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アイヌ工芸品を未来へ受け継ぐまち「北海道・二風谷(にぶたに)」の取り組みとおすすめスポット

アイヌ工芸品を未来へ受け継ぐまち「北海道・二風谷(にぶたに)」の取り組みとおすすめスポット

こんにちは、haconiwa編集部の山北です。
北海道を舞台にした漫画『ゴールデンカムイ』や新施設『ウポポイ』のオープンなど、近年ますます注目を集めているアイヌ文化。アイヌとは、日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族です。日本語とは異なる「アイヌ語」や独自の文様をあしらった民族衣装などが特に有名ですが、美しい手彫りの彫刻や織物などのアイヌ工芸文化も魅力のひとつです。

北海道にはさまざまな地域でアイヌの文化が残っていますが、今回は、日高地方平取(びらとり)町にある二風谷という地区に訪れました。二風谷アイヌ工芸の魅力や未来へ受け継ぐための取り組み、文化を学ぶためにぴったりなスポットをたっぷりご紹介。アイヌ文化や工芸に興味がある方はもちろん、北海道観光の行き先を探している方にもおすすめです。

アイヌ工芸を現在も受け継ぎ、未来へ繋ぐ「平取町二風谷地区」

北海道の南西部に位置する平取町二風谷地区。アイヌ語で「ニプタイ(木の生い茂るところ)」などの意味を持ちます。広大な自然に囲まれた土地で、アイヌ民族が多く暮らす地域でもあります。

北海道の先住民族であるアイヌ民族は、豊かな自然のなかで独自の文化を育み、時代の変動を経ながら現代に文化を伝承してきました。周りに存在する動植物や自然などを「カムイ(神様)」として敬意を払い、その恵みに感謝する精神文化は生活のいたるところに根付いています。

時代の変化とともにアイヌ文化は衰退し、当時の生活文化が残る場所は極めて少ないですが、二風谷ではアイヌ工芸が盛んで、今もなお地元工芸家が日々制作に取り組んでおり、このアイヌ工芸を未来へ繋いでいきたいと活動しています。

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美しい手仕事にうっとり。「二風谷イタ」と「二風谷アットゥㇱ」とは?

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工芸作家・貝澤守さんによる「二風谷イタ」制作風景

二風谷地区では、「イタ」と「アットゥㇱ」※という2つの工芸文化が、北海道内のアイヌ文化を受け継ぐまちの中でも文化を継承する取り組みが盛んなところです。

木製のお盆「二風谷イタ」は、浅く平たいお盆にアイヌ文様である「モレウノカ(うずまきを模した柄)」や「ラㇺラㇺノカ(ウロコの形)」※などが隙間なく彫り込まれたものです。

文様はそれぞれ意味を持ち、工芸家さんの個性によって組み合わせや配置はさまざま。デザインはもちろん、底取りや文様の彫り込みも工芸家さんがひとりで行います。高い技術力とデザイン力が詰まったイタは、人の手ならではの細かな凹凸や陰影が美しく、どれも一点ものの仕上がりです。

※「アットウㇱ」の「ㇱ」、「ラㇺラㇺノカ」の「ㇺ」など、アイヌ語特有の発音を表すための文字を小文字で表記しています。

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工芸作家・貝澤徹さんによる「マキリ」 

イタの文様や彫りの技術は、ほかの日用品にも多く展開されています。木製の柄と鞘に緻密な文様が刻まれた小刀「マキリ」もそのひとつです。

こちらのマキリは、工芸作家・貝澤徹さんが漫画『ゴールデンカムイ』の登場人物・キロランケのためにデザインしたもの。このように漫画の制作に携わることや、形式にとらわれず独自の作品を制作するなど、伝統をもとにしつつ新たな創作活動が近年盛んに行われています。

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工芸作家・貝澤雪子さんによる「二風谷アットゥㇱ」制作風景

二風谷を代表するもうひとつの工芸が「二風谷アットゥㇱ」。アットゥㇱとは、樹皮から作った糸で織った反物のこと。オヒョウやシナの木の樹皮を剥いで、柔らかくしたのち、その内皮を細く裂いて糸にします。それを自分の体に固定して使う織り機で一枚の反物に織り上げて作ります。

アットゥㇱ織りを半世紀以上にわたり手掛けている貝澤雪子さんは、今なお現役で活躍されている方で、自ら森へ入って原料を採取し、100年前と同じ様式の道具で織り上げているそう。途方もない作業を経てできたアットゥㇱは、水に強く通気性に優れ、天然繊維としては他にないほどの丈夫さが特徴です。

ちなみに、今回お会いした貝澤守さん、雪子さんは親子とのことですが、ほかにも作家さんに「貝澤さん」が多いのはみなさんご家族というわけではなく、この地域の地名に由来した苗字だからなのだそうですよ。

