世界に広がるZINEのこと vol.6|開いて驚き!仕掛けのあるZINE『DAILY EXPRESS』『FINGER』

本は作り手が自由にしてもいいんだ!と感じるきっかけとなったZINE。

こんにちは、橋本香です。約8年前、フランスマルセイユのアートブックフェアの本を、知人の方に見せてもらったことがありました。それらはアートブックでしたが、手作りされて1冊ずつしか存在しない、まさにZINEといえるかもしれない本ばかりでした。それらの本は、私がそれまで思っていた「本」の形をしていないものばかりで、衝撃を受けたのを覚えています。とても長細い本や箱にはいったもの、製本形式も様々で、本当に自由に作られていて、本というものの解釈は作り手が自由にしてもいいのだと感じました。今回は、そんな作り手の自由な感性が広がる2冊をご紹介します。

韓国で見つけた、1900年創刊のイギリスの新聞の題字が使われたZINE。

表紙とカバーには「DAILY EXPRESS」の文字。カバーを外すと、魚の記事が。1900年創刊の歴史あるイギリスのタブロイド紙の題字デザインがカッコいいこのZINE、新聞をテーマにしたZINEかと思って開けてみると、本文に驚くような仕掛けがあったんです。
韓国で見つけた、1900年創刊のイギリスの新聞の題字が使われたZINE。

『DAILY EXPRESS』

まず開いたページには、1羽の鳥が飛んでいるイラスト。一体これからどんなストーリーになるのか、ドキドキしながらページをめくってみると…
『DAILY EXPRESS』

なんと、ページに糸が付いていて、魚がぶら下がったページがでてきました。まったく予想していなかった立体的なこのページにびっくりしました!そして、この魚の糸は固定されてなく、青い背景の上をゆらゆら と左右に、そしてクルクルと自由に動き、まるで魚が本当に泳いでいるように見えるんです。
なんと、ページに糸が付いていて、魚がぶら下がったページがでてきました。

そして、次に出てきた糸にぶら下がった魚のページ、まるで下に落ちているかのように魚が下向きにゆらゆらと動いています。
そして、次に出てきた糸にぶら下がった魚のページ、まるで下に落ちているかのように魚が下向きにゆらゆらと動いています。

『DAILY EXPRESS』

すると、突然魚がいなくなり真っ黒なページに。もしかすると魚が何かになったのかな?と思いながら次をめくってみると、
すると、突然魚がいなくなり真っ黒なページに。もしかすると魚が何かになったのかな?と思いながら次をめくってみると、

なんと、魚が透明の枠に入っていました。まるで、池か鉢かに入っているのような仕掛けです。この透明の枠の中でも魚はゆらゆらと自由に泳ぎます。
なんと、魚が透明の枠に入っていました。まるで、池か鉢かに入っているのような仕掛けです。この透明の枠の中でも魚はゆらゆらと自由に泳ぎます。

そして最後には、鳥の姿が。食べられちゃったのかなぁ・・・・
そして最後には、鳥の姿が。食べられちゃったのかなぁ・・・・
このZINEは文字がとても少なく、ストーリーがはっきりと書かれている訳ではないのですが、この仕掛けとイラストだけでもいろんなことを想像することができます。

1匹の魚が鳥にくわえられて、どこかへ運ばれてしまいました。魚が途方に暮れている途中、鳥のくちばしからスルリと抜け落ち、運のいいことに近くの池に落ちたのです。でも魚は何が起きたのかわからないくらいびっくりした表情で泳いでいました…こんな風に自由にストーリーを作ってみても楽しいかもしれません。

そして、全ページ、新聞の文字を生かしたデザインになっています。もちろん鳥の体にも文字が入っています。
そして、全ページ、新聞の文字を生かしたデザインになっています。もちろん鳥の体にも文字が入っています。

最後には広告ページも。徹底して新聞というデザインが細かいところまで凝った作りになっています。
最後には広告ページも。徹底して新聞というデザインが細かいところまで凝った作りになっています。真っ白な紙ではなく、新聞をベースに使う事で紙の素材感が出て、シンプルなページデザインが続くZINEでも、見ていて 飽きないページになっているのかもしれませんね。

このZINEは、ページの装飾の仕掛けだけじゃなく製本方法も凝っていました。

このZINEは、ページの装飾の仕掛けだけじゃなく製本方法も凝っていました。

このZINEの製本方法は真ん中を綴じているのではなく、新聞のように重なって折っているのでもなく、全ページが輪のようにつながっていて、こんな風に広げていくと、一つの輪っかになります。これはきっと糸が付いたページが沢山あるので、その仕掛けのためにもこういう製本になっているんだなぁ~と感心しました。

このZINEの製本方法は真ん中を綴じているのではなく、新聞のように重なって折っているのでもなく、全ページが輪のようにつながっていて、こんな風に広げていくと、一つの輪っかになります。

もう1冊はドイツで見つけた、びっくりする製本方法のZINE!

正方形の付箋くらいの大きさで、とても薄いZINEなのですが、その製本法が個性的すぎて、思わず買ってしまいました。本当に簡単なZINEで、広げるだけ。全部開いてみると、アルファベットと指のイラストが載っています。おそらくこれは手話のZINEではないかと思いますが、それにしてもこの製本方法は面白いです。こんなZINEだったら、持ち歩くことも簡単だし、手話を覚えるのも楽しみながらできそうです。
もう1冊はドイツで見つけた、びっくりする製本方法のZINE!

『FINGERS』

『FINGERS』
今回ご紹介したZINEは韓国とドイツで見つけたZINEです。これ以外に今まで出会った中で個性的だったのは、チューイングガムの包み紙がページになったZINEや、箱に1枚ずつ入ったカードのようなZINEなど、まだまだ製本の個性的なZINEがあります。世界には100か国を超える国があると思うと、今すぐにもいろんな国に行って、もっと個性的なZINEに出会ってみたいなぁと思ってしまいます。次回もどんなZINEが登場するのかお楽しみに!

つづく

    『DAILY EXPRESS friday January』

    made by Young-Ju Choi
    2007年7月発行
    発行部数 不明
    A6版 16頁

    『FINGERS』

    made by Jeanette Holler ・Bad Sackingen
    2005年5発行
    発行部数 不明