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壮大な自然と奥深い異国文化!映画『馬を放つ』で知るキルギス
観たらキルギスへ行きたくなる!?キルギスの魅力
こんにちは。あいぽんです。
先日、素敵な映画を教えてもらいました。キルギスを舞台にした『馬を放つ』という映画です。そこに映し出されている自然が嘘みたいに美しくて、すっかり心奪われてしまいました。
でも、実は私、この映画を観るまでキルギスを知らなかったんです…。映画を観て、キルギスが気になってしまい仕方がなくなり、キルギス通の方にお話を伺うことにしました!
青年海外協力隊(JICA)としてキルギスに滞在していたことのある東(あずま)さんです。2015〜2017年の2年間キルギスの村の女性たちにハーブ石鹸を作る方法を教え、収入を向上させるお手伝いをしていたのだそう。
「私もJICAでキルギスへ赴くまで、ほとんど知りませんでした。調べてみても、湖と山の国なんだなってくらいで(笑)。
実際行ってみると、首都は日本とほとんど変わらない暮らしができるくらいに栄えていましたが、それ以外のほとんどの場所は映画『馬を放つ』に出てきたような自然に囲まれた村です。水道や電気もまだまだ不安定で、昔ながらの生活をしているところが多いですね。男性は酪農を仕事にしている人が多く、女性は家で家事をしながら子育てをしている人がほとんどです」。
映画の舞台となったのは、イシク・クル湖の近くのトゥラスという村。映画の中には、見渡すかぎりの草原、その向こうに広がる山脈…が何度も映し出されます。キルギスでは、こんな壮大な自然も街から少し移動すれば、見ることができちゃうのだとか!
シルクロードの要所ならでは。異文化が交わるキルギス
色とりどりの花が咲く春
“中央アジアのスイス”と言われることもあるキルギスは、ヨーロッパ、カザフスタン、ロシアなどからの観光客も多く訪れる地。春夏秋冬、季節折々の大自然を楽しむことができる国です。
サルー温泉
「夏など馬に乗ってホーストレッキングしたり、湖でゆっくりしたり、冬は標高3000mくらいまで登れるスキー場でスキーをしたり季節によって楽しみがいろいろあります。春は一面の花畑がすごくきれいですし、冬の雪景色もとても素敵。その中でも過ごしやすい夏がおすすめです。夏は冷えた“マクシム”もおいしいですよ」
この聞き慣れない“マクシム”。映画の主人公であるケンタウロスがよく飲んでいた飲み物なんです。名前からはどんなものなのかまったく想像ができませんが、とにかくおいしそうに飲んでる…!
左:手作りのジャルマ/右:首都ビシュケクのマキシム・チャラップスタンド
「マクシムは商品名で、飲みもの自体は“ジャルマ”と呼ばれています。大麦と小麦粉と羊の脂などを発酵させたドリンクで、酸っぱくて…かなり独特な味ですね。最初はおいしくないんですけど、慣れてくるとおいしく感じてきてクセになります。映画のように屋台で販売されていますが、家でもよく作られています。キルギスは発酵飲料がすごく多いんです。発酵した乳製品に塩を入れて水で割ったドリンクなどもあります。それをさらにマクシムと混ぜたドリンクもあるんです。私は結構好きでした」。
うう…!気になる!マクシムの他にチャイもよく飲まれるのだそう。しかも、しぼりたての牛乳で作られたチャイ!なんと贅沢な…。ぜひ飲んでみたいですよね。
その他、キルギスでは畜産が盛んということで、お肉を中心とした食事が定番。
「茹でた肉と麺料理を混ぜたものが伝統的な食事です。でも、キルギスはキルギス人のほかにロシア人、ウズベク人、中国系のイスラム教徒ドゥンガン人なども暮らす多民族国家なので、食事は本当に多様です。ドゥンガン系の中華料理風のお料理、ロシア料理のボルシチっぽいものやペリメニという水餃子のようなもの、ウズベキスタンでよく食べられているプロフというお米の料理も食べます。イシク・クル湖には魚もいるので、干した魚も食べますね」。
中国、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタンに隣接し、かつては、中国とヨーロッパを結ぶシルクロードの要所として栄えたというキルギス。一方、1991年まではソ連邦の一部だったということもあり、食事だけでなく文化も、キルギス人の遊牧文化、旧ソ連の社会主義、イスラムの文化など、さまざまな文化が混ざり合っています。
