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世界の布と雑貨のお店&JOURNEYのつくりかた vol.23|グアテマラの染めと織り~変わりゆく民族衣装~
時を経て移り変わる手仕事や民族衣装のかたち
こんにちは!世界の布と雑貨のお店「&JOURNEY」店主の未希です。
今年2回目の買い付け旅からサンフランシスコへ帰国しました。
グアテマラからメキシコへと北上しながら、各地の織物や刺繍・陶器の工房などを訪ね、手仕事を巡るいい旅となりました。今回はグアテマラのサン・アンドレス・セクル(San Andrés Xecul) の染色工房と織物工房、そして各地の市を訪ねて感じた、時を経て移り変わる手仕事や民族衣装のかたちについてお話します。
染色工房を訪ねて
サン・アンドレス・セクルはグアテマラ第二の大都市ケツァルテナンゴ(Quetzaltenango)から、バスとトゥクトゥクを乗り継ぎ50分程のところにある小さな街。可愛らしい装飾の黄色いユニークな教会が有名です!
この街は染色工房が何軒もあるそうで、街を見晴らせる丘の上にいくと、染色済みの糸の束が干されている様子があっちにもこっちにも…。のどかな街並みに、きれいな色の糸が映える美しい光景。
朝8時過ぎに、そんな工房のひとつを現地ガイドさんと共にお伺いしました。染めた糸を干して乾かすために、染めの作業は早朝から始めています。
私たちが到着した時間には、すでに作業は終盤にさしかかっており…染め上げた糸の束を絞っているところでした。束を棒に巻きつけて2~3回体重をかけて絞るのですが、この絞り方がなんとも力強くかっこよい!
糸の束を煮る釜。年季が入っています。
工房内を見せてもらいながら、気になっていた染料や糸について質問してみました。染料はこちらの工房を始めた25年前から全てドイツや他国からの輸入染料で、糸はアジア圏から多く輸入されているそうです。グアテマラ国産の糸や染料というものはあまりないらしく、購入するとなると、とても高価になるそう…。また自然染色をやっているところも、この辺りにはないようです。ここで染められた糸は織物で有名な街、サルカハ(Salcajá)などに卸されるとのこと。
絞ったあとは干し作業。晴天の街並みが見渡せる干場に色鮮やかな糸がかけられていく様子はなんとも美しかったです!
サルカハの市は民族衣装の流行最先端、グアテマラの原宿!?
ちょうど染色工房を訪れる前日に行っていた織物の街、サルカハの市。これまでグアテマラの大小いくつかの市を訪れてきましたが、これまで見てきた市との違いに私はとても驚きました。サルカハの市はほぼ全てが新品…!グアテマラ最大の市チチカステナンゴをはじめ、各地の市は古着が多く見られましたが、路上の市でここまでピカピカの新品ばかりが並んでいる市は初めて。そればかりか、民族衣装の上衣(ウィピル)となるブラウスは光沢のある化繊サテンにキラキラビーズのついているものばかり!もはやウィピルとは言わないのかも…。巻きスカートのコルテ生地もカラフルでラメ入りの糸を使ったものや、プリント柄のものがずらり。
「ここの地域の伝統の民族衣装はありませんか!?」と露店の売り子さんたちに聞きまくると、近くの織物問屋さんに聞けと案内されました。問屋のオーナーのお話によると、この地域は特に伝統的な民族衣装は持っておらず、新しいデザインの織物が盛んとのこと。一番トラディショナルなものはインディゴの絣(かすり)模様のこちらのものだそう。他のものよりかなりシンプル。
他のコルテ生地は全て化学染料だけど、トラディショナルなこのデザインだけはドイツの自然染料で染めているとのこと。染料の違いは匂いでわかるよとのことで、クンクン…確かに他のものと違う!後ほど調べたところによると、40年前くらいまでは本藍染もおこなわれていたようですが、今はこのドイツのインディゴ染料が一般的に広く用いられているそうです。糸は日本からも…日本の糸は定評あるようです。
サルカハには織物工房はもちろん、絣糸の染め工房なども見学できるところがあるそうですが、市の日は皆売りに出ているので残念ながら見学できず…絣の染色工房はいづれ必ず訪れたい!
それにしても手織りや刺繍のトラディショナルな衣装を求める私にとっては、かなり残念なキラキラ最先端の流行中ブラウスやコルテ…。お店の売り子さんも「今はビーズ付きが流行っていてよく売れるのよ」と。言われてみれば、確かにケツァルテナンゴ近郊の若い女性たちの衣装にはキラキラビーズが必ずと言ってよいほどついている…!これも時代の移り変わり…新しいものを求める女性の気持ちも世界共通…と、グアテマラの原宿のようなサルカハのキラキラ市で実感するのでした…。
そして民族衣装について気づいた驚きの点がもう一つ。グアテマラの民族衣装は80近くの村々それぞれに、独自の民族衣装があり、衣装はその村の村人であるというアイデンティティでもあるのですが、ケツァルテナンゴ、トトニカパン県の人々については、みんな衣装がバラバラ…!
