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歴史的建築と文化を守りたい。芸術作品のような家「三鷹天命反転住宅」がクラウドファンディングをスタート!

こんにちは、haconiwa編集部の山北です。
みなさんは、東京都三鷹市にある歴史的建造物「三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー」をご存知ですか?鮮やかなカラーリングが目を引く外観を見たことがある方もいるのでないでしょうか。まるで芸術作品のようなこの建築は、美術家・建築家の荒川修作とマドリン・ギンズが設計した全9戸からなる世界で初めての集合住宅です。
三鷹天命反転住宅は2005年の竣工以来、一部を賃貸住宅として、一部を教育・文化プログラムを世界へ発信するスペースとして活動してきました。誕生から15周年を迎えた2020年、大掛かりな修繕計画を進める予定でしたが、新型コロナウィルスの影響で全イベントが中止に。
さらに定期的に開催していた見学会や短期滞在プログラム(ショートステイ)の利用者の激減など、2021年になった今日も経済的にも苦しい状況が続いているそう。
このままでは天命反転住宅を体験する機会が失われてしまうと同時に、修繕ができず建物にとっての危機が増してゆくばかり…。そこで三鷹天命反転住宅は、初の試みとしてクラウドファンディングを本日からスタートしました!
TOP画像:三鷹天命反転住宅 外観(撮影:加藤健 提供:荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所)
死なないための建築?世界から注目される「三鷹天命反転住宅」とは
三鷹市の住宅街に異彩を放ちながら佇む「三鷹天命反転住宅」は、内外装に14色の鮮やかな色が施された全部で9戸の集合住宅。住む以外にもショートステイや見学も可能で、2005年の完成以来、世界十数カ国から人々が訪れ注目されています。
まず目に飛び込んでくるのが、このランダムに塗られたカラフルな色彩。丸型や四角形の部屋が積み重なるように構成されていて、ひと部屋ひと部屋の色の組合せが全く異なることから、「極彩色の死なない家」として東京西郊外の三鷹市のランドマーク的存在にもなっています。
ちなみに、住民のモデルとなったのは教育家・活動家のヘレン・ケラー。ヘレン・ケラーが持つ身体の可能性に共感し、彼女ならどんな空間に住みたいかを考え作られたそう。身体を中心に置いて作られた建築で、その人ならではの使い方が見つかる、そんな住宅を目指して建てられました。
もちろん室内もカラフルな色使い。一般的な住居では考えられない間取りで、部屋の四方にドーム型の個室やキッチン、和室、シャワールームなどが設置されています。
中でも驚きなのが、部屋を繋ぐ床全体がなだらかな斜面になって凹凸していること。バランスをとって歩くのが難しく、初めはふらついてしまうこともしばしば。
なぜこんな作りになっているかというと、実はすべての要素に荒川とギンズの長年に渡る研究結果が込められています。
美術家・建築家と詩人である2人は、1962年にニューヨークで出会って以来、協働でさまざまな表現活動を行ってきました。彼らの代表作のひとつである、岐阜県にある「養老天命反転地」は、30数年に及ぶ構想を実現した身体で直接体験できるアート作品です。
2人の一貫したテーマは、生命とは?そして身体が中心になる世界はどうしたら創れるだろうか?ということでした。このような思想をもとに作られた建築は、私たちの身体にありとあらゆる刺激を与え、今まで感じたことのなかった身体の可能性に気づかせてくれます。
人々の行き着く先である死を、身体の可能性を知ることで覆す=天命を反転させる。このような意味で建築名は名付けられました。天命反転の考えが体現された住居は、アートや建築的視点のみならず、理学療法士・作業療法士やハンディキャップのある方々からも注目を集めているそうですよ。
各部屋は、キッチンを中心に3〜4室の小部屋が四方に置かれたミニマムな作り。一見ランダムに見えるカラーリングは、実はどこから見ても必ず“6色以上”が視界に入る設計になっています。
人間は6色以上の色を見ると、無意識のうちにひとつひとつの色を「色」として認識するのではなく、景色としてフラットな「自然」に感じるんだとか。普段、自然を見る時に「この色は緑、あっちの色は青」といちいち判別しないのと同様に、暮らしの中での色彩を「自然」と感じる空間に囲まれて過ごすのが重要と考え設計されています。
ちなみに、家具や家電を部屋に置くとこのような姿に。
見た目からアート作品としての印象が強いため、本当に住むことができるのか?という疑問が沸くかもしれませんが、このように使い方次第でその人にフィットした住居を作り上げることができます。10年以上この三鷹天命反転住宅に住まわれている方もいるそうですよ。
歴史的建築や文化の発信基地として。三鷹天命反転住宅を守りたい!
これまで順調に歩んできた三鷹天命反転住宅ですが、2020年から続くコロナ渦の影響で状況は一変してしまいました。
緊急事態宣言やまん延防止対策による相次ぐイベントの中止や、計画変更、海外観光客のキャンセルなど様々な要因が重なり、短期滞在の利用数は2019年度に比べて67%も減少。継続的に行ってきた見学会も半減以下となってしまいました。
2021年に入っても緊急事態宣言が発令され、コロナ禍前の収入への回復は難しく、お客様からの利用料が大きな頼みであった建物の修繕もこのままでは行うことができません。三鷹天命反転住宅を生活の場として、2人の思想に基づく歴史的建築として、そして文化を発信する場として守りたい。そんな想いから、9月13日(月)よりクラウドファンディングを開始しました。
目標とする金額は、建物の安全面から今すぐ取り掛かるべき補修工事に必要な金額の1/2の1,000万円。運営事務局の自己資金1,000万円と併せて、まずは劣化が激しい建物共用部分(廊下・階段・梁・手摺等)の耐火塗料・防水工事を行います。
三鷹天命反転住宅は壁面がカーブを描いた設計のため、外壁塗装に必要な足場を組むだけでも通常よりも高いコストがかかってしまうのだそう。窓をよく見ると、シルバー、ブラック、ブロンズカラーなどサッシも意図的に異なる色を使用しています。このような細部へのこだわりが強い故に、改修工事も時間とお金のかかる一大プロジェクトです。
補修工事の完了後は、いつか第二・第三の三鷹天命反転住宅を作るべく将来の建築構想も視野に入れています。こちらは天命反転住居と同じ思想で作られた家々が並ぶ“街”の模型。街そのものが美術館のような環境で生き生きと暮らしていける、まちづくりの野望も抱いています。
そんなクラウドファンディングは、3,000円から応援可能!
見学会の招待券や、住宅の記録をまとめたDVD、テレワークプラン・ショートステイの招待券などリターンも豊富なのでぜひこの機会に応援してみてください。
もちろん、定期的に行っている学芸担当者による建物見学会もおすすめです。美術館感覚で訪れるのもいいですし、お子様連れの方にも人気ですよ。興味のある方はクラウドファンディングページと併せてHPもチェックしてみてください〜!
三鷹天命反転住宅クラウドファンディング
URL:https://motion-gallery.net/projects/savetherdloftsmitaka
期間:9月13日(月)〜12月10日(金)23:59まで
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