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このように、二風谷で今も受け継がれているイタとアットゥㇱの工芸文化。
車や家電などに囲まれた現代の暮らしの中で、古くからのアイヌの技術や文様が継承され、さらに発展しているのはすごいことですよね。

ただ一方で、後継者が不足し若手の工芸家が少ないという問題も抱えています。そこで現在、この美しい手仕事を若い世代に繋ぐべく、二風谷では新たなプロジェクトも立ち上げて活動しています。

若手デザイナーや学生とコラボした「二風谷アイヌクラフトプロジェクト」

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オンラインミーティングを行う二風谷の工芸作家・尾崎友香さん(左)とデザイナー・今福弘樹さん

昨年10月にスタートした「二風谷アイヌクラフトプロジェクト」は、二風谷の工芸家と公募により選ばれたデザイナーや学生がコラボレーションし、新たなものづくりに挑戦するプロジェクトです。現在進行中の第二弾コラボでは、オンラインミーティングや試作など約1年をかけて「暮らしにとけこむアイヌデザイン」をコンセプトに新製品を制作。アイヌ工芸を新しい視点でアップデートしたプロダクトの販売を目指しています。

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2022年の本格リリースに先駆けて、東京・日本橋の誠品生活日本橋にてポップアップショップを開催中です。第二弾コラボで制作した、アイヌ文様を彫り込んだ万年筆や、文様をグラフィカルに再構築したバッグなど、計5組の作品を展示しています。二風谷の工芸作家によるイタやアットゥㇱの販売も行っています。

二風谷アイヌクラフトプロジェクト 
HP:https://www.nibutani-ainucraft.com/
オンラインショップ:https://shop.nibutani-ainucraft.com/

二風谷アイヌクラフトプロジェクト ポップアップ

開催期間:2021年12月3日(金)~12月26日(日)
開催時間:11:00〜20:00
場所:誠品生活日本橋
東京都中央区日本橋室町3丁目2-1COREDO室町テラス2F
Google Map:https://goo.gl/maps/ZzRQqfJkTLWrLR1p6

新たな取り組みで、さらなる可能性を広げている二風谷のアイヌ工芸。
アイヌについてもっと知りたい!と興味が湧いてきた方は、北海道でアイヌ文化に特化したスポットを巡ってみるのがおすすめ。一見難しそうに見えるアイヌの歴史を楽しく知ることができる新施設や、二風谷の暮らしにフォーカスした資料館など、見て、学んで、体験できる4つの施設をまとめてご紹介します。

まるでアイヌ文化のテーマパーク!昨年7月にオープンした「ウポポイ(民族共生象徴空間)」

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2020年7月に開館した北海道・白老町の施設「ウポポイ(民族共生象徴空間)」。「ウポポイ」という不思議な響きの名前は、アイヌ語で「(大勢で)歌うこと」を意味するそう。アイヌにまつわる資料の展示やイベントなどを行い、アイヌ文化の復興や差別のない多様性のある社会を築くための象徴として設立されました。

ウポポイは、ポロト湖のほとりに建つ国立アイヌ民族博物館を中心に公園やホール、工房が並ぶ広大なフィールドミュージアム。映像の上演や楽器演奏鑑賞、ものづくり体験などさまざまなプログラムを開催しているので、1日中楽しむことができるスポットです。

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国立アイヌ民族博物館の基本展示室には、北海道中のアイヌ文化を包括的に学ぶことができる資料を多数展示。「ことば」、「世界」、「くらし」、「歴史」、「しごと」、「交流」の6つのテーマをアイヌ民族の視点で紹介しています。
人物パネルを用いて現代のアイヌ民族の様子を伝えるコーナーや、アイヌ語での語りを聞くことができる映像、ゲームを通してアイヌ語の仕組みや発音を知ることができるコンテンツなどもあり、お子さんでも楽しく学べるのが魅力的。
二風谷のアイヌ工芸にフォーカスする前に、アイヌ民族全体の歴史を学ぶのにぴったりな場所です。

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展示室に設置された透明ケースの中には、かつてのアイヌの人々が日常的に使っていた道具や小物、儀礼等に使用する祭具のほか、現代の工芸品などさまざまな資料が並んでいます。どれも細かな装飾や文様があしらわれており、アイヌ工芸の芸術性の高さがうかがえるものばかり。中央上段の作品は、先ほどご紹介した貝澤徹さんによる樹布という作品で、二風谷の工芸品を展示室内のいたるところで見ることができます。

ウポポイ(民族共生象徴空間)
開園時間:平日 9:00〜17:00 土日祝日 9:00〜17:00
閉園日:月曜日、年末年始(12月29日〜1月3日) ※月曜日が祝日または休日の場合は翌日以降の平日
場所:北海道白老郡白老町若草町2丁目3
Google MAP:https://g.page/upopoy?share
アクセス:https://ainu-upopoy.jp/access/

