旅するパティシエ

プロのパティシエが創作する世界中の郷土菓子を、日本で楽しもう!

こんにちは、箱庭編集部 moです。
今回ご紹介するのは、旅好き、おやつ好きの箱庭読者にぴったりなカフェ「世界のおやつ」です。その名の通り、プロのパティシエが創作した、世界のさまざまな郷土菓子を楽しめるカフェとなっています。

カフェを主宰する「旅するパティシエ」の鈴木文さんは、世界50カ国以上を現地の郷土菓子を作りながら巡った経験の持ち主。今回はカフェだけではなく、鈴木さんの旅のお話も交えてご紹介していきます。

「旅するパティシエ」って?

鈴木文さん
こちらが、旅するパティシエの鈴木文さん。
もともとはパティスリーやレストランでシェフパティシエを務めていたという鈴木さん。パティシエとして、一からデザートを考案、そして提案を重ねていくうちに、単なるレシピだけではなく、使われるさまざまな材料、そこから誕生するお菓子やデザートが元来もっているはずの、“ストーリー”に興味を持つようになったのだとか。
「ただ作るだけではなく、その裏側にある物語も伝えられるようなパティシエになりたい。」と考えた鈴木さんは、その後世界に目を向けます。そして、それぞれの国や地域が持つ文化や風土に直接触れながら、世界中の郷土菓子を学ぶことが必要だと考え、2016年〜約1年間かけて世界一周の旅へと出発。ただ見たり食べたりするだけでなく、現地の人と一緒に、現地のお菓子を作りながら「世界の郷土菓子を巡る旅」をしてきたのだそうです。これまで現地で学んできた郷土菓子は、世界50カ国以上500種以上にものぼるんだとか。

世界一周を終え、カフェ「世界のおやつ」をオープン!

約1年に渡る世界の旅を終えた鈴木さんが、旅で得たことをアウトプットする場所としてオープンさせたのが、創作した世界の郷土菓子を楽しめるカフェ「世界のおやつ」でした。(現在、カフェ営業は行なっておりません。)
シーナと一平
場所は、豊島区の椎名町駅から徒歩5分ほどにある、ゲストハウス「シーナと一平」。元々はとんかつ屋さんだった建物を、店構えはそのままに、リノベーションして生まれた旅館で、椎名町のローカルな商店街の中にポツンと立っています。

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なかなか馴染みのない街かもしれませんが、ゲストハウスということで、ここに世界各地から旅行者がやって来るという、なんともユニークな空間が「世界のおやつ」にはぴったりの場ということで、一階の喫茶スペースを間借りしてオープンしたカフェでした。

まだ出会ったことのない、世界の郷土菓子に出会える

「世界のおやつ」では、鈴木さんが旅の中で学んできた世界の郷土菓子を、長い時間をかけて試行錯誤しながら、日本の風土や気候にも合うように創作し、メニューにしているそう。

「私が旅の中で強く感じたのは、現地のお菓子は現地で味わうのが一番だということ。世界の郷土菓子をそのままコピーしても、風土や気候が違う日本では、正確に再現することはできません。仮にできたとしても、やはり同じ理由で、その多くは日本人の口には合わないものが多いのも事実。だからこそ、安易に再現して商品にするのって、その国や地域に対して敬意を欠いている気がして。それならば、現地の特徴を生かしながらも、日本の風土・気候に合うよう“美味しい、世界のおやつ”に創作するべきだと考えたんです。ただそうする以上は、食べて頂く方に、どこが現地のオリジナルと違うのか、どのように創作しているかを、きちんと説明するようにしています。そしてそのお話しの中で、私が旅の中で学んできた、それぞれの郷土菓子の物語もお伝えしています。」と、鈴木さんは語ります。

ウィークエンド・シトロン
こちらは、幅広い層のお客様に人気の「ウィークエンド・シトロン」。フランス生まれのお菓子で、レモンの爽やかな香りと酸味がギュッと閉じ込められた焼き菓子です。日本人の口に合うよう、しっとりした食感を追求して、創作したものだそう。

ハルヴァ
せっかく世界のおやつを食べるなら、あまり聞いたことがないお菓子に挑戦してみるのもおすすめ!こちらは中東生まれの「ハルヴァ」というお菓子。

ハルヴァ
ほろりと崩れる食感と、口の中に広がるスパイスとナッツの香りが、なんとも言えない美味しさでした…!一口サイズのお菓子で、リピーターさんも続出だそうですよ!

