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週末読みたい本『展覧会プロデューサーのお仕事』
こんにちは、箱庭編集部 moです。
箱庭でもよく気になる展示・展覧会をご紹介していますが、そういった展覧会がそのように企画され、どのように開催に至るのか実は知らなかったりします。今日はそんな展覧会がどうやって作られているか、仕事の裏側を知ることができる1冊『展覧会プロデューサーのお仕事』をご紹介したいと思います。
展覧会プロデューサーとしての18年間の足跡と仕事術を一挙公開!
本書は、18年間に67本を333会場で開催し650万人を動員した、日本一の展覧会仕掛け人である西澤寛氏がこれまで手掛けた展覧会メニューを一挙にご紹介。企画立案から運営コスト、展示物調達、広報宣伝、集客テクニックまで、人々を感動させた展覧会の実態を明かす1冊となっています。
美術館学芸員、展覧会の企画制作を目指す方はもちろん、展覧会好きのみなさんにも興味深い内容となっていますよ。
まず紹介されているのは、西澤氏が展覧会プロデューサーになったきっかけともいえる、五番舘西武赤れんがホール初代館長時代のエピソード。オープニング企画となった『近代絵画の一世紀展』に関して、企画から運営コスト、オープン前日の展示変更の話など、展覧会の裏側がユーモアも交え記されています。
開催に至るまでのエピソードに加え、各展覧会で得た仕事を進める上での教訓もキャプションで記されています。ちなみにこの展覧会での教訓は「オリジナル企画(開発費)の軽減は、他会場でも開催(営業)できる企画にせよ」でした。
よく日本中をまわる巡回展を目にしますが、あれは開発費軽減のためのものだったのだと初めて知りました!1会場だけの展覧会では入場料と物販利益だけでは大きなリスクになるそう。なかなかそういった裏側の話は知らなかったのでとても興味深いです!
絵本原画や挿絵原画のジャンルの構築についてもエピソードが記されています。『「こどものとも」の絵本原画展』や『ディック・ブルーナの世界』など今ではよく目にするような展覧会メニューを、まだ誰もやったことのない時代に企画・開催したのはすごいです!
2004年に開催された『ムーミン谷の素敵な仲間たち展』では、図録を編集するところからスタートする、という手法を編み出したそうです。展覧会の準備が図録からはじまるなんて意外ですよね!出展品のリスト化や展覧会の構成など、図録の製作をベースに企画進行すると同時作業になり全てに無駄がないのだとか。
また物販アイテムについて、それまでカタログやポストカードとライセンス商品ばかりだったところを、“会場限定オリジナル”の限定品を作ることにより、差別化を図ったのも西澤氏の試みだったそう。確かに開催会場でしか手に入らないアイテムがあると思わず足を運びたくなってしまいますよね!今では当たり前に感じますが、当時は画期的なアイデアだったことがうかがえます。
さらに本書では展覧会のエピソードだけでなく、出張報告書や企画進行一覧など、企画を遂行するための西澤氏の仕事術を余すところなく教えてくれています。展覧会プロデューサーという仕事でなくても企画や運営に携わる人にとって、とっても参考になりそう〜!ぜひじっくり読んでみてください。
本書を通して、わたしたちが何気なく足を運んでいる展覧会も、開催に至るまでに様々な工夫やアイデアがあり、たくさんの方が携わって出来上がっているのだと改めて知ることが出来ました。
いかがでしたか?今まで知らなかった展覧会プロデューサーのお仕事の裏側がわかる1冊。本書を読んだ後は、これまでと違った目線で展覧会を楽しめそうです!興味を持った方はぜひ一度チェックしてみてくださいね。
展覧会プロデューサーのお仕事
著者:西澤 寛
発売日:2018/12/22
出版社:徳間書店
定価:本体2,000円+税
判型/仕様:A5判
ISBN:978-4-19-864751-3