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富山の魅力を再発見!富山駅から自転車で廻る美術館ツアー 〈後編〉
アートとデザインをつなぐ注目の新名所。建築家 内藤廣さんが手がけた富山県美術館の魅力とは?
こんにちは!SUZUKIです。
以前公開した「富山駅から自転車で廻る美術館ツアー〈前編〉」では、富山駅周辺に点在する4つの美術館を、シクロシティというレンタサイクルサービスを利用して巡るプランをご紹介しました。
簡単におさらいすると、前回ご紹介したのは樂翠亭美術館、富山県水墨美術館、高志の国文学館、森記念秋水美術館。北陸新幹線の停まる富山駅からほど近く、それぞれに魅力的なスポットです。
そして今回の〈後編〉では、新しく完成した富山県美術館をご紹介します。
3月末に一部オープンしたこの美術館は、現在は無料で入館でき、カフェやレストランなども営業中。グランドオープンは8月26日なのですが、それまでは展示物のない、まっさらな状態の美術館を体験することができます。これって、滅多にないチャンスですよね!?
シクロシティのターミナルも近いので、富山駅から自転車でさくっと移動が可能です。
この美術館の前身である富山県立近代美術館は、1981年の開館以来、富山を代表する文化施設として多くの人々に親しまれていましたが、耐震性などの問題を受け、世界一美しいスタバがあることで知られる環水公園に「富山県美術館」として移転オープン。
「アートとデザインをつなぐ」をコンセプトに、英語表記では Toyama Prefectural Museum of Art and Design 。ToyamaのT、ArtのA、DesignのDをとり、TAD(タッド)と略称します。
この美術館の特徴は、立山連峰に向き合う形で建てられていること。そして、晴れ、曇り、朝、夕、とその色を反映し、景色に溶け込む外観。
設計を手がけた建築家 内藤廣さんは、「素晴らしい景色を取り込むため、東向きは一面ガラス張りの壁面にしました。一方で、展示室は紫外線や温度・湿度の管理の点から閉ざされた空間にならざるを得ません。そこで、展示室の外に出ると景色が広がり、心が開放され、また中で美術品を楽しむことが出来るという美術館全体の空間構成を心がけています。」と語ります。
正面入口では、富山県の代表的な素材であるアルミの扉がお出迎え。金属を型に流し込んで成形する鋳造の技法で作られた後、つぶつぶの部分を磨き上げて鏡面にしているそうです。
その他にも建物の外壁や手すり、ベンチなど、様々な場所にアルミが使われています。
中へ入ると、まず目を引くのが、鮮やかな赤色の壁!よくよく見てみると、左官の技法で塗られた面白いテクスチャーです。
1階のフロアにはTADギャラリーがあり、現在は「実録 ありえない美術館ができるまで」を開催中(入場無料)。
この美術館を設計するプロセスで、内藤廣さんと設計スタッフの方たちが考えたイメージ、そして内藤さんが普段考えていることを含めて、「言葉の壁」として展示しています。
模型や図面、普段あまり見られない建築資材のサンプルも並んでいて、素材マニアにはたまらない展示ですね。
その他にも、ロゴデザインをされた永井一正さん、ユニフォームデザインをされた三宅一生さん、屋上遊具デザイン+ポスターデザインをされた佐藤卓さんなど、この美術館の創設に関わったクリエーターの方々を紹介する映像も公開中です。
ギャラリーのお隣にはミュージアムショップも。光が差し込む店内にはデザイン性に富んだアイテムが並んでいて、展示を見なくともワクワクしてしまいます。
子供向けの絵本や文房具なども豊富に揃っているので、家族みんなで楽しめそうですね。MOUNTAIN COLLECTOR のハンカチも販売しています!