かぼちゃけーき
こちらはカンボジアの「かぼちゃけーき」。カンボジアでは、くり抜いたカボチャの中にココナッツミルクを使ったプリン液を入れ、蒸し上げる郷土菓子があるそうです。鈴木さんはそれを、日本人にも馴染みのあるクリームチーズとカボチャを使い、食べやすい形に焼き上げた濃厚プリンに創作。甘さは控えめで、ふんわり香るカボチャの風味がとても美味しかったです!

現地で取材交渉!現地の人と一緒に郷土菓子を作る旅。

まだ出会ったことのない郷土菓子に出会える楽しさだけじゃなくて、どれもこれも本当においしくて色々な国の郷土菓子を試したくなります。でも、50カ国以上も巡って、現地で郷土菓子を教えてもらうって、とっても大変そうじゃないですか…?鈴木さんに、旅での出来事についても聞いてみました。
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世界の郷土菓子を作りながら巡る旅。どんなふうにやっていたのか気になりますよね!
鈴木さんは、その国の気になる郷土菓子をまず見つけたら、ひたすらパティスリーやカフェを訪ね、その場で直接、取材交渉!「一緒にお菓子を作らせてください」と何軒ものお店に突撃したそう。1つの街で10ヶ所以上の店舗を訪ねて、すべて断られることも珍しくなかったという、聞いただけで気が遠くなりそうな方法で50カ国以上も旅をしていたそうです。

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そんな旅の中で鈴木さんが一番印象的だったのがキューバの旅。まだまだ民間の飲食店が非常に少ない社会主義国のキューバで、ようやく出会うことのできたパティスリー。そこで“セニョリータ”というキューバ版ミルフィーユを現地の方と一緒に作ったそうです。決して恵まれた環境とはいえない中でも、厨房の中の熱量やお菓子に対する思いは日本で働くパティシエと変わらず、とても印象に残ったそう。

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また、ゲストハウスのお母さんから“家庭の味”であるポテトプディングを習った、ジャマイカの旅も印象的だったそう。「手軽に作れるよ!」と言われて一緒に作ったプディングは、蓋を開けてみると、庭で薪をくべて火起しするところから始まり、なんと完成までに6時間以上もかかったそうです…!
“手軽なお菓子”という感覚が、日本の感覚と全く異なっていて、そういったお菓子文化の違いがおもしろかったそうです!世界のお菓子事情を全く知らない私は、鈴木さんのお話を聞いているだけでワクワクたのしい気分になりました〜!

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こちらは、旅の中で出会った500種以上のお菓子の中でも、鈴木さんのお気に入り一品。南米の「アルファフォーレス」という郷土菓子です。アラビア語で「包む」という意味を持つアルファフォーレスは、遡ればそもそもは中東発祥のお菓子で、長い年月をかけてスペイン、そして海を越えて南米にまで伝わったという、壮大な歴史物語が詰まった郷土菓子なのだとか。

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どんなものかというと、丸いクッキーの間に「ドゥルセ・デ・レチェ」というコンデンスミルクからできたキャラメルクリームが挟まっている郷土菓子。そのシンプルな美味しさに、気がつけば鈴木さんは、南米の旅の中ですっかり虜になっていたそうです。そんなお話を聞いていると、いつかこのお菓子をどこかで食べてみたいなぁ〜という思いが湧いてきました!

おいしいお菓子をいただくだけでももちろん楽しいですが、鈴木さんのお菓子に込めたストーリーを聞いて、さらに特別なひとときになるカフェでした。東京にはいろいろなカフェやお菓子屋さんがありますが、世界のストーリーを感じながら、世界中の珍しいお菓子を楽しめる、他にはないカフェとなっています。

また、鈴木さんのWEBサイトには今日ご紹介できなかった旅の様子がたくさん綴られていて、とっても面白い旅行記になっていますよ。気になった方はぜひ覗いてくださいね。

    世界のおやつ ※現在、カフェは閉店しております。

    場所:<シーナと一平>東京都豊島区長崎 2-12-4