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「日本のえんぴつづくりを継承したい」
500色の色えんぴつづくりに挑む、東京のえんぴつメーカーに密着
複数メーカーでつくりあげる、日本の技術を集結した色えんぴつ
こんにちは、箱庭編集部です。
先日、ご紹介したフェリシモの「500色の色えんぴつ」。500という色数の開発秘話や新シリーズへのこだわりをお伝えしましたが、特にフェリシモがこだわったのが日本製にするという点でした。
児童の減少、筆記用具の進歩やパソコン・スマートフォンの普及もあり、年々縮小している日本のえんぴつづくり。最盛期には140もあったえんぴつ製造会社も、今は44社まで減っています。「500色の色えんぴつ」のリニューアルを検討していたときにそんな現状を知ったフェリシモは、「どんな素晴らしい技術があっても、購入して使ってくれる人がいなければ継承できない。フェリシモが消費者の元にお届けするまでの流通を担いたい」という想いを抱き、東京のえんぴつメーカーや山梨の色しんメーカーの心を熱意で動かしました。
今回は、東京都内のえんぴつメーカーにお伺いし、実際に「500色の色えんぴつ」製造に密着しました。
そこで見たのは、昔ながらの技術と品質に対する厳しさが溢れた丁寧な日本のものづくりと、「500色の色えんぴつ」という前代未聞の注文に苦労を重ねながらも楽しく作業する職人の笑顔です。
みなさんにもこの記事でえんぴつづくりをちょっとでも知ってもらい、日本のえんぴつ産業ってすごいな。応援したいな。と思ってもらえたら嬉しいです。
2枚の板が、6本のえんぴつに!?意外と知らないえんぴつづくりの工程
今回お邪魔したのは、東京葛飾区にある2つのえんぴつメーカーです。
実は、東京都内の葛飾区・荒川区は、全国にあるえんぴつ製造会社のうち20数社が集中する、日本のえんぴつづくりの聖地。
さらに驚きだったのが、えんぴつは1社完結で作られることが少なく、工程ごとにメーカーが分業・協力しあってつくられるということ。この地でも、社員数が数名から数十名といった規模のえんぴつメーカーが協業して成り立っており、今回の「500色の色えんぴつ」も多くの会社の賛同を得てはじめて始動できたプロジェクトだそうです。早速、工程を見せていただきました。
最初に訪れたメーカーさんでは、木の板から1本のえんぴつの形になるまでの工程が行われていました。
写真左の板が、えんぴつの材料となるアメリカ産のインセンスシダー。こちらを、上の写真のように加工していきます。
①切れ込みを入れて糊をつけ、溝に色しんを入れる
②もう1枚の切れ込みを入れた板をのせ、貼り合わせて圧着させる
③上下の面を四角い形状に削る
④1本ずつ切り離す
えんぴつが2枚の張り合わさった板からできている事をはじめて知り、ビックリしました!最初はこんな風に板状になっているんですね。
こちらが工程①。あっという間に溝が入った板がたくさん出来てきます!
しんを入れる溝が出来ました〜!
こちらは ②で接着した板を圧着しているところ。1日かけて圧着させるのだそうです。これを見るだけではえんぴつとはわかりませんが、こんな風に作られていたんですね!
使い込まれた木製の取り箱に収められたえんぴつがなんとも美しい。木が傷つかないように木製の枠を使うのだそうです。ここからえんぴつの形に削っていきます。
通常なら丸や六角形という形状ですが、「500色の色えんぴつ」はこれまでなかった新しいフォルムにしたいということから、太四角という形状。手にぴったりとなじみ、置いても転がることのない、ずば抜けた存在感を感じられるデザインですが、これがなかなかの難題だったそう。実現のために、機械を改造したり、部品を新たにつくるなど、腕利きの職人もかつてないほど試行錯誤し、工夫をこらしています。
そうやって削られたのがこちら。
③の工程です。上下の板を削っていき、6本の四角いフォルムが現れてきました!
⑤のバラシと呼ばれる工程。ここでようやく1本1本のえんぴつの形状になり、切り離されます。
長年使われてきた機械と腕利きの職人の手によって、1本のえんぴつが形になっていく様はなんだか感動的でした!
