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週末読みたい本『日本のタイル100年 美と用のあゆみ』

こんにちは。haconiwa編集部 モリサワです。
みなさんは街中でみつけたタイルにうっとりした経験はありませんか?今週はそんなタイルの魅力を再発見できる『日本のタイル100年 美と用のあゆみ』をご紹介します。
100年の歴史から見えてくる、「タイル」の魅力を再発見できる本。
今では当たり前に使われている「タイル(tile)」という言葉。その語源が、ラテン語の「テグラ(tegula)=“物を覆う”」という意味からきていることはご存じですか?そもそも日本には、タイルという言葉が無い時代がありました。たてものの壁や床を“覆う”薄板状の「やきもの」を、すべて「タイル」と呼ぶことに定められたのが1922年4月12日の出来事。そこから今年で100年が経ったのです。
本書は、その100年の歴史を、テーマや年表とともに紹介。装飾と機能を兼ね備えたタイルの歴史を振り返り、その魅力を再発見する1冊になっています。
とても内容の濃い1冊となっている本書ですが、掲載されている大きな写真をみるだけでも、魅力的な装飾やデザインにうっとり!さらに文章を読み進めると、街で見かけるあのタイルは、こうした歴史があったのかと知識がより深まる内容になっていますよ~。それでは早速中身をご紹介していきましょう。
冒頭から惹き込まれる!藤森照信さんのインタビュー
まず冒頭では、建築家で建築史家でもある、藤森照信さんのインタビューを掲載。タイルとの出会いから、日本の建築家にとってタイルがどのような存在だったのか、さらに今後のインテリアとしてのタイルに期待することまで、興味深い内容が書かれていました。
例えば、こちらは藤森さんが素晴らしいと思ったタイルのひとつ、「近三ビルディングロビー天井のモザイクタイル」。建築家の村野藤吾さんが自分の好みで全面使用したというタイルで、ドイツ製のガラスを、目地の入れ方まで考えて構成されているのだとか。曲線や色合いがステキですよね~。
インタビューでは、前川國男さんや丹下健三さんなど、同じモダニズムの建築家の中でもタイルに関する考え方に違いがあったことにも触れられていました。藤森さんならではのユニークな視点で語られたインタビューは、「タイルについてもっと知りたい!」と興味が湧いてくる内容になっています。
日本のタイルの起源から今までを、テーマと年表で振り返る。
本編では、日本のタイルの源流、名称統一の背景、そして1922年の名称統一からの100年を、テーマや年表で詳しく解説しています。
まずは、タイルが大陸から日本に伝来した経緯・変遷を、「瓦」「タイル」「煉瓦」「テラコッタ」に分けて紹介。それぞれの建材が普及していく様子が下の年表と照らし合わせて読むことができ、理解しやすい構成になっています。
そして1922年、一定の呼称がなかった建材類は、いよいよ「タイル」に名称を統一することに。きっかけとなったのが、この年の3月10日から上野で開催された「平和記念東京博覧会」でした。その開催に合わせて4月12日、全国のタイル業者が当時の東京市に集まった際に、呼び名の統一が決められたのだとか。
この画期的な出来事を、写真と原稿で丁寧に紹介。いかにエポックメーキングなことだったのかが伝わってきますよ!
14のトピックスで綴られる、名称統一後100年のタイルの歴史。
名称が統一されたタイルは、いつしか建物自体を保護する「実用性」と、その空間を彩る「装飾性」を兼ね備えることが重要になっていきます。後半では住空間、店舗・公共空間、都市空間に分け、14のトピックスごとにさまざまな執筆者が原稿を作成。輸入品を手本に量産が始まり、地震や感染症の流行などの大事を経ながら、生活スタイルの変化や都市化に合わせて日本独自のタイル文化が花開くエピソードが紹介されています。
パンデミックが促進させた「清潔機能をもつ白いタイル」、「台所とトイレ、浴室はタイル張り」、「銭湯といえばタイル」とタイトルだけでも面白そうな話題ばかり。
新橋駅のまぼろしの「新橋」と描かれたタイルもありましたよ~。
集中して一度に読み進めるのもオススメですが、トピックごとにじっくり時間をかけて読んでみるのも楽しいかもしれません。
写真のクレジットも見逃せない!
巻末には表紙で使われているタイルのクレジット詳細も。お気に入りのタイルを見つけたら、ぜひどんなタイルなのか照らし合わせてみてくださいね。
タイルの歴史を振り返り、その魅力を再発見する『日本のタイル100年 美と用のあゆみ』。
本書はタイル名称統一100周年を記念する巡回企画展「日本のタイル100年――美と用のあゆみ」開催に合わせて発刊。展覧会は現在、本書を企画したINAXライブミュージアム(愛知県常滑市)で8月30日(火)まで開催しており、その後も、共同で企画した多治見市モザイクタイルミュージアム、江戸東京たてもの園に巡回予定なので、気になった方はチェックしてみてくださいね~。
発行 INAXライブミュージアム
発売 株式会社トゥーヴァージンズ
監修:藤森照信
デザイン:松田行正+梶原結実(マツダオフィス)
仕様:B5判/80ページ
定価:本体1,500円+税
ISBN:978-4-910352-32-9
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