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世界に広がるZINEのこと vol.5|世界に1冊しかない特別なZINE『DRAW』
究極のZINEは、制作の裏側が伝わってくる『DRAW』でした。
こんにちは、橋本香です。ZINEと初めて出会った10年以上も前、本屋さんにZINEのコーナーはあまり見かける事もなく、もちろんZINE専門店もなく、それでもその当時職場でもあった印刷会社では漫画やイラストのZINEの注文がありました。最近では、ZINEを販売しているカフェや本屋さん、雑貨屋さんも多くなりまりましたが、私はやはり作家さん本人が販売しているイベントでZINEを探すのが好きです。今回はそのイベントで出会った1冊のZINEのお話しです。
何気ないZINEのイベントの中 この「DRAW」という1冊のZINEが気になったのは、残り2冊しか残ってなかった、という理由です。
ZINEは、その時にしか出会えないものも多く、
後から「買っておけばよかった」と思ったことも何度もあります。
なので、残り少ない冊数が並んでいる時は、どうしても気になってしまいます。そして、必ず聞いてしまうのは、「このZINE、ここにあるので最後ですか?」の一言。
そして、この時もいつもと同じように聞いてみたんです。普段は、あ、そうです~と帰ってくる答えが、この時は「実これ1冊づつ違うんです。」という答え。
その言葉を聞いて、種類の違う1冊づつの合計2冊が残っているんだと思っていたんですが、次に言われた言葉が「これ、絵を描く時のアイディアとか描いてたものをまとめたZINEで1冊ずつしかないんです」。まさか!?と思って、ZINEをめくって気が付いたんですが、全ページすべて手描きだったんです。
開いたそのページにはペンと鉛筆で描かれた、文字と絵。そして、次にめくったページには、ラフな線でとてもスタイルが良い女の子が描かれていました。その絵を見て私は心がぐっと惹きつけられてしまいました。
描かれたイラストのほとんどが鉛筆書き、鉛筆でないものはペンの直筆、文字や消しゴムの跡もたくさんついています。今まで持っていた「ZINEは印刷したもの」という自分の中のイメージがこの時、大きく変わりました。元々ZINEの考え方の中にある「自由さ」を考えると、印刷していないZINEも世の中に存在してもおかしくないと思いました。そして、これは私の中ではアートZINEと呼んでいて原画がZINEになった、大変貴重なものだと思っています。
折り目のついたページ、よく見ると、可愛いネズミが2匹…もしかしてと思ったら重なりました。こんな風に少しずつ絵を描いていくんですね。このZINE、製本は二つ折りにした紙を新聞紙のように重ねて、青い糸で結んでいるので、糸を外して折り目通りに折ってみると重なりました。その時、何だかほんの少し制作時間の一部を発見したような気がして、嬉しくなりました。
そして、一番気になったこの2つの絵、ひとつは鉛筆でひとつはペンで描かれているので、きっと何かの下絵かアイデアの積み重ねの途中なんだろうと、結局最後はどんな感じのイラストレーションになったのか、どうしても気になったので、作者のユッカ・バッファローさんに伺ってみたところ、とっても素敵なステッカーになってたんです!
このステッカーの周りに出てくるイラストは、このページや、他のページに描かれた手描きのイラストの中からもたくさん使われていました。まさにこのZINEはアイデアスケッチのZINEですね。
そして、このZINEの作者、ユッカ・バッファローさんがこの「DRAW」について 制作の動機を、こんな風に話してくれました。
「私はイラスト制作の際にラフから完成まで、トレース台を使って何度も何度も同じような絵を描きます。いちばん、自分が気持ち良く描けて、納得したものを採用します。完成するまでに、コピー紙が山ほど積み上がっていきます。毎度、処分するにはなんだか惜しい気持ちになって(それでもキリがないので捨てますが)とって置いた一部をまとめました。
普段は完成したイラストを見ることしかないと思うので、メイキングが好きな人、特に絵を描く人には面白がってもらえるかもしれないと思い発表しました。原稿をそのまま綴じたのは、なんだか生々しいというかプリミティブなものが作りたかったからです。」
このアイディアスケッチがまとめられたZINEは、すべてが原画で本当に世界に1冊しかないとても貴重なもので、そこには作者の制作に関わる時間も含まれていて、 本当に作者の色々な魅力が伝わってくるいい1冊で、とても大切にしています。
そして、この5番と6番がどんなふうに仕上がったのかも、教えてくれました。
本当に素敵なイラストですね。それにしても、このZINEは作家さんの世界がギュッと詰まったZINEでした。原画なので大切にしようと思います。今回は、私の持つZINEの中でも、貴重な1冊をご紹介しましたが、まだまだ世界には色んなZINEがあります。 毎日世界のどこかで新しいZINEができあがっているのかもしれない!と思うと、わくわくと、探しに行きたくてうずうずしてしまいます。次回はまたちょっと個性的でユニークなZINEをご紹介したいと思います。
つづく
『DRAW』
uccä buffalo(ユッカ・バッファロー) 著 1冊
定価:本体 3000円(税込)
2016年発行
【プロフィール】
uccä buffalo(ユッカ・バッファロー)
イラストレーター。人物をはじめ、動物や植物などのイラストを制作。関西を中心に展示やイベントに多数参加。
ucca buffalo online store
Twitter @ucca_buffalo
Instagram @ucca_buffalo
今後の予定
2017年6月17日(土)・18日(日) 名古屋 クリエイターズマーケット
(グッズの販売と併せて、似顔絵も描きます)
2017年7月15日(土)・16日(日) 大阪 メルメリィマーケット
8月京都 企画展に参加予定
◆GOODS取扱店
大阪 北浜FOLK old book store
京都 新京極ヴィレッジヴァンガード
その他、アート、コミック系のイベント等にて販売
◆関連リンク
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