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「笑い」で美術の新しい楽しみ方を教えてくれる一冊

こんにちは、箱庭キュレーターのカナコです。
「絵画鑑賞」と聞くと、ちょっと堅くて難しそうな印象を持ってしまう…そういう方も多いのではないでしょうか?今日は、そんなイメージを覆すこと間違いなしの一冊『パロディスム宣言 笑い伝道師の名画鑑賞術』をご紹介します。

「ツッコまれた」名画を大放出!

本書を手がけたのは、放送作家の倉本美津留さん。『M-1グランプリ』や『ダウンタウンDX』など多くの人気番組を手がけている方なんです。常に「笑い」を追求している倉本さんは、シュルレアリスムの画家の作品にお笑い好きの脳内と共通するものを見出したそう。以来、芸術作品にツッコミまくっているという倉本さんの作品を、たっぷり楽しめますよ。

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まずは、倉本さんに赤い線を書き足され、大胆にツッコまれたヴィーナス。ヴィーナスと天使をへその緒で繋げてしまうというシュールな発想が面白すぎます。当たり前だと思っていたことが、見方を変えることで全然違うものに変わるという、新鮮な体験が出来るんです。

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こちらは「マハ」がこれまた倉本さんのパワーで、シュールな姿へと変身しています。肩肘張らず笑いながら絵画を楽しめるのが、素敵ですよね。ユーモアたっぷりの解説文も必読です。
自分だったらどうツッコむか、想像力を働かせながら読んでみても面白いかも?!

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数々の「ツッコまれた」名画は、美術史の専門家による解説付きです。
クスッと笑いながら、好奇心を持って絵画を見ることができるため、単に解説を読むよりも理解が深まっている気がします。

巨匠による巨匠のパロディも

先ほどご紹介した、絵画にちょこっと付け足して笑いをかき立てることを倉本さんは「パロディスム」と名付けています。そんな「パロディスム」ですが、実は著名な芸術家たちもこぞって取り組んでいたんだそう。

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こちらは、パロディ元の絵。
18世紀にジャック=ルイ・ダヴィッドによって描かれた『レカミエ夫人の肖像』です。
パリの銀行家夫人であり、当代一の美人であったというレカミエ夫人のパロディに挑んだのは、20世紀に活躍したルネ・マグリット。果たしてどのような作品になったのでしょうか?

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なんと、棺桶に入れられてしまいました。倉本さんのツッコミも炸裂しています。
巨匠たちが名作のどの部分に着目し、パロディをしたのか考えてみると、絵画の見方が変わりそうですね。アートや芸術は、もっと自由なものでいいんじゃないか、と教えてくれます。

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さらに、2つの名作を融合させた作品もあるんです。
手がけたのは、ゴッホ。ミレーの『種まく人』と歌川広重の『名所江戸百景 亀戸梅屋敷』という一見関係なさそうな大作を一体どのようにコラボさせたのでしょうか?

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日本の浮世絵『名所江戸百景 亀戸梅屋敷』の構図を借用しながら、「種まく人」をモチーフとして、ゴッホらしい鮮やかな色彩で描かれた作品が生まれました。
パロディ元の絵を知っているだけで、鑑賞の楽しさが倍増しますね!

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この他にも、現代作家によるパロディ作品の紹介や、倉本さん、しりあがり寿さん、みうらじゅんさんの3名による「パロディスム」にまつわる対談など、まだまだご紹介し足りない魅力がたっぷりです。

芸術って、こんな楽しみ方があったんだ、と新しい視点をくれる一冊。
アート好きな方にはもちろん、アートの見方がよくわからないという方への入門書としてもおすすめです!