愛蔵版 イヌイットの壁かけ

イヌイットの伝統と誇りが一針一針に込められた、素朴で力強い「壁かけ」コレクション。

こんにちは、シオリです。
多くのクリエイターたちを魅了する一冊『愛蔵版 イヌイットの壁かけ』をご紹介したいと思います。

カナダの北方やアラスカなどの極北の地で暮らす先住民族、イヌイット。日本から遠く離れたその地では、一年の三分の二ほどが、ほとんど太陽が昇ることのない冬です。そんな厳しい自然の中で暮らすイヌイットの女の人たちが作り出す、なんとも素敵な「壁かけ」があります。

狩りに出かけた男性たちを待ちながら、女性たちは動物の毛皮をなめし家族のパーカや靴などの防寒具を一針一針縫ってきました。しかし近代に入り南方から持ち込まれた病気やカナダ政府の定住化政策によって大きく様変わりします。パーカの生地も毛皮からダッフル生地になり、その切れ端から「壁かけ」が作られるようになったのだそうです。

本書で紹介されているたくさんの「壁かけ」は、イヌイットの人々が民族の誇りや、厳しい自然環境のなかで培われた生活文化を後世に伝えていくために作りはじめた新しい伝統であり、素朴ながらいきいきとした絵柄は、ページをめくるたびに心掴まれます。今日は、その中の一部を少しだけご紹介したいと思います!

愛蔵版 イヌイットの壁かけ
最初に登場するのは、イヌイットの壁かけの最初期のものとれる作品です。1950年代の北極地方では、南方から持ち込まれた結核が蔓延しており、結核療養のためにトロント郊外のサナトリウムに移ったイヌイットの女性が作ったもの。懐かしい極北の生活を描いたこの作品は、イヌイットの壁かけの原点ともいえるものだそう。

愛蔵版 イヌイットの壁かけ
次は、どこか南国を感じてしまうようなカラフルな配色のこちらの作品。北の生活ならではの犬ぞりやイグルー(氷の家)が、いきいきと描かれています。

愛蔵版 イヌイットの壁かけ
こちらの2枚の刺し子も、布の色ごとに糸の色が違い、その組み合わせがとっても素敵です。

愛蔵版 イヌイットの壁かけ
あざらしを解体するという私たちにとっては驚きの光景も、こんな可愛らしい壁かけに!目の前の光景を記録したいとき、スマホで簡単に写真を撮ることの出来る今の時代ですが、こうして手作業で作られた素朴な絵の方が、パワーを持って伝わってくるような気がするのは不思議です。

愛蔵版 イヌイットの壁かけ
クリスマスを描いた作品は、私たちも知っているクリスマスカラーなんですね。白黒の世界に暮らすイヌイットは、生命力を感じる赤が大好きなのだそう。

愛蔵版 イヌイットの壁かけ
最後は、壁かけではなく人形が登場。向かって左側の女性の人形が着ているアマウティとは、イヌイットの女の人の衣服で、後ろ身頃が長くなっていて、凍土に座って作業するときにお尻の当て布の働きをするんだとか。独特の衣装に身を包んだ人形たちは、どれも愛らしいものばかりです。

自然の中に生きていることが伝わってくるイヌイットの壁かけを見ていると、言葉で表現するのが難しいのですが、なんだか心が笑顔になるような感覚になりました。

今日ご紹介したのは、たくさん掲載されているなかのほんの一部です。こちらの特設サイトにもあるように、数々のクリエイターの心を掴んでやまないイヌイットの壁かけの魅力。みなさんも、本書を手に取って、ぜひ感じてみてください。

    愛蔵版 イヌイットの壁かけ: 氷原のくらしと布絵


    著者名: 岩崎昌子
    発売日: 2017-06-08
    ISBN: 978-4-416-61768-7
    書名(かな): アイゾウバン イヌイットノカベカケ
    判型: [ 縦 : 247mm ] [ 横 : 185mm ]
    副書名: 氷原のくらしと布絵
    ページ数: 184
    定価: 本体2,800 円+税