こんにちは。haconiwa編集部 モリサワです。
本日は、haconiwa creatorsのあまのさくやさんのエッセイ『32歳。いきなり介護がやってきた。―時をかける認知症の父と、がんの母と』をご紹介したいと思います。今まさに介護について悩んでいる方はもちろん、これから当事者になるかもしれない少し先の未来を考えるヒントとなる１冊です。

介護で自分の人生をあきらめたくない！ほのぼのとしたイラストとマンガで伝える、エッセイ本。

本書は、絵はんこ作家でエッセイスト、そしてチェコ親善アンバサダーでもあるあまのさくやさんが、若年性認知症になった父と、その１年半後にがんを宣告された母の「ダブルケア」の日々をつづったイラストエッセイ。

幻冬舎×テレビ東京×noteのコミックエッセイ大賞で、準グランプリを受賞したブログ・cakesの人気連載「時をかける父と、母と」に、新しく描き下ろしを加えた話題の本です。

ある日突然、32歳という若さで介護生活に突入することになったあまのさんが、家族との生活をどのように乗り切っていったのか？その様子がほのぼのとした文章やイラスト、マンガで紹介されています。

このエッセイには、2009年から2020年のコロナ禍まで11年の出来事が描かれています。

始まりは、父のてんかんの発作から6年経った2009年。自分の意図とは関係なしに、人生には困難が降りかかります。あまのさんが異変を感じたのは、24歳の時。父と2人でのニューヨーク旅行、「なんだか父の様子がおかしい…」。外資系でバリバリ働く父が、自分の泊まっているホテルの名前を覚えられなかったり、思い通りにできない自分にいらだっているように見えたりしたのだそう。

徐々に変わっていく父の様子に困惑する家族と、そんな中での母へのがん宣告。あまのさんは、いつの間にか頭や生活が、そのことに占められてしまう時間が多くなっていきます。

しかし、誰かに「認知症とはみな不幸になる病気か？」と聞かれたら、「そんなことはない」と答えるという、あまのさん。

本の中では、「父の進化がとまらない」、「母はどこへ行く」、「そして父と2人になった」、「父と私の新しい生活」など…テーマが進んでいくごとに、あたたかく、切ない家族の物語が時系列で展開されていきます。その中には、介護で“自分の人生をあきらめないヒント“もたくさん。

例えば、ご両親と最後に行った旅行の場面。「自分のいる場所がわからなくなる父に地名を教えるのではなく、2択クイズで教えることにしたら、気に入ってしまったようでこちらにも出題してくるようになった。」など、マンガでも具体的なエピソードがコミカルに書かれているため、状況が浮かびやすく、これから体験する方にも、今直面している方にも、どのような状況が起こるのか、わかりやすい内容になっています。

他にも、「要介護認定を勝ち取れ」、「母のお葬式のミッション」、「老人ホームを選んだ決め手」など、なるほど！と参考になる場面もたくさん描かれています。

228ページというボリュームですが、読んでいると、あまのさんやご家族が身近に感じられて、あっという間にスラスラと読み進めてしまいます。

番外編のエピソードも見逃せない！

コラム合間には、番外編としてご家族のほほえましい逸話も書かれています。「介護」というと重たい内容のイメージがありますが、ご両親のチャーミングな一面や、見習わなきゃいけないなと思わせる人となりが垣間見えるのも必見ですよ～。

調べてもわからなかった、介護を乗り切るヒントが盛りだくさん。

遅かれ早かれ、誰もが直面する可能性のある親の介護。現実にはなかなか前もって備えることが難しく、実際にその時がきてもわからないことだらけ。「どうしたらいいのか」、「どうしてあげるのが一番いいのかな～。」なんて、悩まれている方も多いのでは？

『32歳。いきなり介護がやってきた。』には、あまのさんが当時調べてもわからなかった、実際の経験とヒントが詰まっています。

家族の介護をする子ども「ヤングケアラー」や、介護離職などが問題視されている今、ぜひこの本を手にとって、「自分を犠牲にしない」新しい介護のあり方をみつけてみてくださいね。