もはや自分の村の衣装以外も気に入ったものを購入して着用しているのです。選択肢は多様化しているようで、どこの地方の衣装なのか、という特定は今後ますます難しくなっていきそうですし、そもそもその村独自の伝統衣装を着用する人が、ほとんど姿を消している街もありました…なんだか寂しいですね。
続けられる高度な技術も…絣の生地を織る、織物工房へ
サルカハでも大量に売られていた絣生地。グアテマラの民族衣装の巻きスカートであるコルテにはこの絣模様が入ったものが多く見受けられます。グアテマラの絣生地は糸染めも織りも全て手作業の高度な技術によるもの。今回は絣糸の染めの過程は見られませんでしたが絣生地を織る工房へお邪魔しました。
部屋いっぱいにおさめられた2台の大きな足踏み機織り機では、コルテ用の生地が織られていました。機全体を動かす踏木を足で踏み、柄が揃っているのを確認しつつ、筬(おさ)を手前にトントンと打ち込み織り上げていきます。一度にコルテ20枚分を織るそうで、織り機には大量の糸がぐるぐると巻きつけられています。織り始める前段階の下準備がとても大切で、この機織り機に糸をかけていく作業は1日がかりとか!
これは男の人のかたち、こっちはカゴ…と出来上がってくる伝統的な柄を説明してくださいました。こうした絣の柄布を織るためには柄デザインに基いて糸を先染めしています。そのデザインも織り手さんが考え、計算し図案を書いて糸の染め屋さんに発注するそうです。
絣糸は糸の柄になる部分を別の糸でくくり防染し、指定した位置に柄ができるように染められてきます。その糸がまた柄を合わせてぴったりと機織り機に巻きつけられているのですが、織りながらもずれないように、からまないように何度も調整していました。その手間と技術の高さは本当に素晴らい…!
変わりゆく民族衣装
時の流れとともに民族衣装の流行も様相も変化し、本当に手間をかけられた手仕事に変わって大量生産のプリント生地や化学繊維が増えている現状…。とはいえ糸の色の多様化と派手好きなグアテマラの女性達の要望に応えて新しいデザインも生み出され続けている様子。
しかし、もちろんグアテマラはまだまだ手仕事の宝庫!
作り手さんが減っていく中でも新たな商品開発などの試みをしつつ伝統のデザインや技術の継承を続けようとされている方々もいます!そんな作り手さんとの出会いはまた、別の機会にご紹介していきますね。まだまだ手仕事を巡る旅は始めたばかり、今後もその移り変わりを追っていこうと思います。
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&JOURNEY NEWS
グアテマラ・メキシコの刺繍と織物
~手仕事の服と雑貨展~
2017年9月9日(土)~11日(月)
&JOURNEYが西荻窪に帰ってきます!
今回は特に新たな買い付け旅で出逢ったグアテマラとメキシコの刺繍と織物の衣服を中心に、西アフリカ・東南アジア・東欧…と世界の布と雑貨を集めた&JOURNEYの展示販売会を東京都西荻窪のGallery Stellaにて3日間限定でおこないます。グアテマラの手織りと刺繍のウィピルや絣生地のコルテ(手織り巻きスカート)、メキシコのサン・アントニーノの工房でオーダーした刺繍ワンピースなど…どれも素晴らしい手仕事ばかり。
普段はオンラインショップのみのでの販売ですので、短い会期ですが、ぜひこの機会に足をお運びいただけましたら幸いです。Facebookにてイベントページを作成しました。こちらにまたお持ちする商品のことなどをアップしていきますので参加ボタンをクリックしてのぞいてみてください。昨年末、西荻窪の実店舗を閉店してから9ヶ月ぶりの皆様との再会…そして新たな出会いも楽しみにしております。
【日時】
9月9日 (土) Open 11:00 – Close 18:00
9月10日(日) Open 12:00 – Close 18:00
9月11日(月) Open 12:00 – Close 17:00
【場所】
Gallery Stella
東京都杉並区西荻北3-13-11-1F ※西荻窪駅北口から徒歩5分
&JOURNEY
「日々の暮らしに旅を」
世界の布と雑貨のお店 “&JOURNEY” は世界各国の手仕事を巡る「旅」のエッセンスを集め、日常に取り入れられるようご紹介させていただくセレクトショップです。
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