祈っていた。現在もこの文化を継承している地域がある。日本の「ナマハゲに近い存在である。クケリは五穀豊穣、子孫繁栄など幸せをを運ぶものの象徴として今なお親しまれている。
映画の中でクケリはとても重要なシーンに登場します。そのシーンとクケリのビジュアルがとても印象的ですっかり気になっていたところ、なんと日本でクケリの第一人者で知られるイラストレーターの八重樫王明さんにお話を聞ける機会をいただくことができました!
一度目にするときっと気になる存在になる「クケリ」。その正体と魅力を教えてもらいました。
知られざるクケリの世界
イラストレーターとして、雑誌のイラストやアパレルメーカーとのコラボレーション、ゲームのキャラクターデザインなどを手がける八重樫さん。クケリに興味を持ったのは2010年頃、Flickrでクケリがパレードしている写真を見かけたのがきっかけだったのだそう。そこから調べはじめてすっかりハマってしまったという八重樫さん。2011年の春には友人と供にブルガリアへ行き、はじめて本物のクケリを見ることができたのだとか。
ブルガリアで古くからある精霊ということですが、実際クケリはどのような存在なのか気になるところ。
「地元の人でも知らない人は全く知らないんです。今回の映画の舞台であるルーマニアもブルガリアの近隣国ではありますが、みんなびっくりしていましたよね。近隣の国でも意外と知られていない存在なんです。
クケリにはいろんなかたちのものがいて、地域によって姿かたちが異なります。『ありがとう、トニ・エルドマン』に出てくるのはシンプルなかたちのクケリで、“バブゲリ”というものです。犬の頭がついたものやトーテムポールのように顔が3段になっているものなど奇抜なものもあります」と八重樫さん。
子どもたちもクケリになっています。ブルガリアはとても寒い国で、普段は街に人もあまりいない静かな国。だけど、祭りのときはものすごく盛り上がるのだとか。
確かに少しナマハゲのようにも見えますね。実は、八重樫さんは東北出身。そんなこともあってか始めて見たときから親近感があったのだそう。「もともとモンスターなどが好きだったこともあり、すっかりクケリにハマったのでしょうね」とも教えてくれました。
遠く離れた国にナマハゲのような存在がいるのはなんだか不思議な感じもしますが、東北やブルガリアなど、寒い地方にこういう毛皮や着ぐるみを着たお祭りは多いのかもしれないですね。
どうやったらクケリに会える!?
1〜3月にかけてブルガリアのいたるところで開催されるクケリのお祭り。小さな村でやっているようなローカルな祭りの情報はほとんどネットにないのだとか。
「ローカルな村のクケリを見たいのであれば、しばらく滞在してずっとチェックし続けなきゃいけないんですよね。
今年の春に2回目の訪問をしましたが、『スルヴァ(国際仮面フェスティバル)』という大きなイベントに行きました。このイベントはネットに情報もあるし、村ごとにいる異なるタイプのクケリを一堂に観ることができるのでおすすめです」と、クケリを見る方法も教えてくれました。
3日間開催されるというこのイベント、大統領のスピーチがあったり、花火が上がったりブルガリアの国を挙げての一大イベントなのだとか。でも、まだ日本人は10人くらいしか来ていないそうですよ。
「そのお祭りに行くと、クケリの仮面を作るワークショップもあるんです。本物の毛皮を使っているので、匂いを嗅ぐと獣の匂いがしたりして。鐘を鳴らしながらパレードするので、音もすごいんです。実際行ってみると映像では伝わらなかったことも五感で感じられて、よかったですね」。なんだかすごく楽しそう…!実際に見てみたくなります。
八重樫さんが描くクケリのイラストを
たっぷりクケリのお話を伺ったところで、八重樫さんがクケリのイラストを書いてくださいました。
2010年以降、八重樫さんの作品にもたびたび登場しているというクケリ。シンプルにクケリの魅力が出るよう、なるべく現物の奇抜なスタイルを活かすことを意識して書いているのだそう。
Illustratorを使って完成するまでの行程も見せてくれました。
イラストになってもモフモフ感があって、クケリかわいいなあ。
このクケリが描かれたグッズは映画館でも販売されるとのことなので、要チェックです。
また、今回は箱庭読者のみなさんに特別に、クケリが描かれた缶バッジ(写真右上)を5名様にプレゼントしちゃいます!
記事の最後にあるリンクよりご応募ください。
1本の映画から知ることになったクケリという不思議な存在。奥が深いクケリの世界にすっかり興味津々になってしまいました。そんなクケリが映画の中でどのように登場するのか気になってきませんか?父と娘の不器用な関係にクケリはどんな幸せをもたらすのか、ぜひ劇場で見てみてください。
映画『ありがとう、トニ・エルドマン』
6月24日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
©Komplizen Film
イラストレーター 八重樫 王明(やえがし きみあき)
1972年岩手県生まれ、東京都在住。出版物・WEB・グッズなどのイラスト制作・キャラクターデザインと並行しながら自身の作品を発表している。2013年、初の著書『NIPPON CLIPART ニッポン素材集』を出版。2014年、国際的なデザインの祭典『ピクトプラズマ』に招かれ、ドイツのベルリンにて初個展を開催、メキシコのモンテレイ現代美術館にて作品が公開される。近年は動物や日本文化をモチーフにしたコミカルな作風が多く、海外での活動も積極的に行っている。
缶バッジ 読者プレゼント
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◆プレゼント応募締切:6/30(金)
※当選は、商品発送をもってかえさせていただきます。(缶バッジ送付予定日:7月中旬頃)