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週末読みたい本『ISSUE 和田誠のたね』

こんにちは。haconiwa編集部 モリサワです。
本日は、カルチャーマガジン「SWITCH」の前身となる「ISSUE」が、表現者の創造の歴史、秘密を徹底的に紐解くシリーズとして、35年の時を経て再出発!その第1弾として発売された『ISSUE 和田誠のたね』をご紹介します。
和田誠の「少年時代」を旅する。生前のロングインタビューを初公開!
「週刊文春」のカバーイラストレーションをはじめ、たばこ「ハイライト」のパッケージデザイン他、数えきれないほどの書籍の装丁を手がけ、さらに映画製作や執筆も手がけるなど多岐に活躍した、イラストレーターの和田誠さん。
本書は2019年に亡くなられた和田さんの未発表のロングインタビューで語られた証言を軸に、0歳~18歳までの作品群にフォーカスを当て創作の原点に迫っていく内容になっています。
少年時代の文集や作品、スケッチなど、未発表の資料を数多く掲載!
この本の始まりは、「不合格のための世界史」という、和田さんが高校時代に描かれた8コマ漫画作品からスタート。全18篇が原寸大で再現されています。世界を理解し、ユーモアこそが真実とばかりに自分のスタイルへと落とし込まれていることが、凝縮された8コマから伝わってきます。
本編では、編集者の川口恵子さんによる5万字を超える和田さんのロングインタビューを初掲載。少年時代の文集、高校時代のスケッチブックなど、未発表の資料が紐解かれ、幼少期について語られた貴重なエピソードの数々を読むことができます。
生前、自らの仕事についてインタビューしてほしいと、川口さんに依頼をしていた和田さん。「インタビューの際の会話をそのまま生かして、一問一答形式ではない形でまとめよう」と話していた当初の方針に従って、川口さんが1冊の本にまとめようとして実現していなかったインタビューを、今回改めて整理されたそうなんです。
こちらはインタビューの中にでてくる4歳の時に描いた「侍と蛇とお化け」。
和田さんは幼い頃から動物の絵をよく描かれていたそうなのですが、こちらはなんと1枚の絵ではなく、物語形式にまとめられた冊子。今でも大切に保管されているのもすごいですよね!このような形で保管されているのには理由があって、実は当時お母さんが和田さんのイラストを糸で綴じてくれたそうなんです。
「クワイブツガデタナ(怪物が出たな)」、「キルゾ(切るぞ)」など、侍が怪物を退治するお話を4歳で自作することにも驚きましたが、丁寧に本にしてくれるお母さんもステキですよね。
少年時代の「家族のヒント」の章のインタビューでは、和田さんのおばあさん、お父さん、お兄さんのお話も。どこか和田さん自身のルーツが家族のエピソードの中にあるようで、お話にどんどん引き込まれます。
1994年に幅広いジャンルで活躍したという理由で贈られた菊池寛賞の受賞スピーチの全文も紹介されていて、スピーチでは、父親とご自分の姿を重ね合わせてお話されているところにも注目です。
ちなみに、インタビューの中にでてくるエピソードの元となる文献は、このように欄外で紹介されていて、インタビュー時にその本や資料に書かれている内容が本当だったのか再検証しているところも面白いですよ。
そして、1954年からディズニーファンクラブにも入られていたという和田さん。こちらは少年時代に描いた「ミッキーマウスとポパイが協力して海賊と戦うクロスオーバー作品」。たくさんの映画と出会い、アメリカの音楽に興味を持った少年時代がインタビューからも浮き彫りになっていきます。
「ぼくの好きな先生」の章では和田さんのエッセイにもよく登場するという、小学4~6年生の担任の先生、柳内先生のことも書かれています。
先生から「今度俺の本の装幀(そうてい)やってくれよな」と言われ、「喜んでやります」と答えた和田さん。結局、先生の生前に本の装幀をすることは叶わなかったようですが、先生の“遺稿集”で約束を果たすことができたのだとか。
「花」の文字は先生が切った「ガリ版(印刷)」から引用し拡大したもの。左ページにあるハンコは6年生の時、クラスメイトの作文や詩にあわせたモチーフを和田さんが彫ったハンコを、先生が文集のカットとして使ってくれていたものを再現しています。生徒の個性をちゃんと見守ってくれていた先生との出会いがその後の和田さんに大きく影響をしているんだな~と感じます。
こちらは高校時代、友達の藤田くんと1コマずつ交互に書いた西遊記。次に相手がどんなコマを描いてくるか予想がつかない面白さがあったのだとか。のちにイラストレーターの安西水丸さんとも、このスタイルで1枚の紙に2人で絵を描くこともされている和田さん。この遊ぶように描く姿勢がルーツになっているようで、面白いですよね。
これ、何のたね?誰もが納得してしまう仕事の原点「和田誠のたね」。
ここまでのロングインタビューで「これは和田さんの実際のお仕事につながっているのでは?」と思うような「和田誠のたね」を感じることができたのですが、後半部分には「これ、何のたね?」と題した作品が集められていて、和田さんの少年時代の作品と、リンクされているようなお仕事が並列で紹介されています。
その中のひとつ、「ぬくもりのあるロゴマーク」。和田さんの無駄をそぎ落とした温かみのあるイラストレーションは、このように過去の作品と並べられていると、少年時代に「たね」が撒かれていたのではないかと、思わずハッとします。
こちらは小学3年生の和田誠が疎開先で描いた「三ツの漫画」。初めて「本の形」を意識して描いたものなのだそう。この中にも、あの和田さんが描く“愛らしい袋文字”の原点が「袋文字のはじまり」として紹介されていましたよ。
谷川俊太郎さんの寄稿文にも注目!
本の最後には、詩人の谷川俊太郎さんの寄稿文も掲載されています。「終始一貫和田誠」とタイトルがつけられているように、この本を読んでいると、幼い頃から一貫して和田さんの創作の中にはユニークな芯があることがわかります。
イラストレーターとして活躍する前の和田さんにスポットを当てた「和田誠のたね」。今回ご紹介したのはその中のごくごく一部ですが、ファンの方はもちろん、読み物としてもとても興味深いので、是非じっくりと読んでいただきたい1冊です。
発行元:スイッチ・パブリッシング
文・インタビュー構成:川口恵子
編集:土谷みずき
デザイン:宮古美智代
仕様:B5変型判/160ページ
定価:本体1,600円+税
ISBN:978-4-88418-5640
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