世界の布と雑貨のお店&JOURNEYのつくりかた vol.26|小さな羊毛織り工房で織られる家族の暮らし

仕事と暮らしがつながっている場所で育つ子供たち

こんにちは!世界の布と雑貨のお店「&JOURNEY」店主の未希です。
買い付け旅の中で手仕事の工房を訪ねていると、家族経営の小さな工房も多く、子供が工房内を駆け回っていたりします。

買い付け旅の中で手仕事の工房を訪ねていると、家族経営の小さな工房も多く、子供が工房内を駆け回っていたりします。
以前の記事「vol.02 羊毛タペテの村へ」でご紹介した工房に今年再び訪れたときには、最近末っ子の女の子が自分も織りたいと言い始めたと、お母さんが嬉しそうに練習中の糸がかかった織り機を見せてくれました。仕事場と暮らしの場がつながっている場所で育つ子供は、両親の仕事ぶりや実際にお金という対価をやり取りしている様子を見て、働くことと生きることの繋がりが自然と身につくように育つのだろうなぁと思います。彼らの両親、つまり現在の作り手さんたちもまた子供の頃からそんなふうにして仕事を覚えていったのでしょうね。

今回ご紹介するグアテマラ、MOMOSTENANGO(モモステナンゴ)の羊毛ラグ工房も、そんな家族の暮らしと仕事場がつながったあたたかい場所でした。

素朴であたたかい、Luisさんの工房のラグ

モモステナンゴはグアテマラ第二の大都市ケツァルテナンゴ(Quezaltenango)からバスで山道を越えて1時間半程の田舎街。羊毛ラグの生産地と聞きつけ、ぜひその工房を訪れたいと思ってやってきました。観光客も少なくインディヘナの人々の日常が見える平穏な街です。ちなみに観光としては日曜市と、Los Riscosという砂岩でできた突起状の不思議な地形も見どころです。地元の若者にとってはデートスポットになっているそうで、仲睦まじいカップルも散策していました。規模は大きくありませんが、フォトジェニックな面白い空間です!
観光としては日曜市と、Los Riscosという砂岩でできた突起状の不思議な地形も見どころです。

日曜市ではやはり、あたたかそうな羊毛のラグや毛布、ポンチョを売る人々が。両親にかわって店番をする子供たちの姿もちらほら…ラグの上ですやすやと眠る子供も…。毎週末の光景なのだろうと思われるおだやかな日曜の朝に和みます。
日曜市ではやはり、あたたかそうな羊毛のラグや毛布、ポンチョを売る人々が。

そんな賑わいを見せるマーケットから離れ、とうもろこし畑の丘の道を登った先に目的のLuisさんの工房はありました。到着すると玄関先から小さな子どもたちが次々と現れ出迎えてくれました。Luisさんのお子さんはなんと7人の大家族!
到着すると玄関先から小さな子どもたちが次々と現れ出迎えてくれました。

工房ではまず外にある織り機を見せてもらいました。大きな機織り機に製作中の大きなラグ。機織りの様子は何度見ても地道だなぁ…と感心させられます。
工房ではまず外にある織り機を見せてもらいました。大きな機織り機に製作中の大きなラグ。機織りの様子は何度見ても地道だなぁ…と感心させられます。

そして工房内へ。土壁にかかるたくさんの糸や年季の入った機織り機にわくわく。
そして工房内へ。土壁にかかるたくさんの糸や年季の入った機織り機にわくわく。

気になったのがこちらの乾燥した植物の束。何に使うのでしょう?
気になったのがこちらの乾燥した植物の束。何に使うのでしょう?

尋ねてみると”Cardo Santo”という植物の種の実を乾燥させたもので、毛織物の毛並みをブラッシングして柔らかくするために使うのだと教えてくれました。和名は「フラーズ チーゼル」といい、日本でもニット起毛用に使われていました。これを使って毛織物を櫛のように撫でると面白いくらいに本当にフワフワの毛布になりました!
尋ねてみると''Cardo Santo''という植物の種の実を乾燥させたもので、毛織物の毛並みをブラッシングして柔らかくするために使うのだと教えてくれました。

次は糸巻き機、どうやって使うのかしらと眺めていたら10歳くらいの女の子がくるくると器用に糸を巻いて糸玉をつくってくれました。いつもお手伝いしているのでしょう。すっかり手慣れた様子でした。
次は糸巻き機、どうやって使うのかしらと眺めていたら10歳くらいの女の子がくるくると器用に糸を巻いて糸玉をつくってくれました。

素朴であたたいLuisさんの工房のラグや毛布。完成している商品は、一番年上のお兄ちゃんが率先して広げて見せてくれます。自分の名前のアルファベットや希望の柄をオーダーすることもできるそうですよ!
素朴であたたいLuisさんの工房のラグや毛布。完成している商品は、一番年上のお兄ちゃんが率先して広げて見せてくれます。

知られていない、届けるルートがない…は、もったいない

知られていない、届けるルートがない…は、もったいない
買い付け旅にも色々な方法があって、大きな都市でセレクトされたショップに行って洗練されたものを見つけてきたり、大きなマーケットに行ってひたすら買い漁る…という方が手っ取り早かったりします。特に予測不能の事態で足止めをくらうことも多いグアテマラ国内での移動をともなう買い付け旅は、とても非効率なことなのかもしれません。しかも現在、郵便も機能していないのでグアテマラ国内からの配送もできません。今回も重たい布やウィピルを背負って移動するなかなか必死な旅でした…。

けれどこうしてあまり観光客が足を伸ばさない土地や工房まで訪ねて行って、暮らしぶりや仕事の様子、作り手さんの想いを見て出会ったものには、モノへの愛も深まると同時に現実的なお金の循環についても考えさせられます。

モノのストーリーが重視される昨今ではありつつも、お客様にとってはそんなことよりも商品のクオリティや価格の方が大切かもしれません。けれど売る側の商品への愛情は、巡り巡ってお客様に伝わるような気がします。

そしてどんなに素敵なものが頑張ってつくられていても、知られていない、届けるルートがない…というのはとても勿体ないことだと思うのです。合理性やスピード感には欠けますが、&JOURNEYではこれからも、旅して出会って、ご紹介していきたいと思っています。