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世界に広がるZINEのこと vol.9|絵が見えない謎のZINE『La collection de voitures』
見えそうで見えない、どうしてもページがめくりたくなるZINE
こんにちは、橋本香です。9月にはニューヨークのMOMAで、10月には東京、台湾で、アートブックフェアが開催されています。アートブックフェアには色々なZINEが販売される場所でもあり、いつか世界のアートブックフェアを回ってみたいなと思っています。
以前1冊しか存在しない原画から作られたZINE『DRAW』を紹介しましたが、今回紹介するZINEは、それより少しだけ多い4冊だけ印刷されたZINEです。私が持っているのは4冊のうちの、2番目のナンバーが入ったZINE。残り3冊はどこの誰が持っているのか、気になってしかたありません。
このZINEは、フランス出身のDavid Adrienさんによる、白と黒だけですべて印刷されている、シンプルなZINEです。最初のページを開けると布、次のページもまた布。そして、その次も布、布しか描かれていません。最初のページを開けると布、次のページもまた布。そして、その次も布、布しか描かれていません。
2枚づつになっているページ、この布の下に何か描かれているのか、気になって紙をめくるってみると、そこには、車の絵が。そして、続きが気になって、また紙をめくってみると、車。どこまでいっても車、車、車、車しか描かれていません。ただ、それにしても個性的な車の絵ばかりです。
2枚で1つの絵として楽しめるこのZINE、少し変わった紙が使用されています。1枚目は少し透けている薄紙で、グラシン紙という紙が使われています。どのような紙かというと、小さいころに膨らませて遊んだ紙風船の紙と同じ紙なんです。この薄く透けたグラシン紙にシルクスクリーン印刷(恐らくすべて手作業)で、絵柄が印刷されています。薄い紙に印刷することで、紙に無数の皺が発生しています。
実はこのZINEのタイトル「La collection de voitures」は、フランス語で車のコレクションという意味。表紙をめくった最初のページは、文字を隠すように、このZINEで一番大きな布が白と黒で印刷されています。もしかして、このグラシン紙を使った理由は、透けるのとと共に、シルクスクリーンで皺をだして、わざと布の雰囲気をだすためなのかな?と勝手に想像してしまいます。
左上、下の車の絵が見えそうで見えないから、より一層見たくなります。
各ページのチラッと布の切れ目から見える車のイラスト。どうしても紙をめくりたくなります。そして、1枚ずつめくっている流れは、まるで車のコレクション会場。ひとつひとつの車に布がかけられていて、自分がコレクション会場を歩きながら、新しい車を見て行く、そんな感じがします。このZINEは本当に面白いコンセプトです。実際にはハンドメイドで印刷し、4冊だけしか作っていないということは、きっと作るのが大変なZINEなのでしょうね。もしこのZINEの作家さんに会う機会があれば、なぜこのコレクションを作りたかったのか、ぜひ聞いてみたいです。
このZINEは海外ではなく、京都にある「TRANSPOP GALLERY」さんで出会いました。ここには、数少ない部数のZINEだけでなく、海外の様々なデザインのZINEが並んでいます。ZINEが好きな人はぜひ覗いてみてください。あなたもこんな風に数冊しかつくっていないZINEやアートブックに出会ってしまうかもしれません。
つづく
『La collection de voitures』
David Adrien
発行部数 4部
A6変形 32頁
◆関連リンク
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