続いて2階に上がってみましょう〜
このフロアは開放感あふれる吹き抜けになっています。環水公園に面した壁はガラス張りなので、明るい光が降り注ぎ、天気が良い日は立山連峰の展望が楽しめます。
左右に展示室を配し、建物の軸となる廊下には、富山県産の木材(氷見の里山杉)がふんだんに使われています。
この廊下には足音や声を吸収する吸音材が組み込まれていて、一歩足を踏み入れると、「シーン」とした静けさを感じることができます。木の香りと相まって、アートと向き合う前の心の準備を促すかのよう。
壁を構成する木材は1本1本丁寧に角が丸められていて、滑らかな手触り。細部にもこだわりが詰まっていて、見所がたくさんですね。なかなか先に進めません…
長い廊下を進んでいくと、正面の屋外広場には三沢厚彦さんの彫刻作品が。立山の開山伝説に登場する動物=熊をモチーフに作られたもので、「立山から降りて来たところ、この場所があまりに心地良くて居着いてしまった」というコンセプトなのだとか。
この熊さん、体長は3.5mもあり、その存在感ゆえ、大人にも子供にも大人気の撮影スポットになっています。
建物の壁は弧を描き、展示室を優しく包み込むような形状をしています。そのまま誘われるように進んで行くと、正面に見えるのは、富山県出身の詩人であり美術評論家の瀧口修造氏の展示室。
少し異質な雰囲気のオレンジ色の壁、何だかわかりますか?実は錆(さび)の色なんです。鉄板を錆びさせ、最も美しい色になったところで止めるのだとか。錆ってこんなに鮮やかなオレンジ色なんですね。思わずじっくり観察してしまいます。
続いて3階へ。後ろを振り返ると、先ほどの展示室が宙に浮いているように見え、とっても不思議。
広々としたアトリエでは、子供たちが参加できるワークショップが開催されます。
キッズルームも充実していて、絵の描ける壁は大人気の様子。
中央廊下の壁面に設置されている大きなタッチパネルでは、美術館が収蔵している膨大な数のポスターを、自由に見られるようになっています。
こちらは図書コーナー。アート、デザインに関する書籍が並んでいて、ゆったり過ごせるスペースです。
そして屋上庭園「オノマトペの屋上」に上がると、立山連峰を背景に、なんだか楽しそうな遊具が!
これはグラフィックデザイナーの佐藤卓さんが、オノマトペ(擬音語)をイメージしてデザインしたもの。もともとこの敷地には「ふわふわドーム」と呼ばれる子供たちに大人気の遊具があり、そこから着想を得てアイディアを広げていったのだとか。
「ぷりぷり」「ぐるぐる」「うとうと」など、楽しげなオノマトペがたくさん。
中でも、先ほどお話した「ふわふわ」は大人気で、休日には大勢の子供たちが飛び跳ねて遊んでいます。
こんなにきれいな立山を眺めながら遊べるなんて、富山の子供たちは羨ましいなあ。
佐藤卓さんが手がけた、開館予告のポスターにもオノマトペが散りばめられ、オープンへの期待が高まります。
富山県美術館のグランドオープンは8月26日(土)。開館記念展のテーマは「生命と美の物語 LIFE-楽園をもとめて」。
美術の根源的なテーマである「LIFE」を、素晴らしい世界=楽園としてとらえ、 「子ども」「愛」「日常」など、8つの章により構成し紹介する展覧会で、ルノワール「青い服を着た若い女」(三重県立美術館蔵)、岡本太郎「痛ましき腕」(川崎市岡本太郎美術館蔵)等の名作が観られるそうです。
先日梅雨入りが発表されましたが、雨にも負けず、自転車で巡るアートツアーを楽しんでくださいね。
富山県美術館
場所:〒930-0806 富山県富山市木場町3-20
開館時間:[美術館]9:30〜18:00(入館は17:30まで)
[屋上庭園、オノマトペの屋上]8:00〜22:00(入館は21:30まで)
休館日:[美術館]毎週水曜日(祝日除く)、祝日の翌日・年末年始
[屋上庭園、オノマトペの屋上]12/1~3/15
入館料:[コレクション展]一般300円(240円)、大学生240円(150円)
[企画展]展覧会ごとに設定
※( )内は20人以上の団体料金
※企画展観覧料でコレクション展も観覧可
TEL:076-431-2711
HP:http://tad-toyama.jp/