二風谷アイヌ民族の暮らしをリアルに体感できる「二風谷コタン」

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アイヌ伝統工芸の本場・平取町でおすすめなのが、二風谷アイヌ文化の複合施設「二風谷コタン」。広い敷地の中には、「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」や「沙流川歴史館」、「平取町アイヌ文化情報センター」などのほか、多くのチセ(家)を復元し、かつてのアイヌコタン(集落)が再現されています。

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チセの中では、作家さんによる彫刻や刺繍の実演を見ることもできます。イタやアットゥㇱ、アイヌ文様などについて実際に地元の方に聞くことができるのは二風谷コタンならではです。

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平取町立二風谷アイヌ文化博物館では、沙流川流域のアイヌ民具を「人々の暮らし」、「神々のロマン」、「大地のめぐみ」、「造形の伝統」の4つのゾーンに分類。二風谷の民俗文化研究家・故 萱野茂さんが1950年代から半世紀にわたる歳月をかけて収集した民具や復元資料を1000点近く収蔵しています。

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イタやアットゥㇱはもちろん、お神酒などを入れてカムイに捧げる儀礼具「トゥキ」や「トゥキパスイ」、狩りに行く際の武器や漁の道具など、暮らしにまつわる民具を網羅的に展示。資料の大部分は、重要有形文化財指定を受けたものばかりです。民俗学や生活史に興味がある方は特に見応えのある、盛りだくさんの内容ですよ。事前申し込みで、木彫や刺繍、アイヌの口琴楽器ムックリの制作体験をすることもできます。

二風谷コタン 平取町立二風谷アイヌ文化博物館
開館時間:9:00〜16:30
閉館日:12月16日~1月15日、冬期間(11月16日~4月15日)のみ毎週月曜日は定期休館
場所:北海道沙流郡平取町二風谷55
Google Map:https://goo.gl/maps/KoDQc7mySdfcBaGy7
アクセス:http://www.town.biratori.hokkaido.jp/biratori/nibutani/access/

工芸家さんが実際に制作を行う、町の工房「ウレㇱパ」

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二風谷の伝統工芸を受け継ぎ、技術を学ぶことのできる工房施設「平取町アイヌ工芸伝承館ウレㇱパ」。地元で活躍する工芸家さんに加えて、経験の有無にとらわれず誰もが工芸体験ができるよう開かれています。伝統的な手仕事を行うスペースのほか、レーザー加工機などの最新の機器や日曜大工の機器もそろっており、簡単に取り組める体験プログラムも用意しています。

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アットゥㇱの織り機で麻糸を使った織物体験

運が良ければ、実際に作業を行う作家さんにお話を聞いたり制作について質問したりすることもできるかも!工芸家を目指す若手の育成に力を入れているので、伝統工芸の作り手として興味がある方や普段ものづくりをされている方は特に参考になる情報が得られるのではないでしょうか。

平取町アイヌ工芸伝承館 ウレㇱパ
営業時間:9:00~16:30
休館日:月曜日、年末年始(12月31日~1月5日)※月曜日が祝日の場合は翌日
場所:北海道沙流郡平取町字二風谷77番地14
アクセス:https://biratori-urespa.jp/#access
Google Map:https://goo.gl/maps/oZnwqJmQ4gJL8KZZ6

作品やお土産を買うならここ!「北の工房 つとむ」と「貝沢民芸」

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工芸作家・貝澤徹さんによる作品

さまざまな施設でアイヌ文化や工芸を学んだ後は、作家さんが開いているお店へ訪れるのもおすすめ。作家の貝澤徹さんの「北の工房 つとむ」では、作品や小物、アクセサリーなど種類豊富なアイヌ工芸品を購入することができます。売店の隣が工房になっており、制作の見学も可能だそうですよ。

また、貝澤守さん・貝澤美雪さんのご夫婦で営む「貝沢民芸」では、伝統的な作品はもちろん、牛革を使った作品やレーザー加工機を使ったものなど、種類豊富な作品を作っています。美雪さんによるアットゥㇱ織りや刺繍の小物も手に取ることができるお店です。

北の工房 つとむ
営業時間:8:00〜18:00
休業日:不定休
場所:北海道沙流郡平取町字二風谷74-12
Google Map:https://goo.gl/maps/oYEUYKzoSJJZyjfMA

貝沢民芸
営業時間:8:00〜18:00
休業日:不定休
場所:北海道 沙流郡平取町二風谷75-2
Google Map:https://goo.gl/maps/SaV6vcyTinV7MJU99

平取町で今も受け継がれる二風谷アイヌ工芸。作家さんに会って本物に触れることができるのは、北海道の中でもここ二風谷だけなのではないでしょうか。

また「二風谷アイヌクラフトプロジェクト」は12月26日(日)まで日本橋でポップアップを開催中です。来年1月下旬〜2月に完成商品の発表会や、コラボ商品を購入できるポップアップも開催を予定しています。北海道のスポットと併せて、東京での展開にも注目です!

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