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美しい植物標本から時代や人物に思いを巡らせる一冊『ポール・ヴァーゼンの植物標本』

こんにちは、haconiwa編集部のシオリです。
毎週金曜日にお届けしている「週末読みたい本」のコーナー。本日ご紹介するのは『ポール・ヴァーゼンの植物標本』です。
アンティークショップの店主が、南フランスの蚤の市で偶然出会った美しい植物標本。
東京・湯島にあるアンティークショップ「ATLAS antiques」の店主・飯村弦太さん。2017年の夏、南フランスの蚤の市で買い付けを行なっていたところ、目に留まったのは、小さな紙製の箱でした。そこには飾り文字で「Melle Paule Vaesen」と書かれた押し花が入っており、フランスやスイスの高山植物を中心とした100枚ほどの花の標本が収められていたのだそう。
飯村さんは、その植物標本の美しさに心を掴まれ、箱ごと譲り受けて日本に持ち帰り、展示を開催。好評だったことを受け、その展示から約5年後の今、作家・フランス文学者である堀江敏幸さんが書き下ろした掌編「記憶の葉緑素」と共に、一冊の書籍『ポール・ヴァーゼンの植物標本』にまとめられました。
遠い国で、約1世紀も前に生きた女性が丁寧に作ったであろう標本から、想像をめぐらせ、記憶を辿る。
植物標本は、約100年ほど前に生きたポール・ヴァーゼンという女性によって作られた、スイスとフランスの国境近くの山や草原から採取されたものだと推測されるそう。これらは、種や根なども採取されていないことから、研究資料用ではなく個人的に作られたものだと考えられるようです。まるで絵を描くように、枝葉や花片がていねいに台紙に配置され、ごく小さな薄紙で留められている植物標本たち。思わず、1世紀前の暮らしや風景はどんなものだったのか、ポール・ヴァーゼンがどんな女性だったのかを、想像してしまいますよね。
美しい植物標本を見ていると、ポール・ヴァーゼンが植物を愛して、標本を作る時間を大切にしていたことが伝わってくるようです。時と距離を超えて、たくさんの人々に自分の植物標本が知られることになるなど、ポール・ヴァーゼンは想像もしていなかったでしょう。
大切にしたくなる、美しい装丁にも注目。
『ポール・ヴァーゼンの植物標本』のカバーは、半透明になっており、カバーを外すとフランス語だけの表紙が登場。
当時のポール・ヴァーゼンが本を作ったら、こんなデザインだったかも?と思わせる、アンティークな雰囲気が素敵です。
収録されている植物標本は、95点にものぼります。作家・フランス文学者である堀江敏幸さんが書き下ろした掌編「記憶の葉緑素」と共に、ゆっくりと思いを巡らせてみてはいかがでしょうか?
著者:ポール・ヴァーゼン 堀江敏幸
企画:飯村弦太(ATLAS)
撮影:加瀬健太郎
装幀:黒田益朗
定価:本体価格2000円+税
ISBN 978-4-89815-561-5
発行:2022年
仕様:四六変型/148ページ(うちカラー112ページ)/上製
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