工場長によると「フェリシモの色えんぴつは通常のえんぴつより太いので、1枚の板から取れる本数が少なく、調整するのに試行錯誤した」とのこと。太さだけでなく、四角いフォルムという従来あまりない形状をつくり出すため、さまざまな工夫があったようです。
職人さんたちの熟練の技術と、新しい挑戦が1本のえんぴつに込められているんですね! そしていままで何気なく使っていたえんぴつが、こんなにもいろんな工程を経て作られていると知り、驚きました。
色えんぴつ塗装は計8回!微妙な色差を美しく仕上げる匠の技
続いて訪れたメーカーは、外壁に描かれた可愛らしいえんぴつのイラストが目印。
ここでは色えんぴつの塗装と箔押し、えんぴつのしん出し行われていました。
ずらっとラインで運ばれる色えんぴつが圧巻!これは色えんぴつの顔となる、ボディーに塗装を施す工程です。500色もある色えんぴつの塗装は微妙な色差で、さらにしんのぬり色にぴったり合うことが求められます。
ここを潜り抜けると、外側が塗装されたえんぴつとなって出てきます。
どの色もまず白の下地を塗ってから、それぞれの色を塗装して乾燥、また塗装して乾燥を繰り返し、最後は透明なマット塗装を施すんだとか。なんと1本につき7〜8回もの塗装と乾燥が繰り返されるので、1色分を仕上げるのに2日かかるとのこと…!
塗料をつくるのも大変な作業!しんのぬり色に近づくように何度も塗料を調合し、試し塗りを繰り返しているそうです。最後にマット仕上げをすると色がすこし薄くなるので、完成の色を想定してすこし濃い色で塗料を作っているんだとか。これが500色分、さらに微妙な色差をつくり出すと思うと、気が遠くなりそう…!何度も塗り重ねてしんと同じ色をつくり出していくのは、まさに職人技です。500色の上質な色合いはこうして作られているんですね。
こちらは箔押しの工程。細長いえんぴつに均一な圧力をかけることが重要。小さな文字をかすれることなく箔押しするのも職人技です。紙1枚ほどの押圧もバランスもすべて職人の技量にかかっています。
ここでも、転がりにくい四角形だからこその苦労が。なかなか回転しないので機械の調整をしたり、通常の工程とは異なる方法を使うなど、工夫が必要だったそうです。
印刷されたてホヤホヤを触らせてもらいました!上質感のあるマットな塗装に奥ゆかしい控えめシルバーの文字がかっこいい!
四角いフォルムの端はさらにきれいなアールに面取りされています。はみ出した塗料を削る役割も持っているのだそうです。左が削る前、右が面取りをしたものです。ひとつひとつ、細部に渡るまで丁寧で美しい職人技に、脱帽です!
最後に先端を削り、ようやく色えんぴつらしい「顔」ができあがりました〜!板の状態から見学していたので、完成形を見てなんだか感動!えんぴつって、こんなふうに作られているんですね。
完成したえんぴつを収納する箱にも「四角軸専用」と書かれています!四角いフォルムの実現のために、職人さんたちが試行錯誤し、様々な工夫や努力があったことがこの工場見学を通して感じられました。
今回えんぴつ工場を見学して、1本のえんぴつが作られるまでには思っていた以上に様々な工程・時間・たくさんの人々が関わっているんだなと改めて感じました。そして何より、この色えんぴつは色やカタチ、細部に至るまで、本当に美しいんです。「500色の色えんぴつ」は、“最高の色えんぴつ”と言っても過言ではないはず!日本の技術、ものづくりってやっぱりすごいと再認識し、何だか誇らしい気持ちになりました。工場見学をして、ますますこのこだわりの色えんぴつを使ってみたい、と感じました。
お忙しいところ、見学させてくださった工場のみなさん、本当にありがとうございました!
フェリシモの日本のものづくりへの想い。
前回の記事でもご紹介しましたが、4世代目となる今回の500色の色えんぴつは、すべて日本製です。
これまでも、日本の職人技や伝統文化、和の暮らしに密着した商品を販売してきたフェリシモ。自社でオリジナル商品をつくり続けてきた長い歴史は、日本のものづくりに支えられてきたとも言えます。そんなフェリシモだからこそ、「ものづくりの灯を絶やさないためには、それを買う人、そしてつくり手と買い手をつなぐ役目が必要。日本のすばらしい製品をきちんと伝え、流通させたい。職人のプライドも伝えたい」という使命を持っていたのです。
「折りしも東京オリンピックの開催が決まり、日本の伝統やものづくりの技術が注目を集めるはずです。この絶好の機会を活かし、海外製品に押され、後継者不足もあって工場の数を減らしている日本のえんぴつ産業を盛り立てていきたい。そう思ったのです。」(フェリシモ開発担当者)
日常ではなかなか意識しない日本のものづくりの素晴らしさ。知ること、使ってみることで日本製の良さを再認識しました!そして日本のものづくりを盛り上げたいというフェリシモの想いもすばらしいことだと感じました。
「500色の色えんぴつ」の1本1本に日本の技術と想いがぎゅっとつまっています。ぜひ、手にとって感じてくださいね。
500色の色えんぴつ
価格:1セット(20色)2,808円(税込)
WEBサイト:http://www.felissimo.co.jp/s/500gifts/102/