映画『馬を放つ』
『馬を放つ』では、キルギスの遊牧文化を中心にしながらも、いろいろな文化が垣間見られます。そのあたりも注目してみてくださいね。
密接な関係でつながった馬と人
映画『馬を放つ』
映画『馬を放つ』は、タイトルの通り“馬”が重要な存在として描かれています。キルギスには今なお「馬は人間の翼」ということわざ残るほど、人と馬には深いつながりがあるのだそう。
「車を持っている人もいますが、隣の村へ行くのであれば馬で行く人が多いです。干し草を運ぶときは馬車で運んでいましたね。村を歩いていると人に会うより馬に遭遇します(笑)。
キルギス人にとって馬や羊などの家畜は財産なんです。貯金の代わりでもあり、肉や乳は食料でもあり、毛や脂を使った雑貨も作っています。すごく生活に密接した存在です」。
羊毛フェルトで作ったかわいい羊。
馬油を使った石鹸(写真右手前)、キルギスフェルトの雑貨(写真左)はお土産としても人気。
キルギスの文化を知ることができる映画『馬を放つ』
インテリアに使われているファブリックもとってもかわいい!模様にも意味があるのだそう(映画『馬を放つ』より)
キルギスという国の魅力をたくさん教えてくれた東さん。そんな東さんの映画『馬を放つ』を観た感想が気になるところ…。
「キルギスの昔ながらの素朴な様子がしっかり描かれている映画でした。お金持ちのカラバイさんが馬泥棒で捕まったケンタウロスに対して『親戚だから大目に見て欲しい』と言うシーンがありますが、親戚のつながりを大切にするキルギスらしいシーンのひとつです。
あと、家に行って『お茶を飲んでいきなさい』という場面もありますが、あのシーンもキルギスではおなじみの光景です。お客さんが来たら必ずお茶をすすめて、飲まない場合でも必ず『ナンを食べていきなさい』と。お客さんはナンを差し出されたら必ずひとくち食べなくてはいけないんです。
そういう細かいキルギスらしさがたくさん描かれていたので、懐かしくなりました。映画を観て、また行きたい!という気持ちが湧いてきましたね」。
遊牧民族ならではの組み立て移動式住居・ユルタ(映画『馬を放つ』より)
美しく壮大な風景だけでなく、キルギスの暮らしまで感じ取れる映画『馬を放つ』。映画を観るときっとキルギスに興味を持つはず!日本からキルギスへは、ロシア、中国、トルコなど周辺の国を経由して行くことができるそうです。最近は、キルギス旅行のツアーを開催している会社もあるとのことでした。最後に東さんにキルギスのおすすめ滞在スポットを教えてもらいました。
「イシク・クル湖周辺はおすすめですね。あとは『馬を放つ』の舞台にもなったトゥラスの近くに、ユルタという昔ながらの遊牧民のテントに泊まれるキャンプ場があるんです。湖と山々が眺められる美しい場所で、おすすめですね。夜は満点の星も見えますよ!」。
映画『馬を放つ』より
映画『馬を放つ』を観て、東さんにキルギスのお話を聞いて、まだまだ知らない世界がたくさんあるんだな…と、心底思いました。同時に異国のキルギスの文化を知ることで、自分たちの文化についても考えるきっかけになりました。
まだ見ぬ世界を知ってみたい方はもちろん、ちょっと立ち止まって自分たちの暮らしについて考えてみたい方に、ぜひ観ていただきたい作品です。壮大な自然に癒やされたい方にもおすすめですよ〜!
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『馬を放つ』
- あらすじ:キルギスのある村。村人たちから”ケンタウロス”と呼ばれている物静かで穏やかな男は、妻と息子の3人でつつましく暮らしていた。しかし、そんな彼には誰にも明かせない秘密があった――。
- 彼はある理由から、キルギスに古くから伝わる伝説を信じ、夜な夜な馬を盗んでは野に放っていたのだった。次第に馬泥棒の存在が村で問題になり、犯人を捕まえる為に罠が仕掛けられるが…
- 監督・脚本:アクタン・アリム・クバト
- 出演:アクタン・アリム・クバト/ヌラリー・トゥルサンコジョフ/ザレマ・アサナリバ
- 3月17日(土)より、岩波ホールほか全国順次公開
- 岩波ホール創立50周年記念作品第2弾